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(七)闇オークションの顛末

「綺麗だよ、ミンジャ」  闇オークションの控室に運び込まれた檻の中で、クラストは今日の為に用意した衣装をミンジャに身に纏わせた。  白いニーハイソックスを吊り上げる白いガーターベルト。ウエストを絞る白いコルセットには前が開いた白いミニスカートが付属している。短めの白いベールで頭を覆ったミンジャは、淫猥な花嫁といったいでたちだ。 「本当ですか……その、恥ずかしい……」 「自信を持つのだね。君は今日出品される商品の中でも上の部類に入る」  乳首にミンジャの瞳と同じ色の宝石をあしらったニップルリングを嵌め込んだクラストは、続けて性器に太めのペニスリングを嵌めていった。未熟に映るミンジャの性器を引き立てるリングは、必ずやオークションの参加者たちの目を惹くことだろう。  狙いは三百万ダラルでの落札だ。  ミンジャの素質であれば五百万ダラルが相当だとも思うが、なにぶん学のない少年である。調教の後半、暇を持て余しているミンジャに本でも読ませてやろうとクラストが思い立った際に判明したことだが、ミンジャは五歳児ぐらいの知識しかないようで、簡単な文字は読めるものの、少し複雑な文字となると全くだった。  書く方に至ってはからっきしだ。  最上級の性奴隷(ラブドール)ともなれば、読み書きどころか大学の勉強までも理解する知識を有しているが、そこまでミンジャを仕込んでやれるほどクラストは暇ではない。次の商品の引き渡しの手配も始まっている。今日を限りにクラストがミンジャを手放す決意をしたのは、だからだった。  そこに惜別の念はない。  クラストにとってのミンジャは、どれだけ素質があろうとも、そして辛い過去を背負っていようとも、これまで数多く調教してきた少年たちの内のひとりでしかなかった。明日になれば思い出の隅っこに残るだけの存在となるミンジャ。けれども、彼が何処に幾らで引き取られることになるかについては、直接この目で確認しないと気が済まなかった。  それこそが、不幸な過去を持つこの少年への(はなむけ)だ。そう信ずるクラストは、だからこそ、ミンジャを大事に、そして丁重に、闇オークションの会場に送り出してやることにした。 「怖いかい、ミンジャ」  檻の中で微かに震えているミンジャの肩を抱いたクラストは、いつもより優しくミンジャに尋ねた。 「少し……」 「安心したまえ。君がいたマルーシャ地方と比べれば、格段に過ごし易い環境が君を待っている」  そうした環境に引き取られるぐらいの躾を、クラストはミンジャに施した。あとは結果が出るのを待つだけである。  容姿だけなら合格点どころか加点が付くほどだ。そこに加えてあの感じ易さである。アナルの仕込みにこそ時間がかかっているが、その甲斐あって、クラストが調教した商品の中では最高傑作に近く仕上がった。きっと、長い時間を新たな主人に可愛がってもらえることだろう。  クラストは檻を出た。  ステージ側から聞こえてくる歓声が、会場の熱気を伝えてくる。  クラストが『商品』の付き添いを務めることは、事前にオークショニアに伝えてあった。商品に対してクラストがドライななのはオークショニアも知っている。それだけに、さしものオークショニアも驚きを隠せなかったようだ。あのクラストが、それだけ自信のある商品を出してくるらしい。噂はあっという間に闇オークションの参加者たちの間を駆け巡った。  当然だ。  きっと彼らは今か今かとミンジャの登場を待っていることだろう。スタッフから出番の案内を受けたクラストは、運ばれてゆく檻に歩みを合わせながら控室を出た。そして、ステージの脇に控え、闇オークションの進行役がミンジャの名前を呼ぶのを待った。  ――次の商品の登場です。フォドルーナ産、ミンジャ!  クラストのブリーダーとしての屋号が呼称された瞬間、会場の熱気が最高潮に達した。  それがミンジャを怯えさせてしまったようだ。びくっと身体を震わせたミンジャが、檻の隅で身を縮こませる。いまだに繊細な心を失わないミンジャに、クラストはマスカレードマスクの下で笑った。何せ久しぶりにクラスト以外の人間の顔を見るのだ。ミンジャの反応も無理はない。 「大丈夫だよ」クラストは柵越しにミンジャの身体を撫でてやった。