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第20話 幸せは歩いてこないから… 1
ちょっぴりシリアス展開続きますが、あまり長くはありません(笑)
三話ほど、リックの冒険にお付き合いください~~<(_ _)>
~・~・~・~・~・~
「ん…………」
今は何時だろう。
確か眠ったのは朝になってからだったはず。
随分眠ったような気がするし……ってお仕事があるのに!!
ようやく頭がハッキリとしてきて、ベッドから勢いよく起き上がった。
「すみません、クロード様! お仕事に……」
ベッドの横を見ると、そこにはご主人様の姿はなかった。
さすがにもう起きてしまったのだろう。
まだ日が高い時間とは言え、お昼は過ぎているに違いない。
レイラ様やアーヴァン様に怒られてしまう。
ベッドの上で一糸まとわぬ姿だった事に気付き、ひとまず衣服を着る事にした。
でも――――
「体中、また凄い痕…………」
ご主人様が付けた痕が全身の至るところに付いている。
昨夜も散々ぐずぐずにされ、一晩中求められた。
思い出しただけでも体が発火しそう……幸せで堪らない。
ご主人様はいつも後ろをよくほぐしてくれるので、まったく痛みはなかった。
挿入れる前に指でしてくれるのは、俺の為……?
そう思うとまた嬉しくて、ベッドの上で蹲る。
クロード様……クロード様……クロード様——。
彼の事を考えただけで、またすぐにご主人様がほしくなってしまうのだから、淫乱だと思われたらどうしよう。
ひとまず顔が見たいから、衣服を着て探しに行こう。
床に散らばった服をかき集めて着終わったら、クロード様の寝室を後にした。
首まで痕があるのでしっかりと着込んでよかった。
こんなのを晒して廊下を歩くなんて出来ないから。
さっそく侍女の一人を見かけたので、クロード様の行方を聞いてみる。
「あの、ご主人様はどこにいますか?」
「あらリック! 体調はもう大丈夫?」
先輩のプリメラ様が俺の体を気遣ってくれる。
でも体調は大丈夫って……まさかもう皆知っているの?!
「え、いや、あの……」
「もう、驚いたんだから。 あなたがお腹が痛くてまだ寝てるって聞いて……」
あ、なるほど……そういう事になってるんだ。
すっかり勘違いした俺は恥ずかしさを隠しながら、元気をアピールした。
「もう大丈夫です! ご心配ありがとうございます」
「旦那様なら執務室にいらっしゃると思うわ。 レイラ様とアーヴァン様もご一緒だと思うけど」
「ありがとうございます……!!」
皆そこにいるんだ。
俺は善は急げと執務室へと急いだ。
でもすっかり浮かれていて、忘れていたのだ。
幸せには限りがあるという事を。
いつまでも続く幸せなどない……一度人生が終わっている俺は、痛いほど痛感していたはずなのに。
意気揚々とご主人様の執務室の前に着いた俺は、ドアノブに手をかけた。
聴覚が人一倍良い俺の耳に、中の会話がクリアに聞こえてくる。
『旦那様、リックには負担が大きいのですよ!』
『………………』
『彼は孤児ですし、後々傷付くのは彼です』
『……分かってるよ』
『分かっておりません! 連日こんな事をなさるなんて……』
俺はドアの前で立ち尽くしてしまう。
レイラ様がとても怒っている。
そして一番聞きたくない話をしているのが伝わってくる。
でも……気になって聞きたくないのに聞いてしまう。
『公爵令嬢の件もありますのに……旦那様とあの子は結ばれる事が出来ないのです』
『……そんな事は分かっている』
ご主人様の言葉に凍り付いてしまう。
クロード様も分かっているんだ……そうだよね。
俺だってそれくらい弁えているし、結ばれる事は絶対にないと思っている。
でもいざご主人様がそう話しているのを聞くと、物凄くショックを受けてしまう。
『はぁ……旦那様はリックを連れて来るべきではありませんでした』
この声はアーヴァン様の……だんだんと皆がそう思っているような気持ちになっていく。
俺がご主人様に迷惑をかけてしまっている。
でも俺はここにいたい。
皆が大好きだし、何よりクロード様が大好きだから。
結ばれる事が出来なくてもそれでもいいんだ、誰に否定されてもご主人様が必要としてくれれば、ここにいてもいいって思える。
だから……否定して――――
『…………そうかもね』
俺の願いは空しく、クロード様はアーヴァン様の言葉を認めた。
すぐに踵を返し、その場を後にする。
なんで……どうして否定してくれないの?
俺はクロード様に連れて来られて、とても幸せだった。
皆もよくしてくれて……素敵な思い出ばかり頭を巡っていく。
でもいつの間にか、ここの人達にとって俺の存在は迷惑をかけるだけで、都合の悪い存在になってしまったのかもしれない。
胸が苦しい。
息が出来ない。
「はっ……はぁ……」
廊下で立ち止まり、少し深呼吸する。
こんな有様で……どうやって皆の顔を見て生活すればいいんだろう。
レイラ様やアーヴァン様に会っても、クロード様に会っても……泣いてしまいそう。
一人になりたい。
そんな事を考えたのはクロード様に拾われる前、貧民街に住んでいた時以来だった。
ここに連れて来られて、皆が良くしてくれたから忘れていた……俺はずっと独りだったじゃないか。
いつの間にか周りに人がいるのが当たり前になって、皆に甘え過ぎていたんだ。
俺は急いで自室に戻り、少しの荷物を布袋に入れ、邸から出ていく事を決めた。
いわゆる家出ってヤツだ。
でも家出をした事でとんでもない状況になっていくとは、思ってもいなかったのである。
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