3 / 22

第3話

『なんかさ、ユウトの事探してる奴居るけど』 俺を探してるなんて、ロクな奴じゃない あそこに集まってる奴等は、大抵そんな奴等だから 基本、自分の親しい奴ほど、知らないフリをして、こうして知らせてくれる 何関係だ? 全く見当違いで探されてる事もあるからな 「南風…」 「っ!…何?」 「…ごめん…お風呂…どうしようかと思って」 「一緒に入ろ♪︎」 「うん……溜めて来るね」 ビックリした~ スマホに夢中になり過ぎて 紫月が傍に来たの、全然気付いてなかった 『分かった』 『気を付けとく』 「し~づき~」 「あ、また…いちいち裸のまま、迎えに来なくていいってば」 「早く早く」 「分かったから。もう…ほんとに風邪引くよ?」 「引かない引かない。俺、頑丈だもん」 向こうの世界が近付くと こっちの世界の終わりを感じる 全然違う世界を 全然関係ない紫月に、近付ける訳にはいかない 「じゃあ、まずは髪洗いますね~」 「ふっ…お願いします」 「んん~。今日も、いい髪ですね~」 「そうですか?」 「シャンプー付けま~す。いい泡立ちですね~」 「南風と違うの?」 「全然違~う。紫月の髪は、一級品」 「ふふっ…そんなのあるんだ」 男と、ちゃんと付き合ったのは初めて ってか、ちゃんと付き合うってのも、よく分からないけど 少なくとも、俺が付き合った中で 紫月は、別格な人間だ 「背中擦りま~す」 「は~~い」 「力加減どうですか~?」 「丁度いいです」 「じゃあ、前向いて下さ~い」 「前はいいです。ありがと…ちょっ…」 「前は、手で洗ったげる」 「自分で洗うって…ちょっと…こら、南風」 きっと紫月も、そうなんだろな 俺みたいに底辺な人間と付き合うの 初めてだろうな スーツも、コートも、靴も 俺にはブランドなんて分からないけど とにかく何でも、高そうなのは分かる 多分、見上げる程高いビルに、オフィスがあって 暑くも寒くもない、快適な環境で働いてるのが普通で 「紫月~~♪︎」 バシャッ 「っ…ちょっ…お湯…顔にかかったよ。そんな勢い良く抱き付かないの」 「だって、嬉しいんだもん。紫月と風呂入るの、楽し~」 「俺も、南風とお風呂嬉しいし、楽しいよ」 「んん~~…紫月~~…」 あんまり別格だから 今までより、離れ難いだろな ずっと一緒なんて無理だけど 「もう少し…このままがいいな…」 「南風がのぼせないなら、いいよ」 俺が、ボソッと呟いた言葉を 紫月が勘違いして返してくれた 「じゃあ、あと1時間」 「それは、さすがに2人共のぼせるよ」 「紫月、明日普通に仕事だよね?」 「そうだね」 「でも…ちょっとだけしたい」 「いいよ」 たまたま偶然始まった、この生活 なんか、成り行きで始まった、この関係 紫月が、なんで俺なんか気に入ってくれたのか それは、いくら考えたって 『未知の世界の人間を発見したから』 それ以外の理由が見付からない 「んっ…紫月…疲れるから、寝てていいよ」 「ふっ…やだよ、そんなの」 「でも、俺がするから、横になってていいよ」 「南風の気持ちいいのも見たいから」 ゲイじゃない筈の紫月が なんで、そう思ってくれる程、気に入ってくれたのか ただ 体の相性は最高 すっげぇ気持ちいい あと… なんだろな 紫月に見詰められるのも 紫月に触れられるのも なんか、違うんだよな 今まで、感じなかった なにか 位の高い人間は 見詰めたり、触れたりするだけで なんか違うのかな とにかく… とにかく… 心地がいいんだ 「結局、寝るの遅くなっちゃって、ごめん」  「全然?気持ち良かったよ」 「俺も、すっげぇ気持ち良かった……紫月…頭…匂い嗅いでいい?」 「ふっ…ほんと好きなんだね?