5 / 5
第5話「朝のお散歩」
「ぼく!!!おおきくなったらおにいちゃんとけっこんする!!!」
小さな少年は、俺に向かって
真っ直ぐな思いを伝えてくれた。
きみの勇気を俺は少しばかりも否定したくなかった…その真っ直ぐな思いを素直にありのまま受け止められたらどれだけ良かっただろう。
でも…叶わない約束をすることも残酷だと思ったから、俺は俺なりの言葉で返事を濁した。
『そっかぁ~俺、予約されちゃったか~!』
俺はしゃがみこんで少年と目を合わせる。
「よやく?」
『そう、よやく!』
ジリリリリリリリリリ
鳴り響く目覚ましのアラームを止める。
『………久しぶりに見たな…あの時の夢…。……はぁ…起きよ。』
第5話 「朝のお散歩」
俺は洗面所に行くと顔を洗い、歯を磨き、朝の身支度をはじめる。
すると台所の方から母の声が聞こえてきた。
「ゆうー?朝ごはん食パンと昨日の残りのオムライスどっちが良いー?」
『しょふはーん(食パーン)』と歯磨きしながら答える。
俺は中学の頃から母と二人暮らしをしている。いや正しく言えば今は母とワンコ3匹…二人と三匹暮らしをしている。
家計を支えるために、母親が再婚するまでは家は出れないとは思っていたけれども…まさかこの年齢になってしまうとは…。
まぁ、仕方のないことだと今では割りきっている。家事は交互に分担しており今日の料理当番は母の日だった。
俺は歯磨きを終えるとリビングに向かう。
テーブルの上にはバターが一切れ乗ったこんがり焼きめのついたトーストが2つ置いてあった。
『いただきまーす。ん…うまっ…』
俺がトーストを食べていると右下からものすごい視線と風圧を感じる。
『…あげんよ。ちみたちは自分のごはんあるでしょ。そっちを食べんしゃい。』
熱い視線を送っていた正体は
四男犬のチョボと五男犬のもそすけだ。
尻尾を左右に激しく動かしながらキラキラした眼差しをこっちに向けてくる。…くそ…かわいいな…愛してる。…しゅき、しゅきしゅきしゅきしゅき。
『ごちそうさまでした。』
俺は朝食を食べ終えると立ち上がり、長男犬タクと次男犬ジェームスの写真が飾られた棚に手を合わせる。
おはよう。今日も向こうで美味しいもの食べてたくさん遊んでたくさん愛されててね。
『よしっ、散歩いくか!』
俺はチョボと、もそにそれぞれリードをつけて散歩の準備をはじめる。
『お母~ルアは行きたそうにしてる~?』
と和室にいる母に尋ねる。
「ルア、今日はいいみたい。」
『はーい。』
三男犬ルアは18歳のおじいちゃん犬のため、
散歩に行きたい時と行きたくない時が
その時々で変わるのだ。どうやら今日は行かなくていいらしい。
ちなみに我が家の弟たちは皆ミニチュアダックスフンドだ。
俺はチョボと、もそを連れていつも通り朝の散歩をはじめた。
いつもの道を通り、歩道橋を渡り、大きな公園を一周して帰る。それが決まった散歩コースだった。
『やっぱ、朝の空気は澄んでて気持ちいいねー。』
歩道橋を渡り、大きな公園へ入りかけたその時、急にチョボがリードを強く引っ張る。
『ちょ!なになに!どしたの!』
チョボにつられてもそすけも走り出す。
ひーーーーっ朝からガンダッシュはキツイてぇー!と思いながらも俺もついていく。
すると視線の先で黒いジャージの男性が走っている姿が見えた。なるほど。あの人につられたのか。そう思ったその時
スポンッ
『…へ?』
チョボの首輪が緩んでいたのか外れてしまう。
チョボは外れたリミッターをいいことに
公園の芝生を更に早いスピードで走り抜け前を走る男性に近づく。
まーっずい!!!俺はもそを瞬時に抱き抱え全力でチョボを追いかける。噛みつくことは絶対にしないがとりあえず危ない!早く追いつかないと!
