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幕間 望月とプティ・アネモネを名乗る少女の対話

幕間 望月とプティ・アネモネを名乗る少女の対話  いつもの白い空間。  そこにひとりの少女が立っていた。  繰り返す夢の中で、起点たるプティ・アネモネとの対話から一連の出来事を反芻し続けてきた。  だが、今思えば――望月は、その夢の中でも――夢から覚めた後も『彼女の顔を認識できていなかった』  だから、望月は少女のかんばせを見て、後ずさった。  腰まで広がった黒い髪。黒い双眸。  質素な白いワンピース姿。  そして、愛らしい狼の耳と尻尾がちょこんと揺れている――。  少女は微笑した。  身体の造作は違う。  まだ、年端がいかない亜人種であることは分かる――それに、メスだ。  しかし、かんばせは、『望月とまったく同じ』だった。 「君は、だれ」 「もう、分かってるよね。私の名前は、プティ・アネモネじゃない」  少女は、すうと深呼吸をすると自身の本当の名前を口にした。 「私の名前は、もえぎ」 ……どこかで聞いた名前だ。  それも、たぶん、望月の意識下に強く刻まれている名前。  その名前を聞いたときに、自分の中で予感めいた感覚が走ったはずだ。  再び、望月は、その名状しがたい情動に陥っていた。 「あなたには、おにいちゃんの説明をした方が分かりやすいかな? 私は、もえぎ。郁の妹」  思いだした。  あのとき、アネモネの花畑で、郁が祈るように、贖罪をするように口にした名前だ。 「もえぎ……郁の妹……でも、郁はそんなこと、口にしたことなんて」  すい、とプティ・アネモネの名を偽った少女――もえぎは、指を虚空に滑らせる。  途端、望月の身体が浮遊した。 「待って、もえぎ! 僕は君に聞きたいことがいっぱい、あって――!」 「そうね。でも今のあなたの力なら、過去に干渉できるはず。直接、視た方が早いわ」  どんどんと白い空間が遠ざかっていく。 「もえぎ!」  望月は、悪あがきをするように、五指で宙を掻き――ただ、彼女の本当の名前を叫んだ。 「……今こそ、真実を知るべきなのよ……」  どこか、感情を押し殺すようなもえぎの呟きがひとつ落ちた直後――。  望月は、感覚だけの存在となり、過去へ飛んだ。

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