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5章【終焉】-2 散華編

 日が落ちる頃になっても、もえぎの姿は見つからなかった。  途方に暮れた郁は屋敷に行き、事実を報告した。 「この馬鹿が!」  そう声を荒げたのはコロニーの長……潮の父だった。  そして、郁の頬を激しく打擲した。 「なぜ、もえぎから目を離した!? お前はあれの目付け役だっただろう。コロニーを継続するには子を残さねば。もえぎが母体として生きているうちに、できるだけ子をなさなければ――」  長は、はあはあと息を荒く乱し、唾をまき散らしながら叫んだ。  郁はびりびりと痺れる頬には頓着しなかったし、謝罪もしなかった。  ただ、長は、郁に罵詈雑言を浴びせるだけだ。 (また、子産みの話か)  郁の内心は冷めていた。  皆が皆、もえぎを『子産みの道具』として存在をみなしている。  もえぎの言うとおり、この場所(コロニー)は、ひどく歪な環境だった。 「郁、聞いているのかっ!」  激昂した長が再び、手を振り上げたところで、その手を掴む人物がいた。  潮だった。 「父様。今はコロニーの者を多く集めて、もえぎを探すのが先決です。彼女の身に何かあったら……とりあえず、手配はさせました」 「あ、ああ……そうだった。今、あれを死なせるわけにはいかない……」  長は上等な絹のハンカチで汗を拭き、いつもの様子に戻った。  そして、少し休むと言って、部屋を出ていってしまった。  部屋には、潮と郁だけが取り残された。 「大丈夫? ひどい顔色だ。とりあえず、もえぎの捜索に皆で当たっているから、郁も今は部屋で休んで――」  潮の手が肩にかかった。  反射的に郁はその手を振り払った。 「触らないで」  そのまま、ふらふらともう潮を顧みることなく部屋を後にした。  背後で潮が醜く、顔を歪ませていた。

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