チョボはジャージの男性に狙いを定め
飛びかかる体勢に入った。
やばい!俺は咄嗟に大声で
『チョボ!!!』と叫ぶが聞き耳を持たない。
だがその声をジャージの男性が気づき足を止め振り返る。
『お兄さん!!!危ない!!避けて!!』
「えっ…」
チョボがお兄さんの身体めがけてダイブする。
お兄さんはすぐさま状況を理解し素早くしゃがみこむと両手を広げチョボをキャッチする。
「おおーっ!元気だなーっ!」
チョボは尻尾を全快にさせながらお兄さんの顔をベロベロと舐めはじめる。
『だぁぁぁぁぁあ!!!!ごめんなさい!ごめんなさい!お怪我ありませんか?!』
やっと追いつき
もそすけを一度下に下ろし、すぐさまチョボをお兄さんから引き剥がそうと手を伸ばすと…
「あはは!大丈夫ですよ!元気いっぱいですね!…ってあれ?佑一さん!?!」
『え!!!柴山くん!?!』
なんとチョボが突撃したお兄さんは、
柴山くんだったのだ。
一瞬お互いの時が止まったが、
俺はすぐさま正気を取り戻し
チョボを柴山くんから引き剥がす。
『あぁー!柴山くん!ごめんうちのこが!』
「いや大丈夫ですよ!俺も実家に犬居るんで!」
『いやーでもビックリしたー…まさか柴山くんだったとは、とりあえず良かった…ん?いや良くないか。ビックリさせちゃってほんとにごめん!』
「いやいやそんな!謝らないでください!たしかにビックリはしましたけど、どちらかというと佑一さんに会えたことの方がビックリしたので。」
くぁぁぁぁあ!この男は!
柴山くんは立ち上がると俺が抱き抱えたチョボの顔を両手でワシャワシャしはじめる。
『わんぱくだな~!でもわんぱくすぎると佑一さんビックリしちゃうから気をつけなきゃダメだぞ~!』
…か…か…か…かわいいいいいいい。
なんだこれなんだこれ好きと好きがコラボレーションしてる、有料コンテンツか?有料コンテンツなのかコレ!!!好き!
柴山くんはチョボをひとしきりなで終えると、俺の足元で大人しくしてるもそすけを見て、今度はもそすけをワシャワシャしはじめる。
「お名前、なんて言うんですか?」
『あぁ!このこがチョボで!そのこがもそすけ!』
「おまえもそすけっていうのかぁ~!いい名前だなぁ~!」
くぅぅぅぅぅぅ~~~~!!!!!
朝日より眩しいぜコンチクショー!!スパチャ送らせてくれーい!!!
おれは必死に平然を装う。
『柴山くんは朝のランニング?』
「はい!仕事じゃないときはいつも朝走っているんですが、いつものランニングコースが今日から水道管の工事で通行止めになってしまって、それで良い機会だからと思って、はじめてこっち側まで走りに来たんです。」
『なるへそ!どうりでいままで会わなかったわけだ!』
「佑一さんはいつもここでお散歩を?」
あっ、今日も名前呼びになってる。嬉しいな。
『うん!いつも大体この時間にこの辺歩いてるよ~!』
「…じゃあ。俺も今度からこっちで走ろうかな。」
ちょっと湿度が高めな笑顔で柴山くんが微笑むと、俺はその衝撃に耐えることが出来ず
咄嗟に下を向いてしまう…。
エッッッッッッッッッッッ!!!!!
な、な、な、な、なに今の顔。
エッッッッッッッ!!!!!
『うん…。』
やばい…続く言葉がなんも出てこない。
顔が熱い。やばい。でももっかいあのご尊顔を網膜に刻みたい。ええい、ままよ!
