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第2話
南風は、色んなセックスをしたがる
ふざけながら
楽しみながら
けれども
いつも以上に、激しくして欲しいと言って来る時がある
まるで、どうにでもなっていい
このまま、壊れればいいとでも、言ってるみたいに
そうしてイッた後
南風は、半分死んでしまったみたいになる
生きてるし、動いてる
俺の声も聞こえてるのに
南風の中の大事な部分が、抜け落ちてしまったみたいだ
初めの頃は、疑ってた
何か…良くない物…体に入れてるんじゃないかって
今も、俺には分からないけど
何も言わず
俺を見る事もなく
一緒に湯船に入った南風は
酷く、存在が危うげで
ぎゅっと南風を抱き締めて
そして、いつもの様に話し掛けて
壊れてしまわない様に
優しく綺麗な金髪の中を撫でる
そうしてると、南風が泣き出す
南風の中で、何が起きてるのかは分からない
けれども、泣き出した南風は
ようやく、自分を取り戻したかの様に動き始めると、謝り出す
南風の殆どを
俺はまだ、知らない
く~~…くか~~っ…
よく寝てる
何も考えずに、無防備な顔して寝てると安心する
初めて一緒に寝た日
南風は、一睡もしなかった
俺が動く度に、俺を見て
後に聞くと
そういう事する為に、一緒に寝たんだと思って
俺が、どういうスタイルで、どう誘ってくるのか、気を張ってたらしい
全然、そんな気を見せない俺を見て
今度は、南風が熟睡したところで
何か、良からぬ物を使って意識を奪い
そうして、仲間か別の奴等かに、売り飛ばされるのかと、警戒し始めたらしい
そんな事考えてるなんて、知る筈のない俺は
やっぱり、ソファーで寝るべきだったか…
とか考えながらも
全然知らない子と、何やってんだろ…
なんて、少しその状況を楽しんでもいた
「……め…ゃ……」
「南風?」
「………~~っ……しっ……め…」
「南風?大丈夫?」
こんな風に、いつもと違う感じになった南風は
よく悪夢を見てるのか、辛そうな寝言を言う
「~~っ…るしっ………すけ…」
「南風…夢だよ。大丈夫だよ」
「~~~~っ…しっ…っ……っ…」
「南風?南風…大丈夫?」
なんか…
ほんとに息止めてるみたいに聞こえる
心配になって電気を点けてみたら
ぎゅ~っと瞑られた南風の目から
涙が滲んでる
「南風!」
南風の両手はぎゅっと握られてて、喉の辺りに当ててあって
何かを掴んでる様な形なのに
その両手で、南風の喉を、ぎゅうぎゅう押している
「南風!手…っ…力抜いて!」
凄い力…
南風は、自分で喉を潰しながら
ついに、ひゅ~ひゅ~と喉を鳴らし始めた
「南風っ!!」
ようやく、南風の手を退けると
「っ…っ……ケホッ…ケホケホッ………ひゅ~~っ…ゲホゲホゲホッ…ひゅ~~っ…ゲホゲホッ…ゲホゲホッ…」
「南風っ…大丈夫?南風……大丈夫?」
苦しそう
息をしようと必死で
そうすると、ムセ込んで、吐きそうな程咳して
そうすると、また苦しそうで…
これ…
大丈夫なの?
様子見てて、大丈夫なの?
「南風…大丈夫?ねぇ…南風…救急車呼ぶ?」
「ゲホゲホッ…っ…よっ…ゲホゲホゲホッ…っ…よばなっ…」
涙流しながら
口元からも、少し垂らしながら
南風が首を振る
「でも……南風…」
「ゲホゲホッ……もすこしっ…ゲホゲホッ…おちつくっ…っ…~~っ…ゲホゲホゲホッ!」
「~~っ…南風…南風…」
何も出来ない俺は
何をすればいいのか分からず
ただ、南風の背中を擦って、南風が落ち着くのを待った
「……あ~~…苦しかった~…ゲホゲホッ…」
「南風…落ち着いた?ほんとに大丈夫?」
「うん。殺される夢見てたら、ほんとに死ぬとこだったわ。ぶはっはっはっ…はっ…ゲホゲホゲホッ…ゲッホゲホゲホッ…」
「南風!こんな時に笑わないでよ」
「ゲホゲホッ…ゲホッ……そうだった……はぁ…はぁ…苦しかった」
「~~っ…南風!」
「うん……ごめん。すっげぇビックリさせちゃった」
ビックリどころじゃない
いつもの悪夢にうなされてるって思ってたら
息…
南風の息が…止まりかけてた
南風を、しっかり抱き締める
ちゃんと生きてる
ちゃんと…息してる
「もうっ…苦しくない?」
「うん…もう大丈夫」
「南風……~~っ…自分で…喉っ…」
「ん……夢と、寝惚けてんのと連動したんだな。すげぇ連携プレーだわ」
「そんなの感心しないで」
「そうだな…ビックリさせて、ごめん……俺のほの暗い過去がさ……色んな良くない夢…見させんだよね」
南風の過去は知らない
南風も、俺のこれまでを知らない
南風は…なんかきっと、言いたくないんだろなと思って聞けない
そして、南風も又…俺に関する色んな事を聞いてこない
「今までも…こういう事あるの?」
「まぁ…似た様な事はあるかなぁ…」
「自分で…苦しくするって事?」
「自分でしてるつもりはないんだけどね…むしろ、その苦しさから逃れようとしてんのに…まぁ、夢見て寝惚けてんだから仕方ないよね」
その苦しさは…
実際に体験した事?