シャワー浴びたんだし、南風と同じ匂いだよ?」 「違うよ…紫月の匂い、ちゃんとするよ」 抱き付いた紫月の耳の裏 同じシャンプー使ってたって 全然違う 紫月の匂い… なんでこんなに、好きなんだろ なんでこんなに…心地いいんだろ…… 「行って来ます。南風も、今日はバイト?」 「うん。またテキトーに探して行って来る」 「そっか。あまり無理しないでね…んっ…」 「紫月もな。行ってらっしゃい」 「行って来ます」 いつも通り 日雇いバイトへと向かう これでも、色んなバイトしてきたから それなりに、接客とか、分かってるつもり 失礼な態度なんて、取ってないつもり 真面目に…働いてるつもり 知ってたら、ちゃんとやってたし そういう事もあるとか、知らないし 俺も、勿論間違うけど これは…さっき、あの人がした事で…… 色んな矛盾や理不尽を抱えつつ それでも、日雇いは、その場限りだから どんなに嫌な思いしたって お互い、そこでバイバイだ 正直…何かを、思いっきりぶっ壊したい気分だ 原形なんて、とどめないくらい めちゃくちゃにしたい だけど あの場所に帰るって思うと これから訪れるであろう時間を考えると いつの間にか、そんな気持ちは、消えてって 紫月が帰って来る前に お家で待ってますかね 「ユウト!」 「ん?」 「超久しぶりじゃ~ん。遊ぼ~」 「行こ行こ~。何処行く~?」 「いや、行かねぇよ」 「え~?なんで~?遊ぼ~よ~」 「俺は、これから用事があんの」 「あっ!そう言えば、結構前にユウト探してる人居たよ~」 は? 最近じゃなくて? どんだけ探されてんの?俺 「どんな奴?」 「んっとね~…なんか、マッチョな感じ」 「げ~」 「あれでしょ~?リコの今彼。なんか、リコと少しでも関係あった人、探してるみたいだよ?」 「は~~?付き合ってからの話じゃなくて?どんだけだよ?そんで、ナミは聞かれてスルーしてくれたんだな?」 「知ってるけど、最近ずっと見てないよって言っておいた~」 俺が、バカな自覚はある だけど、この俺でも、バカだなと思う奴が、この界隈には珍しくない 「お前さ…そういう時は、知らないフリしろよ。俺だけじゃなく、お前だって危ないかもしんないんだぞ?」 「なんで~~?」 「ねぇねぇ、それよりユウト、遊びに行こ」 「だから、行かねぇって」 まともに学校行ってなかったり なんか、色んなヤバいもん、体に取り入れたりしてるからなのか 悪気がないところがまた… 「ほんとに遊ばないの~?つまんないの~」 「ユウト、また遊びに来る?」 「たまに顔出してんだぞ。けど、誰かに聞かれても、知らないフリしろよ?」 「分かった~」 「またね~」 寂しいんだ 皆、心の拠り所を見付けに、あの場所に集まるから あそこで会ってると、安心するんだ 自分だけじゃないって だけど、ずっとあそこに居ると 不安になるんだ 永遠に、このままなのかって 「南風…」 「っ?!…な…紫月…」 何? なんで? いつから… 「驚かせてごめん。南風かなって思ったんだけど、なんか…話してたから…」 「え…結構前から、近くに居たの?」 「………南風達が…あそこの角曲がって来た辺りから…」 「あそこの角?!」 そんなとこから、見られてたのか めちゃくちゃ、ナミとミサトに、両腕グイグイ引っ張られてたぞ 勘違いされたかも… って、紫月が妬く訳ないか 「南風…今日は、どんなバイトだったの?」 「え?今日は…今日もおんなじ。いつもと、たいして変わんないよ」 「そう……南風…バイトって………」 「?…紫月?何?」 「……ううん…帰ろっか」 「うん…」 なんだろう… バイトの事? たまたま、バイトしてるとこ見られたとか? 