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5章【終焉】-2 散華編

 太古の森がわなないている。  濃い緑の匂いに夜気の冷たさが、身に染みる。  風が吹いた。  たまゆら、郁は目を閉じる。 (まだ、もえぎが元気だった頃……薫が出て行って――ふたりで食料を探しに森に探しに来た) 「おにいちゃん、見てっ」  すももの茂みを見つけたもえぎの得意げな愛らしい顔が忘れられない。  郁は、アレキサンドライトの瞳を再び、開いた。  だが、時間は流れた。  もえぎは婚儀の話が出るほど、成長した。 「もえぎを見つけて……ここから、出ていこう……」  もえぎを見つけたらこう言おう。 ――おれが間違ってたよ。もえぎの言うとおり、こんな場所出ていっちゃおうよ。 ――これからは、おれともえぎ、ふたりだけで生きていくの。  そう言ったら、もえぎはまた明るい表情に戻ってくれるだろうか。  また、おにいちゃんと呼んでくれるだろうか。  郁の目に熱いものが滲むが、泣くのはもえぎを見つけた後だ。  ふたりで、泣いて、そのまま手と手をとりあって、こんな場所は出て行ってしまおう。  この世界には、きっと、まだティンブクツーがどこかにあるはずだから。  そう郁は勇気を奮い立たせて歩き始めた。  

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