俺が恐る恐る顔を上げると目の前には。
もそすけの顔がドーンと待ち構えていた。
柴山くんがいつの間にかもそすけを抱き抱えていた。
ほえー背が高いから胸元に抱き抱えるだけでもこの位置に顔が来るのか。ほえー…。
俺の思考がポンコツになる。
「佑一さん、ご迷惑じゃなかったらお散歩ご一緒してもいいですか?」
『え!あ、うん!もちろん!』
「っし!」
柴山くんが小さくガッツポーズを決めている
ん!?!?え???
やめて、勘違いしちゃうからやめて。
落ち着くんだ佑一。そうだ落ち着くんだ。
こんな素敵な人が俺のことを好きになるわけなんて天地がひっくり返ってもあるわけないじゃないか。いい加減目覚めなさい。
さぁほら落ち着いてチョボの頭を吸うんだ。
スゥゥゥゥゥ
うん!落ち着いた!さっきのは俺の妄想が見せた幻!んだんだ!そうだ。そうに決まってる。
俺と柴山くんはそれぞれの手にリード紐を持ち朝の公園散歩をはじめる。
「なんか、良いですねこういうの!新婚生活みたいで!」
『そうだね。』
………………ん?え、いまなに、新婚生活って言った?!
俺はバッ!と柴山くんの顔をみるが
柴山くんは何事もなかったかのような顔をしている。聞き間違い?だよね。そうだよね。
おいおいおい待ってくれよ。
最近妄想幻聴多すぎだって…。
…しばらく妄想は控えた方が良いかもな。うん。いやほんとに。このままだと色々とマズイ。よしっ切り換えてこ!
「佑一さん!聞いてもいいですか?」
『おっ!いいよー!なんでも聞いてくれたまえ!』
「あっ!答えたくなかったら答えなくていいんで!」
『うい!』
「じゃあいきますよ、佑一さんはどんな人がタイプですか?」
[『え?…柴山くん。』
「え…」
『だから柴山くんだって…俺の好きな人……ずっと隠してたけど…俺、柴山くんのことが好き。』
「佑一さん…俺も、あなたが好きです。」
『え…うそ…』
「うそじゃないです!」
『柴山くん…』
『佑一さん…』
Happy kiss ]
ってなことになればいいのになぁ。
………でもほんとに。
素直に《好き》って伝えられたら
どれだけ楽だろう。
何も考えなくてよかったら
どれだけ素直になれてただろう。
大人になるにつれて《知る》世界が
俺の素直な心に蓋をする。
「佑一さん!佑一さん!」
柴山くんが心配そうに俺を見つめる。
『え?あぁ!ごめんごめん!ちょっとまだ寝ぼけてたみたいボーッとしちゃってた!えーっとなんだっけ?俺のタイプ?俺のタイプは~一途な人!かな?』
柴山くんが無表情で固まる。どうした。
どうした柴山くん。
「えっと…他には?」
『他だと~
(うーん、ありのまま言っちゃうと変に警戒させちゃうよね。高身長、短髪、大型ワンコ系イケメン、地方出身で実家に歳の離れた弟さんと妹さんがいる人かな~なんていうと全部当てはまっちゃうもんね。ほんと勘弁してくれよ。俺の癖全乗せBoy)
そうだな~……』
何て言おうか考えていた時、
[ 「ぼく!!!おおきくなったらおにいちゃんとけっこんする!!!」 ]
今朝の夢にも出てきた俺に真っ直ぐな思いを伝えてくれたあの少年が頭に浮かんだ。
『………真っ直ぐに自分の思いを伝えられる人…かな?』
そう言ったあと
柴山くんの顔を見たら。
柴山くんは顔と耳を真っ赤にさせながら片手で口元を隠し少し顔をそらしていた。
「…その…佑一さん…のいま…す…好きなひ…と………ことは…なんですか?」
『好きな一言は《実直》かな!』
「す、好きな食べ物は?」
『とんかつ!とハンバーグ!』
「好きな飲み物は?」
『緑茶とカモミールティー!』
「好きな漫画は?」
『ヒロスク!(【君のヒーローハイスクール】)』
「好きな動物は?」
『犬と狼!ってさっきから俺の好きなものしか聞いてないじゃん…ふふっ…』
「…あ…本当だ…ははっ…」
『それにそんなに俺なんかの好きなもの聞いても何の得にもならんでしょ。』
「そんなことないです!!!」
『おおぅ!ビックリした!』
「あ!すみません!…でも本当にそんなことないです。俺、佑一さんの好きなものどんどん知れて…本当に嬉しいです!」
『そ…そっか…あ、ありがとう…。』
「…はい…。」
柴山くんの曇りのない真っ直ぐな瞳と言葉が
俺の心と体温を熱くする。
俺は恥ずかしさを誤魔化すために
咄嗟に言葉を絞り出す。
『じゃ、じゃあ今度は俺が柴山くんに質問するターンね!!!』
「はい。どうぞ。」
柴山くんは優しい口調で俺に微笑む。
『好きな動物は?』
「俺も犬です。お揃いですね!」
だぁぁぁぁぁあ!もう!いちいちこの子は!
