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5章【終焉】-2 散華編

 森の奥深く――いつか、郁が座り込んでいた丸太に小さな影を見つけた。  もえぎが、蹲っていた。 「もえぎ、見つけた……探したよ……」 「おにいちゃん、」  のろのろと緩慢にもえぎが顔をあげる。 「わたしね、ずっと……迎えに来るの待ってた……」  声はうつろなままだ。  妹の吐露に胸が痛くなる。 「迎えに来るのを遅くなってごめん」 「ううん。おにいちゃんはいつも私を迎えに来てくれるから……昔から、ずぅっと……」  どこか、寂しそうな笑みを浮かべてもえぎがそこで言葉を切る。  一瞬、間が空いて――森のわななきだけがいやにうるさく聞こえた。  郁は、きゅっと口を閉じた。  それから、勇気をだして、切り出した。 「もえぎっ、おれが間違ってた……もえぎの言うとおりだった……ね、こんな場所、もう出て行こう……これからは、何にも縛られずふたりで生きていくの」 「……ほんと?」  小さな声でもえぎが問うた。 「うん。どんなに苦労してもいい。ふたりで生きていければ、それで、おれは幸せだから。だから、もえぎ……外に行こう」  やっと、もえぎが、微笑んだ。  体調のせいか弱弱しくはあるが、いつものもえぎの笑顔だった。 「うれしい、私、その言葉を待っていたの……ずっと、ずっと……」  もえぎが郁の腕にもたれてくる。  なんだか、熱っぽい。  それに鼓動がいやに早かった。  彼女がげほっとせき込み、黒い何かを吐いた。  郁は、ぞっとした。 「もえぎ、具合悪いの? 見つからないうちに家に帰って荷物をまとめよう。ここにいちゃいけない、から……」  たどたどしく、郁は妹にそう促した。 ――何か、嫌な予感がする。  だが、気のせいだと願いたい。  だって、これからふたりでこの“鳥かご“を出ていくのだから――! 「その言葉が聞けて、私、幸せだった……」  ことん、とガラス玉が落ちるように、もえぎが言った。 「……もえぎ、どういうこと――」 ――目にあるものが止まった。  郁は、それに気がついて息を呑んだ。  腕の中でもえぎの表情は、泣き笑いに変わり――。 「でも、もう遅いんだよ……」   ――それが、彼女が残した最後の言葉だった。  

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