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第14話 ※大丈夫ですから

 一人の付き人にここまでしてくださるとは、なんて懐の広い方なのだろうか。  この国では同性婚が認められているとは言え、跡取り問題などを考えるとやはり貴族で同性婚をする者は少ない。  嫡男でなければ自由なのだろうけど、クロード様はただ一人の侯爵家ご当主だ。  ご主人様と結ばれるなど、万に一つも可能性はないというのに。  いつまでも気持ちを切り替える事が出来ずにいる自分に対して、情けない気持ちでいっぱいになる。  そして王宮内の客室に連れて来られた俺はソファに腰をかけ、殿下もその隣りに腰を下ろした。  でもまだ涙は止まってくれない。  「お気を遣わせてしまい、申し訳ございません。 殿下は夜会がありますので、どうぞ行ってください」  「いや……クロードを呼んで来よう」  「いえ! 今は落ち着くまで一人になりたいのです……」  「しかし、君をこのままここに放っておいたら、アイツが怒り狂うに違いない」  殿下が怒り狂うクロード様の物まねをするので、思わず笑ってしまう。  「ぷっ、ははっ」  「すまないな。 あの令嬢は縁談の話が上がっているバラデイン公爵家のリュミエーナ嬢だ。 此度の話は政治的なものも絡んでくるので理由は言えぬが、クロードの力が必要だった」  「政治的な……」  「分かってくれとは言わないが……配慮にかける決断だった」  「仕方ない事なのです。 人にはそれぞれやらなければならない事があります。 殿下にもクロード様にも……私が未熟なだけです」  そうだ、今回の件は政治的なものも絡んでいるとおっしゃっていたから、お仕事でもあるのだ。  なのに俺がこうやって邪魔をしてしまっているのが悪い。  殿下やクロード様に気を遣わせて……自分の不甲斐なさにだんだんと腹立たしくなり、自然と涙が止まっていく。  「殿下やクロード様の邪魔にならないように、頑張ります!」  「……涙は止まったな」  「はい!」  王太子殿下はホッとしたのか笑顔になり、頭を撫でてくださった。  でも俺が一番頭を撫でてほしい人はクロード様だから……早く会いたい。  そして俺の願望が伝わったのか突然ドアが開かれ、そこには大好きなご主人様が立っていた。  「リック!!」  「クロード様!」  「早かったな。 もう少しフレデリックと仲良くしたかったのだが」  クロード様は俺と殿下を交互に見やった後、足早にこちらにやってきた。  そして俺の腕を引いて立ち上がらせると、その腕の中に閉じ込めた。  「殿下と言えどもリックはダメです」  「ほう? しかしリュミエーナ嬢はどうしたのだ? あのような衆人環視の前で抱き合っていたのに」  「抱き合ってなど……あれはっ」  政治的なものもあって、俺の前では口に出来ない様子のクロード様は黙り込んでしまう。  「大丈夫です、クロード様」  「まさか、リックも見ていたの?」  「えと……」  「そうだ、だからこの部屋へ避難させたのだ。 縁談についても了承してくれた」  「了承……?」  ご主人様の声がとても低くなる。  俺は了承するとは言ってないけれど、了承しなくてはならないとは思っているので、何て言えばいいか分からなかった。  了承していないと言ったところでどうなる?  この恋は俺の一方通行だ。  「私は気にしていませんので。 大丈夫ですから!」  努めて明るく、自分に言い聞かせるように伝えた。  しかしご主人様の表情は暗く、どこか遠くを見つめているように見える。    「……そうか、気にしないのか……分かった」  「クロード様?」  突如横抱きにされた俺は、何が起こったのか分からなかった。  「殿下、本日の夜会はこれにて失礼いたします。 もう役目を果たしましたので、いいですよね?」  「ああ」  「では」  殿下はなぜだか笑っていて、手をひらひらと振っていた。  