そうやってサラッとキラーワード使うんだから!けしからんぞ!実にけしからん!
『好きな漫画は?』
「実は今まであんまり漫画を読んでこなかったので、もしよかったら今度色々とおすすめ教えてください。あ、さっき佑一さんが好きっておっしゃってたヒロスクは早速帰ったら電子書籍で買って読みますね!」
『まじか!嬉しい!ヒロスク本当に神作だから!主人公の《雨ニ藻アメニモ 負気強マケズ》くんが本当にもう…本当に良いこで…気付いたら頑張れって応援しちゃうから…ほんとに…安心して読んで!…あ!2Lの水とバスタオルをすぐ横に置いて読むことをオススメします。いや、ほんとに泣くんで。泣きすぎてやばいことになるんで。』
「ははっ!わかりました!ちゃんと用意してから読ませていただきますね!」
『ヒロスク読み終わったら、他にも色々布教するから覚悟しておいてね!』
「はい!楽しみにしてます!」
嬉しいな!嬉しい!
柴山くんと好きな漫画トークが出来る未来が目の前に…!気が早いかもだけど帰ったらオススメリスト作っとこ!
『じゃあ次は好きな飲み物!』
「麦茶!」
『あっ、ぽい!』
「ほんとですか?」
『うん!解釈一致!』
「解釈一致?」
やべっ!
『はい次!好きな食べ物!』
「白米!」
え…トゥンク!
ベストオブアンサーやんけ…好き。
え、なんなんこの人、なんでこんなにも全てを兼ね備えてるの?もしかして二次元から出てきちゃったの?そんな人間がこの世界に存在するの?たっはーーーーーっ!ありがとう!ただひたすらにありがとう!大合掌。
『白米は間違いないよね、俺も白米大好き!』
「本当ですか?俺、秋田出身なんですけど、じいちゃんちが米農家でいつもお米送ってくれててそれが本当に美味しくて…!今度お裾分けするので良かったら食べてください!」
『いいの!?わーーー!めっちゃ嬉しい!楽しみー!!!』
「佑一さんの楽しみ作れて良かった。」
そういうと柴山くんはまた優しい顔で俺の顔を真っ直ぐ見つめた。
ヒィィィィィィィもうやめてくれぇぇぇぇ
ここまでくるともう何周も回って全て俺の妄想なんじゃないかって怖くなってきちゃうから。
『好きな一言は!!!』
「好きな一言はー…ってさっきから佑一さんも俺がした質問と同じ質問じゃないですか。」
『あっほんとだ…ははっ』
俺たちは目を合わせははっと笑い合う。
「ちなみに好きな一言は《予約》ですね。」
『え?なんそれ…フフッ…柴山くん面白ぇ男すぎる…フフッ…生まれてはじめてあったよ…好きな一言が《予約》って人…フフッ…』
あれでも《予約》って言葉、どっかで聞いた気がする。うーん。思い出せん。まっいっか。
『じゃあそうなると…次の質問は』
「俺の好きなタイプですね」
柴山くんは俺の言葉に被せるように言うと、チョボが道端の花の匂いを嗅いでるタイミングで立ち止まりそのままグイッと顔を俺に近づける。
ドキッ
「俺の好きなタイプは、」
柴山くんの手が俺の頭の上に乗せられる。
「これくらいの身長で」
え、え、え?