「さあ、行こう、ミンジャ。新しいご主人様に御挨拶だ」  おずおずと檻の中央に進み出てきたミンジャに、クラストはステージへと檻を運び込んだ。  期待通りの商品であったのだろう。より大きな歓声が、クラストとミンジャを包み込む。熱狂が坩堝となって押し寄せてくるステージ。気恥ずかしそうに頬を染めながら、檻の中でしどけない姿を晒しているミンジャがいじらしい。  ややあって、歓声が止む。  性奴隷(ラブドール)の競売には実技が伴った。それもそうだ。安くない買い物である。どれだけの感度を誇り、どういった痴態を晒してくれるのか。それを確認しないことには金は出せない。クラストが参加者であれば同じことを考えるだろう。  クラストは柵越しに、ミンジャに土台に吸盤が付いている張型を手渡した。  こくりと頷いたミンジャが、事前の打ち合わせ通りに檻の手前に張型を設置する。動く仕草の愛くるしさが参加者の胸に響いているようだ。ほう。と、彼らの口から感嘆の溜息が洩れる。 「いいかい、ミンジャ。いつも通りだよ」  再び頷いたミンジャが膝を立ててしゃがみ込む。ゆっくりと張型を飲み込んでゆくミンジャの蕾。続けて膝を大きく開いてみせたミンジャに、小さな歓声が起こる。  そこにあるのは、黒々とした張型をしっかりと咥え込んだ菊座だった。色白なミンジャの肌に相応しい薄桃色の蕾。いいよ、ミンジャ。やりなさい。クラストはミンジャに声をかけた。ちらとクラストに視線を向けたミンジャが、ゆっくりと、そして妖しくミ腰を動かし始める。  ――あ、ん。うぅ……やっん……  円を描くように動いては、上下に振ってゆく。ミンジャが展開する卑猥な見世物に、会場内の全ての視線が集中した。  ――や、ん。あ、あぅ。いい。ここ、いい……  大胆に、けれども繊細に。クラストが少年を調教する際に理想とする姿を体現したミンジャの痴態は、目の肥えたオークション参加者たちの心を掴んだようだ。会場内のあちらこちらから喉を鳴らす音が聞こえてくる。  値踏みを忘れて魅入る参加者たちに満足したクラストは、ああ、可愛いよ、ミンジャ。ミンジャにだけ聞こえるように囁きかけた。  そうするとミンジャの反応が良くなることを知っているからだ。  高く競り落とさせる為には、ミンジャの魅力を存分に発揮させてやらなければならない。そういった意味でクラストは、きちんとミンジャに目を掛けていた。ミンジャはそれを知らないだろう。けれども、クラストの気持ちに応える気はあるようだ。次第に腰の動きを速めてゆくと、うっとりとした表情を晒して、せわしなく喘ぎ始めた。  ――あぅ。いく、いっちゃう。いや、でちゃう。らめ、いく、らめ……  感極まると出てくる舌ったらずな喘ぎ声は、ミンジャの特長のひとつでもある。それが参加者の目には新鮮に映っているようだ。身を乗り出して注視する者も多い。  ――いくぅ。いくいく。いっちゃう。せーえき、でちゃう。らめ、らめ、そこらめ。いいぃ。あぅ、いっちゃう、いっちゃう……  性器の先っぽを濡らして喘ぐミンジャは、これまでになく輝いた姿をみせているようにクラストの目には映った。  この調子であれば問題なく()けるだろう。クラストは静かにミンジャの痴態を見守った。  ――やっ。いくぅ。いく。いっちゃう。ら、らめ。らめぇ……!  ひときわ大きな嬌声を上げて、ミンジャが腰を跳ねさせる。同時に飛沫を散らしながら迸る液体に、おおと観客席がどよめいた。  ――ひゃぅ。でちゃった……でちゃ……た……  大勢の観客の前で腰を振っている自分に対して、感じてしまったようだ。いつもより早く絶頂(オーガズム)に達したミンジャが、びくびくと快感の余韻に震える。その顔が羞恥の色に染まっているのを見て取ったクラストは、ひとつの成就に達成感を覚えて愉悦に浸った。  手のかからなかった少年は、どういった幸せをこれから掴むのだろう。  それはそう遠くない未来だ。  オークションの進行役が声を上げる。さあ、では先ずは二百万ダラルから! 同時に会場の方々から値を吊り上げる声が響き渡る。これなら問題あるまい。自分の予想が当たったことを確信したクラストは、檻の中のミンジャに向けてにこりと微笑みかけてやった。

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