俺は混乱しながらも殿下に頭を下げ、クロード様はそのまま王宮内を足早に駆けていく。  俺を抱きかかえているのに凄い速さだ。  「クロード様。 俺、歩けますから!」  「黙って」  ピシャリと言われてしまい、黙るしかなくなってしまう。  夜会に来ている人たちがいてもお構いなしに俺を抱き上げて歩くクロード様――。  護衛と付き人の役割を全く果たせず、主人に抱きかかえられているなんて。  そのまま行きと同じ馬車に乗り込み、侯爵邸へと向かう。  「クロード様、全然夜会に出られていないのでは?」  「必要ない。 今はそれどころじゃないんだ」  「はぁ……」  馬車の上で膝に乗せられた俺は、彼の腕の中でただひたすら邸に到着するのを待つしかなかった。  行きのような穏やかな雰囲気ではなくなってしまった馬車内は緊張感に溢れていて、早く邸に着いてほしくてたまらない。  そう思っていたのに……クロード様のお考えをまるで分かっていなかった俺は、邸に帰邸して思い切り後悔する事となる。  ~・~・~・~・~・~  「「お帰りなさいませ、旦那様」」  「レイラ、アーヴァン。 寝室にこもるから誰も近づけるな」    クロード様はお二人にそう告げ、俺を抱き上げたまま寝室へと歩いていく。  馬車の中でも無言だったし、先ほどの声もいつもとは違い、とても低くて緊張感がこもっていて怖くて堪らない。  俺が初めて見るクロード様だ。  猫の時も合わせてこんなにピリピリしたクロード様は見た事がなかった。  それなのに俺は……怖いと思う反面、ドキドキが止まらない。  どれだけご主人様が好きなのかと自嘲する。  こんなに鬼気迫る顔をしていてもカッコいいなんて。  寝室に到着したクロード様はすぐに俺を下ろしたので、顔を見上げて声をかけようとしたけれど、それは叶わなかった。  「クロー……」  「黙って」  「んぅっ!」  突然の口付けに、頭がまったく追いつかない。  今まで絶対にキスだけはしてくれなかったのに、どうして――――  キスなんてしたことのない俺は唇を閉じていたけれど、クロード様が小さな声で「口を開いて」と言うので、遠慮がちに開いた。  途端に彼の分厚い舌が口内へ侵入してくる。  「んぁっ……あぅ……ふ……んんっ」  「リック、逃げないで」  「らって……っ」  唾液も何もかも絡め取られていき、室内には水音が響き渡っていく。  クロード様が唇を押し付けてくるので、俺はのけ反るような形になりながらも彼の口付けを受け入れた。  強引だけど、ずっとキスしてほしかったから。  嬉しい――――  「ん……んんっ……クロード、さまぁ……」  すっかり膝が頽れてしまった俺をご主人様が抱き上げた。  そのまま唇が離れてしまわないように、互いに抱きしめ合う。  クロード様……大好き。好き。このままずっとキスしていたい。  唇も舌も唾液も全部ほしい。  美味しい。  「リック……んっ……舌だして」  なぜそんな事を言われたのか分からなかった。  でも遠慮がちに舌を出すと、彼の唇が俺の舌を食んで吸い付いてきた。  ちゅうぅっ。    「はぁ……ぁあ……っ」  「おいし……」  ご主人様は俺の舌を堪能しながらベッドへ向かって歩いていく。  まだキスをしてるだけなのに背筋が粟立つ。  「リックの顔、蕩けちゃってる。 ふふっ」  「んぁ……らって…………っ」  「かわいいなぁ。 今日は君の全部をいただくから」  「へ?」  よく分からない事を言われて混乱する俺をベッドに下ろし、クロード様は自身の服をどんどん脱いでいきながら俺の服も脱がしていく。  あっという間に下着姿にされ、下半身がすでに反応してしまっていたので、手で隠すしかなかった俺をご主人様が舌なめずりをして見下ろしていた。 

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