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最終話:結び※
ベッドでふたり、横になった。
ジークはルーカスのシャツを脱がしていく。絹のような肌が露わになる。
ちゅ、ちゅ、とキスを落とした。鎖骨、肩、脇腹に唇が触れる。
「んっ……、ぁ……っ、」
ジークの舌が乳首をかすめる。先端をちゅるりと吸った。
「あるじさま、」
「んっ、…………っ、な、なにっ」
「声、聞きたいです」
「や、っ………は、ずか、しい」
「聞かせて」
ジークはピンク色の乳首を弾き、こね、柔らかく擦る。
「んっ、ぁあっ、やっ」
ルーカスは足をばたつかせた。毛布に足が絡んでうまく動けない。
強くない、けれど、だからこそもどかしい快感が身体を覆う。
息が上がる。は、は、と荒くなる呼吸に、あえぎ声が混ざった。
ジークはルーカスのスラックスに手をかけた。するすると下ろす。
細い、滑らかな足が露わになる。下着も取り払われ、小さなペニスがぴょこんと跳ねた。ルーカスはかぁっと顔が熱くなった。咄嗟に身体の下でよじれている毛布をつかむ。
ジークはじっくりと恥部を眺めている。いたたまれなくなってルーカスは叫んだ。
「ぼ、僕ばっかり脱がすな! お前も脱げ!」
ジークははっと我に返った。「は、はい」と慌てて飛び起きて、自身の服に手をかける。
ルーカスは裸で毛布にくるまり、隣でジークが脱いでいく様子をちらりと眺めた。
シャツがばさりと床に脱ぎ捨てられる。美しい筋肉がついた上半身が現れる。さすが獣人というべきか、人間よりもずっと立派な体躯だった。薄暗い部屋に映える白銀の髪はいつも通りなのに、服を脱いだ途端、一気に雄の獣になった。
毛布を掴む手に、きゅっと力が入る。
ジークがスラックスに手をかける。下着とともに脱ぎ捨てられ、ぶるんっと肉棒が飛び出した。
……え?
視線が釘付けになってしまった。
赤黒く、びきびきと血管が浮き出ている。かなり大きい。ルーカスの腕より太い気がする。
ジークが躊躇っていた理由がやっと理解できた。けれど。
胸の奥で、淡い高揚感が爆ぜた。
「主様」
「な、なに」
「毛布のなか、入れてください」
裸になったジークが近づく。ベッドサイドにあった軟膏を手にしながら。
ルーカスは、うう、と顔を赤らめながらも、身体を覆っていた毛布をそっと開いた。
ふたりで毛布にくるまって横になる。裸だった。
顔だけ出して、その下の身体は見えない。柔らかい布が剥き出しの肌に触れ、慣れない感触に鼓動が暴れる。ふたり分の体温のせいか、熱い。
寝転がりながらキスをする。
ジークの手がルーカスの恥部に下ろされた。身体がぴくんと跳ねる。どこを触られるか見えない。
けれど、だからこそ、ペニスをなぞられ、先端をきゅっと撫でられると、腰が砕かれるようだった。
「んっ、だ、だめっ、それ、」
毛布のせいでうまく動けない。どこに視線を向ければいいのか分からず、弱々しく毛布を握る。
ジークは軟膏をたっぷりととった指で尻を割り、後ろの蕾に手を伸ばした。
「ひゃっ……!」
そんなとこ。ルーカスは羞恥に頭がおかしくなりそうだった。
わかっていたけど、わかってなかった。咄嗟に目の前の胸板に頭を埋める。
ジークの手は止まらなかった。優しく探るように縁をなぞる。ぬちょ、とゆっくりと孔に入ってくる。
毛布の中は暑い。ジークの身体も熱い。真っ赤になって、汗だくで、溶けてしまいそうだった。次第に呼吸が荒くなる。
そして、中を探る指が、ある一点をかすめた。背骨から頭に駆けて、甘い刺激が雷のように走る。ああっ、口を大きく開いて、叫んだ。
「やっ! そこ、だめっ!」
「大丈夫です」