「笑顔がかわいくて」
まってまってまって
「目がいつもキラキラしていてまつげもこのくらいの長さで。」
柴山くんの手が頭から顔に沿って下りてくる。
「どんな時も一生懸命で」
まってまってまってまってまって
柴山くんの手が俺の頰を優しく撫でる。
「困ってる人を見かけたら、たとえ相手がどんな人でも迷わず助けちゃうような人。」
これって…これって…もしかして俺のこと?!?え?!まって!!!
いや、まず自分の笑顔がかわいくて目がキラキラしててとかいつも一生懸命でとかサラッと自認しちゃってるあたりくそキモいんだけどそんなんは置いといて、え、まって。
これは、あるのか?いやそんなわけはない…こんな素敵な人が俺のことを好きになるわけなんてない!そんなの絶対に…絶対に…ないに決まってるじゃんか…
俺はゆっくりとうつむいた顔をあげる
するとその目に映った柴山くんの顔をみて
煩かった頭の中が静かになる
あっ…これ…まじなやつだ。
本気の顔だ。え、でも、え…?
どうしよう…期待しちゃっても…いいのかな…
俺の思いも今…ここで伝えちゃってもいいのかな…
そう頭の中で思考を整理していると柴山くんが再び口を開く。
「俺はその人に…ずっと昔から恋をしています。」
え?
俺の頭が真っ白になる。
ずっと昔から。
そんなの。
もう俺のことじゃないじゃん。
「佑一さん?…佑一さん!」
『え?ああ!ごめん!なんだっけ?』
「大丈夫ですか?なんか顔色良くないですけど。」
『え?あ、ちょっと、もしかしたら昨日あんま眠れなかったからそのせいかも!』
柴山くんの手のひらが俺の額に触れる。
「熱は…ないみたいですね。」
俺はその言葉と共に反射的に身を引いてしまう。
あっやばい。
「…佑一さん?」
『え、あっごめん!柴山くん!そろそろ俺帰って仕事行く準備しないと!散歩手伝ってくれてありがとね!いっぱい話せて楽しかった!じゃ!またお店で!柴山くんもお仕事ファイトね!それじゃ!』
「え、あ!はい!また!」
俺は逃げるようにチョボともそすけを連れて公園を走り去った。
早く早く柴山くんから見えないところに行かなきゃ。
俺は唇を噛みしめた。
ガチャ
「おかえり~なんか今日いつもより長かったねなんかあったー?」
和室から母が顔を出しながら尋ねてくる。
『ん。なんもない。』
「…そう。」
バタン。
俺は部屋に入ると鉛が繋がったような重い足を一歩ずつ進め、引き出しの前で立ち止まる。
そして引き出しを開けて、
中に入れていた2枚のチケットを取り出す。
《【アラディーン】35周年記念
フィルムオーケストラ 指定席》
『一緒に行きたかったな…』
ポタ、ポタっと
水滴が床に落ちる。
『…ぐっ…うっ…うっ…ぐっ…』
俺はチケットをにぎりしめるとそのままうずくまった。
溢れる涙が止まらない。
だから言ったじゃん。
散々自分に言い聞かせてたじゃん。
そんなこと絶対にあるわけないって。
こうなりたくなかったから…
こんな思いになりたくなかったから…
何度も勘違いだって…そうやって自分を守ってこれてたじゃん…
こんなにも…こんなにも…苦しい思いを…
もう二度としたくなかったから…
好きになんて、なりたくなかったのに…
う…ぐ…う…う…うわぁぁぁぁぁぁぁあ
俺は母親に聞こえてしまうこともお構い無しに、溢れる思いを抑えられず大声で泣いた。
第5話「朝のお散歩」
ともだちにシェアしよう!

