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(結)ジェンガ族の少年ミンジャの思い出

 四百万ダラルで侯爵の家に買われたミンジャは、そこから十五年ほどを性奴隷(ラブドール)として過ごした。  情の深い主人だったのだ。  盛りを過ぎたミンジャは、侯爵の手配で侯爵家の園丁として第三の人生を歩み出すこととなった。覚えることは山ほどあるが、草木や花の世話は愉しい。砂漠の民として生きていては見られなかった麗しい庭。新しい生活を、ミンジャはとても気に入っている。  とはいえ、侯爵はミンジャを完全にお役目御免にする気はないようだ。二週間に一度は寝所に招かれては、一晩の相手を務めている。それをミンジャは嫌なこととは思わない。ただ、本当に優しい主人に恵まれて良かったと思うばかりである。  沢山の夜で上書きされたミンジャの記憶は、実の父親の存在を今度こそ完全に忘れさせた。  もう思い出すことがないくらいに、今のミンジャは満たされている。  ただ、ミンジャを調教し、この世界に導いた男との日々は、今でも偶に思い出す。それは憎しみではない。悲しみでもない。もっといえば愛でもない。ただ甘やかに胸を満たす記憶。それは、故郷を懐かしく思う気持ちにも似て、ミンジャの胸に涼やかな風を吹かせるのだ。  情の深いミンジャの主人は、彼が貴族の誰かであることをミンジャに教えてくれた。もしかすると、会えるかも知れないよ。性奴隷(ラブドール)を集めたパーティに参加させられたミンジャは、ミンジャを誇らしげにエスコートする侯爵にそう告げられたが、あまり気持ちが動かなかった。それもその筈。ミンジャは侯爵の愛情を疑っていなかった。お前は可愛いね、ミンジャ。あの男に代わってそう囁きかけてくれるようになった侯爵は、十五年の間、常にミンジャを夜の供としてベッドに置き続けてくれたのだ。 「今日の花の調子はどうだい、ミンジャ」  新しい性奴隷(ラブドール)を迎え入れた侯爵は、日に一度はミンジャの許を訪れて、ミンジャの仕事ぶりを尋ねていってくれる。 「とても綺麗に咲いていますよ、侯爵」  だからミンジャは幸せだった。  始まりこそ不穏ではあったものの、終わりよければ全てよし。(All's well that ends well.)ミンジャの過酷な人生は、こうして、買うべき相手に買われたことで薔薇色に染まったのだ。

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