「だめっ、ぁあっ! や、やだぁっ!」
ルーカスはいやいやと暴れる。けれど、強く抱きしめられ、動けなかった。
「慣らさないと痛いですよ。ほら、我慢です」
「あっ、あんっ、やっ、ばかっ、あっ」
もう必死に叫んでいた。口の端から唾液が零れる。ジークはその唾液すら舐めとる。
背を反らし快楽から逃れようとしても、全身を抱えられ、弱いところをじっくりと攻められた。生理的な涙でルーカスの視界が白く霞んだ。熱い。
ジークが、くるまっていた毛布をそっと外した。
ルーカスは毛布の上で力なく横たわる。すっと気持ちのいい空気が肌に触れた。
白い肌はピンクに染まり、汗が滲んで、瞳が溶けている。
その姿は差し出される獲物のようだった。
ジークは無意識に耳がピンと立つ。
今すぐにでもむしゃぶりつきたくなるのをこらえ、唇を寄せた。顔、胸、腕。薄い腹、くぼんだへそに、精液をだらだらと零すペニス。吸い寄せられるように、丁寧に舐めた。
ルーカスはされるがままになっていた。いつの間にか射精していたらしい。抵抗したくとも力が入らず、毛布の上で手足が泳ぐ。波打つ。
ジークはペニスを舐めながら、穴の中の指を増やした。一本、二本と、ゆっくり、じっくりと繰り返す。快楽が永遠に続くように感じた。むしろある種の責め苦でもあった。
「も、…も、いいっ、ぁっ、はいる、だろっ、もうっ」
「まだです、もうちょっと」
「あ、やぁっ、あんっ、はやくっ、いれてっ、」
ほとんど助けを求める気持ちだった。
胸を上下に動かし、あ、あ、と必死に空気を取り込む。
ジークは目の前の獲物を見下ろした。
体中が真っ赤で、顔がとろけている。
庇護欲と嗜虐心が絡み合って、どろどろに愛したいのに、ぐちゃぐちゃにいじめたくもあった。
穴はひくひくと動き、軟膏で白く濁っている。触れるといやらしい糸を引く。
ジークは大きくそそり立ったペニスを、入り口に触れさせる。
小さくて可哀想な穴と、大きくて暴力的な肉棒。まさしく肉食獣に食べられる小動物だった。
ぬぷ、と入っていく。熱くて、さんざん慣らしたはずなのに、狭かった。
粘液がペニスに絡みついて、ジークは全身の毛が逆立つほど気持ちがよかった。
「あ、ん、………んっ」
「痛いですか」
「いた、く、ないっ、」
ルーカスはきゅっと眉根を寄せる。さすがに二回り以上大きな獣人を受け入れるのは辛い。
ジークはゆっくりと腰を進めた。ずず、と、半分ほど入った頃、ルーカスの身体を優しく抱きしめた。
「ぜんぶ、はい、った………?」
「はい」
「ん、……ジーク、きもちい?」
「はい。とっても、幸せです」
ん、とルーカスは口元をほころばせる。
ジークは髪を撫で、小さな身体で受け入れてくれた、愛する人を愛でる。
すき、すきだ。すき、衝動を止めることができずに、自然と腰が動いた。
まだ慣らさないと、と分かっているのに、止められなかった。
とん、とん、と、緩やかな律動だった。繋がっているところから幸せが込み上げてくる。
ルーカスは次第に肉棒の存在にも慣れてきて、ナカがきゅう、と快楽を拾うようになった。蛇口からぽたぽたと滴が垂れるように、甘い声が零れた。喉を反らす。
「大丈夫ですか」とジークが声をかけると、ルーカスは「ん」と、とろんとした瞳で微笑んだ。
「すきだよ、じーく」
聞こえないくらいの声で、呟く。
ジークは息を呑む。どくん、と全身の血液が沸いた。今までこらえていた衝動が全て込み上げてくる。
「……あるじさま」
「んぁ、んっ、……っ、どした?」
「…すみません、」
ぐんっ、と一気にジークが腰を打ち付けた。
「え、ま、まっ、あっ、おっき、おっきくしないでっ」
「むり、むりです、とめられないっ」
