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5章

……ややあって、腕の中から小さな寝息が聞こえてきた。  こっそりと覗き込んでみると意外とあどけない寝顔をしていた。  そのとき、郁の口元がもぞもぞと動いた。  まんじりともできなかった望月は、寝顔を盗み見たのがばれてしまったのかと身を硬くした。  だが――ごめん、郁はそう呟いただけだった。 「郁……?」  名前を呼ぶ。  だが、彼は相変わらず、眠ったままだ。  どうやら、寝言のようだ。 「今のは、何に対する謝罪なの……」 ――僕の故郷を滅ぼしたこと?  否、きっとそうではない。  直感的にそう理解した。  あの日――夕暮れの花畑で、石板に対してこうべを垂れていた郁。  アネモネの花がざわつく――なぜか、ふと、あの光景を思い浮かべていた。 (全ての答えが知りたい……! どうして、君は、何も言ってくれないの――!)  眠っている郁をそう詰りたい気持ちに苛まれる。  この狼は、いつも、望月の前では肝心のことを黙していた。  それは、未だに変わらない。  頭を掻きむしりたいような強い苛立ちの衝動がわきあがる。  だが、望月は、その衝動が自分のどこから来ているのか分からずに、途方に暮れた。

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