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第8話 ワルツを一曲。

 ウィリアムズは物心ついたときからセシルに好意を寄せていた。  セシルとウィリアムズは会った瞬間から意気投合したわけでもなく、ただ親が仲良くしておけと言われたからそうしただけだった。  その当時のウィリアムズも真面目過ぎていて、提督となった今と性格はそう変わらない。  ウィリアムズは幼い頃から堅物だった。  セシルはといえば、表の顔と裏の顔を上手に使え分ける幼少期を過ごしていた。  大人の前ではとても優秀な少年を装っていたが、実のところ腹黒い性格で、それでもとても可愛らしい顔をしていたので、老若男女別け隔てなくモテた。  しかしだからといってセシルの見た目にウィリアムズが惚れたわけでもない。  いや、……たしかに見た目も大事だし、セシルの容姿にも好意をいだいているわけなのだが。  ウィリアムズがセシルに想いを寄せるようになったのは、学校のワルツの実技授業のときのこと、男子がニ名余ってしまうとき、髪の長いウィリアムズがクラスメイトから推薦された。  よくあるいじめというやつだ。  髪が長いというだけで何故自分が女役をやらなければならないという屈辱の中、片手を上げてセシルは女役に立候補してきたのだ。 「女役も踊れたほうが、将来役に立つかもしれないだろう?」  そう言ってセシルはその授業でいつも女役を、堅物なウィリアムズの相手役を請け負ってくれた。  その優しさにウィリアムズは惚れてしまったのだ。  だかしかし、本音はやはり違うものだった。 「……なぁんてな。こうやってクラスメイトやお前に恩を売っておけば、それこそ将来役に立つかもしれねぇだろ、ウィリアムズ?」  そう嘲笑っていたセシルにウィリアムズは固まった。  優雅でいてそして楽しそうにワルツを踊るセシルは、本人の目の前で嘲笑っているのだから始末におけない。  それでもウィリアムズは、精神的に頼もしいセシルに好感を感じたのだ。  そしてウィリアムズは彼の裏も表も知っている特別な存在なんだ、思うととても気分が良かった。  好きだ。  私はやはりセシルが好きなのだ。  そう確信したものの、その後最愛の妹エリザベスにセシルを取られ失恋し、挙句の果て大怪我を負わせ海賊にしてしまうとは、その頃のウィリアムズはまだ知る由もない。

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