「ああっ、あんっ、やぁ、ああっ」
さっき全部入ったって言ったのに、まだ肉棒がぐんぐんと入ってくる。
どちゅん、どちゅん、どちゅん。
優しいキスのような律動から、全身を食らい尽くされるような激しい穿ちになった。
悲鳴のような喘ぎ声が零れる。目の前の立派な身体にしがみつくしかできない。
霞む視界で捉えたジークは、本能に飲まれた獣だった。息が荒く、無意識に牙が覗く。
ルーカスはもう、何度目か分からない射精をしていた。弱い勢いで白濁が溢れる。
途端にナカの肉棒が膨らむ。ジークは歯を食いしばり、小さな身体をかき抱いた。
最奥で熱い液体が弾ける。びゅるるるる、勢いは止まらず、ナカから征服されるようだった。
一回では収まらず、ジークは何回も出した。ルーカスは身体を反らして喘ぎ、すべて受け止めた。
終わったあと、ベッドはドロドロで、ぐちゃぐちゃで、どうしようもなかった。
「……すみません、暴走しました」
シーツを替え、ルーカスの身体を拭き、ジークは頭を下げた。ばつが悪そうに眉を下げているが、肌はツヤツヤしている。
ルーカスが口を開こうとすると、喉が潰れて変な声が出てしまった。
「水」
「はい」
「………ばか」
「すみません」
ジークがコップに水を注ぐ。ルーカスはこくこくと飲んだ。
事後の、ピンクに染まった肌と喉が上下する姿を見ると、また下半身が大きくなりそうだった。ジークは必死に目を逸らす。
ルーカスはコップをベッドサイドに置く。両手をジークに向かって広げた。
「ん」
ジークが首を傾げる。するとルーカスは、「来い」と掠れた声で告げた。
「いいんですか」
「はやくしろ」
ジークは恐る恐るベッドに近づき、ルーカスの細い身体を抱きしめた。度重なる行為のせいでうまく力が入らないようだ。ルーカスは口をへの字に曲げたまま、ジークの髪をポンポンと撫でた。
「お前は加減を覚えろ。次は二回までな」
「……え、つ、つぎ?」
「減らしてもいいんだぞ」
「い、いや、嬉しいです!」
ジークは耳をピン、と立たせた。ルーカスはじろりとジークを睨み上げる。
白銀の尻尾がぶんぶんと跳ねている。もふもふ動いて、犬みたいだ。
しょうがないな、とルーカスはふわふわの耳を撫でた。昔から、叱ったあとはよくこうして撫でている。「もう怒ってないよ」の合図だ。
別に、ルーカスとてこの行為が嫌いではなかった。加減さえしてくれればいい。
次があったっていい。いや、恋人なら、次があるだろう。
ジークはうっとりと目尻を下げる。お互い、このなでなでの意味は分かっていた。
しばらくベッドで横になり、水を飲んで、だらだらと過ごした。
「そういえば、ジークはどうしてこっちに来れたんだ?」
「ああ。”転移魔法”を使いました」
ルーカスは目を見開いた。
前に転移魔法の練習をした時、ジークはたった二十メートルですら失敗したのに。ジークとルーカスが住んでいる場所は文明度が違うくらい遠く離れているのに。それほどの距離を、どうやって。
そう考えているのが分かったのか、ジークは目尻を下げて照れたように口を開いた。
「主様にたくさん魔力をいただいたので、それを全部使いました」
「……そう、か」
「ええ。主様に契約解除されてから、悲しくて悔しくて。毎日毎日、転移魔法で飛べるように意識を集中させて、主様の魔力を探していました。そしたら、やっと今日、主様の魔力の反応があったので。すかさず呪文を唱えて飛びました」
ジークはなんともない様子で答えるが、ルーカスは胸の奥がずきりと痛んだ。
魔力を空っぽにしてから、回復するまで二週間。それもわずかな量だから、遠くの地から見つけるのは大変だっただろう。ルーカスも寂しい思いをしていたが、ジークはそれ以上に辛かったに違いない。
