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第1話

――この身体が邪魔だった。Subの性に目覚めた時から、ずっと。 「ダイナミクス」――生まれつき定められた第二の性。 DomとSub。支配する側と、される側。  ただの性癖じゃない。 本能に深く刻まれた……クソみたいな現実だ。   あいつらの――Domの声や視線に身体が絡み取られて、奪われる。俺の体なのに、俺のものじゃなくなる。 そんなもんが「個性」? 笑える。 呪いの間違いだろ。 気持ち悪い。   ……だけど、5年前――17の冬に知った。  俺自身もそんなろくでもない化け物だってこと。   だから、全部壊した。 どんなに視線や声で縛ろうとしても、Domなんて所詮はただの人間だ。 Subの俺がその気になれば、簡単に潰せる。 俺には、Domなんか必要ない。   ……なのに。 「おはよう、よく眠れた?」 優しすぎる声が耳に染み込んで、胸を満たしていく。 あたたかくて、心地良い。 ――俺にはそんな場所、あるはずがないのに。 目を開けると、俺の頭は、誰かの膝の上にあった。 (……は?) ふわりと髪を撫でられた瞬間、首筋の毛が逆立った。 思わず跳ね起きて、距離を取る。   (なんでっ……あいつ、俺に何をした?!) 「て、めぇ! なにしてっ…」 「あ、尻尾が」 「!!」   違和感に振り向くと、白と黒の虎柄の尻尾が揺れていた。ぶわりと逆立って、膨れて、威嚇するみたいに。 慌てて隠すが、……もう、遅い。 ――最悪。   「……ふふ」 笑い声が耳に届いて、無意識に睨みつける。 なのに、そいつは怯むどころか、笑ってた。 「元気そうだね?」 なんなんだよ、その顔。 なんでそんな、溶かすような甘い声で―― ……ああ、そうだ。思い出した。 ぜんぶ〝あの夢〟のせいだ。 何か思い出せそうなのに、何ひとつ掴めないまま終わる。 白くぼやけて、やたら柔らかく、暖かい夢。 そこで聞こえていた、声。 夢の中の、姿の見えない誰かの声と、   「そんなに睨まないで?  ――可愛い顔が台無しだよ?」   そう言って、細い指を口元に添えて、悪戯っぽく笑いかける。 この"声"が、 このDomの甘ったるい声が、夢の中の声と、 似ている気がした、から。

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