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第46話
陽が暮れてきた頃、二人で散策を続けていると正面から強面のイタリア人男性が二人歩いてきた。
年齢は柴田よりも上だろうか。
『うわ……怖いな』
柴田は肩を竦(すく)めながら何事もなくすれ違おうとした。
どちらも服装が黒コーデのいかつい雰囲気で、本当にマフィアなんじゃないかと思ってしまう。
柴田の隣を歩く光輝は全く気にすることもなく歩いているので、大分度胸があるのだろうかと思われる。
『頼む……何も起こらないでくれ……』
危ないことなど起こることはないのだが、柴田は本気で内心願った。
そして、まさにマフィアっぽい男たちとすれ違う際に、不意に声を掛けられた。
「モシカシテ ニホンジンデスカ?」
声を掛けられたことで、柴田はギョっとして振り向いた。
光輝の顔を見ると平然としている。
続いて男たちの方に目を向けると、予想に反してニコニコとしていた。
「え?そ、そうですけど……」
「ハジメマシテ ワタシノナマエワ ジョルジオトイイマス。イッショニイルノワ ルカ デス」
確かにイタリア人は陽気でフレンドリーらしいが、突然声をかけてくることなどあるのだろうか。
柴田は驚きを禁じ得ない。
「は?はぁ……」
聞くところによると、日本で暮らしていたことがあり、日本人を見るとテンションが上がるのだそうだ。
しかし、柴田としては関わって良いのか分からない。
するとジョルジオという男は、もう一人のイタリア人・ルカと何やら相談をし始めた。
少し話した後に柴田たちの方を向くと、ジョルジオは笑顔を向けてきた。
「コレカラ ワタシタチト ゴハンデモイキマセンカ?」
ジョルジオが食事に誘ってきたので、柴田は「ちょっと待って」と言い、光輝と共にイタリア人たちと距離を取った。
「どうするよ、怪しすぎだよな」
「うーん……悪い人たちではないみたいだけど……」
「信用してもいいかな」
柴田は初対面の人間と食事をしたことすらほぼないので、身構えてしまう。
「まぁ、気を付ければ大丈夫じゃないかな」
柴田たちはイタリア人たちと一緒に食事をすることにした。
「ナニガ タベタイデスカ?」
そう問われ、まだ現地のピザを食べていないことを思い出した。
「ピザ食べたいよな」
柴田が提案すると、光輝は頷いた。
「あぁ、そうだね。ピザが食べたいです」
光輝が言うと、ジョルジオの表情が一段と明るくなった。
「イイデスネ! オイシイ オミセ シッテマス」
イタリア人たちに連れて行かれたのは、そこから歩いて数分の場所にあるおしゃれな店だった。
「良さそうな店だな」
「うん。期待できるかも」
期待しながら柴田たちは四人で席に着いた。
柴田が光輝と並び、ジョルジオとルカが向かいに並んで座る形だ。
「ナニガタベタイデスカ?」
メニューを見ると色々とあり迷ってしまう。
サイズも様々にあるようだ。
「そうだなぁ……」
「ココハ マルゲリータガトクニオススメデス」
横でルカも「ボーノ ボーノ」と言っているので、柴田はマルゲリータが良いと告げた。
「二人でシェアしようか」
光輝が柴田に提案してきたが、ジョルジオは「ノー」と止めてきた。
不思議に思っていると、イタリアではピザを一人一枚注文するのが決まりらしい。
「ピッツァワ ジブンデナイフヲツカッテ カットシナガラタベマス」
「へぇ。そうなんだ……。知らなかったな」
ジョルジオも、日本にいた時にデリバリーピザなどを見て母国との違いに驚いたという。
四人はその後、皆で一つずつマルゲリータと赤ワインを注文した。
運ばれてきたピザは、柴田や光輝にとってちょうど良いサイズだった。
「うまっ!」
思わず光輝の声が出た。
続いて柴田も食べやすくカットしたピザを口に運ぶ。
「ほんとだ。美味い!」
柴田も、本場の味に夢中になり舌鼓を打った。
ジョルジオやルカも、満足そうに柴田たちのことを見守っていた。
お腹も満たされ、ほろ酔い気分で幸せな時間に浸る。
食事が済むと、ジョルジオとルカが何やら話をして、こちらをチラチラとうかがってきた。
何だか品定めでもされているようで、気分はあまり良くないかもしれない。
『なんだ?』
そう思って隣を見ると、光輝も少し眉を顰(ひそ)めていた。
「アナタタチワ トモダチドウシデスカ?モシカシテ、ツキアッテマスカ?」
「え……」
本当であれば不躾な質問だと思うだろうけれど、外国人なら明け透けに聞いてくるのだろうかと思う。
ジョルジオのしてきた質問に戸惑ってしまい、どう返答していいのか迷ってしまう。
光輝と顔を見合わせたら、彼も戸惑っているようだった。
「フタリワ トクベツナカンケイジャナイノカト ルカガイッテイマス」
観念した柴田は、事実を伝えることにした。
「そうです。俺たちは付き合ってますよ」
すると、ジョルジオたちの目が輝いた。
「オー!ソレワスバラシイ!ワタシタチトイッショニ タノシイコトシマセンカ?」
「え、え!?」
柴田は状況が飲み込めない。
「何かヤバくない?」
光輝も焦りを感じているようで、耳打ちしてきた。
「あぁ、まずいよな……」
身構えていると、さらなる衝撃が襲う。
「ワタシワ アナタガ キニイリマシタ」
ジョルジオの視線の先には柴田がいた。
「は、はぁ?」
「ルカワ ソチラノカレガイイソウデス」
ジョルジオの視線の先には、光輝がいた。
『はぁ!?』
冗談じゃない。
酔ってはいたが理性は保っている。
その酔いも一気に醒めてしまう。
「コレカラ モリアガリマショウ」
「せっかくですが、そういうつもりはないので」
「ワタシタチデハ ダメデスカ?」
ジョルジオは悲しげな顔をした。
「いや、そうじゃないけど、やっぱりそういうのはやめときます。な?」
光輝に同意を求めると、彼も「うん」と頷いた。
ルカが何かをジョルジオに言ったので、それをジョルジオが訳した。
「ルカハ タノシマセル トイッテイマス ドウデスカ」
そう言われても、さすがに無理だ。
そんな趣味はない。
「でも、無理です。他探してください。それじゃ……」
柴田は光輝の腕を掴み、その場から逃げるように立ち去った。
食事代は、ジョルジオたちが奢ってくれると言っていたので大丈夫だろうか。
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