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5章

『望月、』  頭の中ではっきりと声が聞こえる。  舌足らずな甘い声――望月は、その声の主を知っていた。  どっ、どっ、と心臓が強く鼓動する。 「君は、プティ・アネモネ……?」 ――あの白い空間で出会った少女だ。 『良かった。私の声が聞こえるのね。やっぱり、私の思ったとおりね!』  少女の声は嬉しそうに弾んでいた。  どうして、彼女はそんなに喜んでいるのだろう……? 『あなたは、全ての答えが知りたいんじゃない? 郁があなたに隠していること。そして、あなたの故郷の遂げた最後について疑問を抱いている』 ……まるで、望月の頭の中をそのまま読んだような言葉の数々だ。  望月は黙した。 『そうかもね。私はある意味、あなたの頭の中を知っているのかも。でも、それは、郁も同じよ』  饒舌に少女は喋る。  鈴を転がすような愛らしい少女の口吻に、望月はとうとう、言った。 「プティ・アネモネ……“君は誰なの“」 『やっと、聞いてくれたね、望月。ねえ、こっちにおいで』 「アネモネ、こっちって……」  当然、室内には、プティ・アネモネの姿はない。  窓には、やせ細った三日月。  元はアイボリーだったらしいくすんだ色のカーテン。  ただ、無機質で――郁の読み差しの本やシャボン液の浸かったマグカップ。  ふたりの生活の痕跡がある部屋だけがある。  傍らで郁は眠っていた。  彼女は、まるで、神聖な予言でもするように厳かに告げた。 『望月、あなたの力は完全に開花した。今なら私に会いにこれるはず――』  ぱらぱら、と本の頁(ページ)を捲るような音がしたと思いきや、そこで望月の意識は断絶した。  

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