俺が、なんか嫌な感じで責められてるとこ、見られてた? いやいや… そんなん、外から見える訳ないし… 色々考えてたけど それからの紫月は、いつも通りで いつも通り、ご飯作ってくれて、一緒に食べて 俺が風呂に入って、紫月を呼びに行って ちゃぷん… ああ…至福の時… 「ふぁ~~…」 「南風、眠くなっちゃった?」 「んん~~…でも、紫月とイチャイチャする元気はある」 「……南風って…男が…好きなの?それとも、別に関係ない感じ?」 え… 今まで、そんなの聞いてきた事なかったのに 「あっ…ごめん。答えなくていい」 「……関係ないかな…別に…男なら、女ならって…そんなに変わんない気がする」 「そっか…」 「紫月は…男を好きになった事あったの?」 「男…好きになったのは、南風が初めて」 やっぱ、そうだったんだ そんな感じしてたけど だけど、それにしては… 「抵抗なかったの?」 「よく分からない…南風じゃなかったら、分からない…けど、南風だから大丈夫」 「そっか…良かった」 「……南風は!」 「…紫月?」 「南風……嫌な事…聞いていい?」 「いいけど?」 なんか… 紫月が、いつもの優しい笑顔を消して ちょっと感情的になってる 必死に何か… 言おうとしてる 「南風……バイトで…そういう事したり…する?」 「……そういう…事?」 「~~っ…別にっ……それで、生計立ててる人だって居るし…差別的な意味とかじゃなくて…ただ……ただ……南風っ…今日……誰かとしたのかなって…その帰りだったのかなって考えたらっ…~~っ…」 え… え?? 「は?!してない!してないし!何?!なんで?!」 「~~っ…南風…あの女の子達と、腕組んで出て来た場所……そういうホテル…ある方角だったから…」 「はっ?!」 方角… 言われてみれば 思い返せば めちゃくちゃ、そういう路地に繋がってるわ! そんで、そこから あの状態で登場するとか… 「南風のする事に、口出す気なんてないんだけど…」 「ないない!断じてないから!俺、紫月とこんな感じになってから、そっち方面のバイトとかしてないし!」 「そう…なんだ…」 「そう!だから、そんな心配しなくて大丈夫!」 「そっか……じゃあ…あの子達は、お客さんじゃないんだね」 「そうだよ!客なんかじゃな……ん?…ちがっ…だからって、遊んでた訳じゃないぞ!違うからな!」 危なっ! 危険回避したつもりで、もっと危ない橋渡るとこだった! 「そっか…」 「ほんとだぞ!俺は、単純にバイトの帰り。あいつらは、今日たまたまあの辺うろついてただけ。偶然久しぶりに会って、ちょっと話してただけ」 「そっか……」 なんか… 紫月の、そっか…が 何かを、めちゃくちゃ含んでそうで怖い 「紫月…信じられない?」 「いや……ちょっと…見た時の衝撃が…結構大きかったから…」 「それってさ…ヤキモチ妬いてくれてたりするの?」 「ヤキモチ?…とは、違うと思うけど…」 「ははっ…だよな~。んな訳ないよな~」 俺に? 紫月が? あいつらと居るの見て? 笑えるわ 「…ヤキモチ…なのかな…」 「え?」 「よく分からない…違うと思ったけど、そうなのかな…衝撃が何なのか、よく分からなくて…とにかく、嫌がられるだろうけど…南風に聞きたくて……これって、ヤキモチ?」 「……え~っと…どうでしょう…」 まさかの 紫月、ヤキモチ知らなかった あり得る? 人が羨む様な人生歩んできたら ヤキモチ知らない人間に育つのか?! 「……南風…イチャイチャしよ?」 「ふっ…賛成」 なんか、得した気分 こんな凄い人間が 人生初のヤキモチ、俺に妬いてくれたとか そんで、なんか いつもより、甘えてる風とか 明日、休みじゃないのに いいのか?紫月…

ともだちにシェアしよう!