「……ごめん。ムリさせたな」
「いえ、謝らないでください。あの時、主様に転移魔法を習っていてよかったです。……それに」
ごそごそとポケットを探る。
取り出したのは、前にプレゼントした方位磁針の見た目をしたおもちゃ、”灯の針”だった。
「これのおかげで主様の居場所が分かりました」
ジークがうっとりとした瞳で方位磁針を見つめる。
”転移魔法”は目印となる魔力の位置が分からないと移動できない。
これに魔力を入れていたので、ジークはルーカスの場所が分かったのだろう。
「会えてよかった」
ジークが微笑みかける。宝物を扱うような手つきでガラスを抱きしめながら。
ルーカスはきゅっと唇を噛んだ。
さらさらの白銀の髪。優しい赤い瞳。ふわふわの耳に、揺れる尻尾。全身から歓喜がにじみ出ている。
首元には、何もない。
「……召喚契約、なんだけど」
ルーカスはぽつりと呟いた。
もう一度ジークと一緒にいられたら嬉しい。
けれど、召喚契約は奴隷契約の一種であると本に書いてあった。
召喚士と召喚獣は対等ではない。
このまま契約がない方が、ジークは幸せかもしれない。
続く言葉を考えるより先に、ジークはぱっと瞳を輝かせた。
「結んでくれるんですか!?」
「ま、待て。よく考えろ。僕に人生の選択を握られるんだぞ。今だけじゃなくて、このあとの人生も……」
「結んでほしいです」
ルーカスが言い終わる前に、ジークは勢いよくかぶせた。
「……よく考えろよ」
「わかってますよ、もちろん。主様が言いたいこと。でも、俺の言い分もあります」
「なんだ」
「俺と主様だったら、俺の方が強いですよ」
「そりゃ、半分狼だからな」
「俺が暴走したら止められないでしょ。俺は主様を簡単に傷つけられるんだ。ある程度は主様に権限がないと不公平です」
そうか、とルーカスは呟く。その発想はなかった。
確かに、対等な権利を持つ恋人同士になったとして、フィジカルで襲いかかられてはどうしようもない。
「召喚魔法ですぐ会える。他のやつに奪われない。主様を傷つけてしまう前に、主様が止めてくれる。俺にはメリットしかないんですけど」
「……お前がいいなら、いいんだけど」
ルーカスは消え入る声で呟いた。
もちろん、自分だって召喚契約はあったほうがいい。今までもずっとそうしてきたし、目に見える繋がりがあるのは安心する。
けれど、心の奥底で、これが本当にジークの幸せなのかと、不安に思ってしまうのも事実だ。
ジークはルーカスの髪を撫でる。
「貴方に人生を握られるなら本望だ」
赤い瞳は甘くとろけながらも、絶対に離さないと、強く語りかけていた。
―――そっか、
ジークの瞳は出会った頃から変わらない。
ずっと自分を離さなくて、見守って、愛している。
抱えていた不安が、泡のようにぱちぱちと消えた。
「契約だ、ジーク」
両手を重ねて、指を絡める。
「僕とずっと一緒にいろ」
「はい」
ぱっ、と部屋が眩しく光る。
あの日見た、オレンジの光。希望の光。ジークが現れる時の、優しい光だ。
しゅるる、と赤い宝石が空中に現れて、ジークの首に収まった。
自分の召喚獣である証。
唯一無二の、自分たちだけの特別な関係。
「主様、これからもずっと、よろしくお願いしますね」
近い距離で見つめ合う。
十年以上前に交わした契約と同じ台詞だったけれど、今はそれ以上の関係が足されている。
主従関係で、恋人で、これからの人生を共に歩む、パートナー。
ルーカスは「うん」と頷く。
どちらからともなく、キスを交わした。
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