だから、リアルに何度も夢に出て来るの?
でも、そうだとしたら…
益々聞けない
「南風…手…繋いで寝よ?」
「もう大丈夫だけどね…手繋ぐのは賛成」
「南風の手…冷たい」
「ガッツリ汗かいた後だからね」
あんな事があって
こんなに手が冷たいと、不安になる
「シャワー浴びて来る?」
「ん~…いいや。なんか疲れた」
「南風…後ろ向いて?南風を暖めながら、南風の手握る」
「おお…それいい」
南風の髪…
汗の匂いが混ざってる
南風……
あれがもし、現実であったなら
南風は
殺されかけた事があるって事?
「南風……ずっと…此処に居ればいいよ」
「……そうだなぁ…そうなれたらいいね」
「誰も困らない…そうすればいい」
「……そうだね…それは…すっげぇ幸せだね」
南風は、いつか
何も言わずに消える気がする
俺に付いて来たのも
今、此処に居るのも
たまたま、そういうタイミングだから
なんか、今はそれでいいから
そうじゃなくなったタイミングで
南風は
きっと突然消えるんだと思う
「いい?今日は、家でゆっくりしてる事。約束」
「分かったってば。紫月、もうそれ10回位聞いてる…ってか、もう全然ピンピンしてるし」
「ほんとは俺も家に居たいけど……なるべく早く帰って来るから」
「行ってらっしゃ~~い。ちゅっ」
「んっ…行って来ます」
南風…いつも通りだった
前にもあった事で
大丈夫なんだって知ってるのかもしれない
だけど
普段からふざけて、笑って
オーバーアクションな南風は
何かあっても、そのままふざけている
だから、真意が分からない
南風とは
去年の冬
イブの夜に出逢った
順調な毎日
与えられられるだけの環境から、飛び出してみたところで
俺の中が大きく動くのは短い時間だった
何も変わらないというのは
何も感じてない様で
それは、生きてるというのか、分からなくなる
今年も、街は綺麗に彩られている
綺麗に見えているのに
多分、綺麗だとは感じていない
嬉しそうな、忙しそうなイブの夜
何年経っても
誰と居ても居なくても
俺の中が、大きく変わる事は無く
自分だけ、別の世界で生きてるみたいだ
別の世界なら
周りと真逆になればいい
仕事帰り、家には帰らず
帰り道の途中にある、公園へと向かった
暖かい家の中じゃなく、結構な寒さの外で
明るいイルミネーションじゃなく、曇天の下で
沢山の食べ物なんてない
誰も居ない
そんな中なら、皆と同じ事感じなくて当然だ
しばらく、ただベンチに座ってると
雪が降って来た
そりゃ、寒い訳だ
流石に、いいとこで帰らなきゃな
?
なんか今…聞こえた?
よくよく耳を澄ませてみると
やっぱり何か聞こえる
雪が深々と降る中
誰も居ない筈の公園の中から
何かが聞こえてくる
立ち上がって
微かな音を頼りに、静かに歩き出す
遊具のある方向から聞こえてくるけど
誰も見当たらない
まさか、小さな子供が迷子で泣いてる?
こんな時間に?
慎重に…
音を探りながら…
「~~♪︎~♪︎~♪︎~~~~♪︎~~♪︎」
なんか…
歌?
歌ってる?
その場にはそぐわない状況に
まだ疑いながら
少しずつ…
滑り台へと近付いて行く
歌は
滑り台の下から聞こえてきていた
「…ん~~♪︎雪が~♪︎降ってきたね~♪︎白い雪~♪︎綺麗だね~♪︎」
知らない曲だ
子供の声じゃない
滑り台の裏側へと周り込むと
小さな穴が空いていて
そこに、人が居た
「静かに降る雪~♪︎一つ一つ~♪︎綺麗で~♪︎」
あ…
もっと近付こうとした時
その穴の中の人物が光った
なんだこれ…
現実離れした、その神々しい光景に
俺は、息を飲んだ
「月の光が~♪︎綺麗だね~♪︎ほら、雪が~♪︎…っ?!」
今の状況に、ピタリと当てはまる曲を歌ってたのに
俺に気付いて、止めてしまった
「何?!」
あ…
めちゃくちゃ警戒されてる
「えっと……そこで…何してるの?」
「……なんだっていいだろ…」
雲の間から出て来た月が
金色の髪を照らしてる
光ってたのは、この髪か
「歌上手いね…髪…綺麗だね」
「は?」
「さっきの曲…なんて曲?」
「さっきの曲?…なんて曲でもない。俺がテキトーに作って歌ってただけ」
「え?君…作曲家なの?」
「は?!……ぶっ…ぶはっ!…くっくっくっ…おっ…俺がっ…くっくっくっ…作曲家っ……ヤベッ……真面目な顔して…くっくっくっ…腹いてっ…」
なんか…
めちゃくちゃ笑ってる
全然違ったらしい
けど…
楽しそう
「もう少し聞きたいんだけど…ここに居てもいいかな?」
「はあ~?…くっくっくっ…お前っ…変わってる~」
「…そうだね……自分でも、そう思うよ」
「……お兄さんさ、いくらでも歌ってあげるから、お兄さん家連れてってくんない?寒くて腹減って、死にそうなんだよ」
寒くて腹減って
死にそう…
あんなに楽しそうに、歌ってたのに?
あんなに楽しそうに、笑ってたのに?
今も…
こんなに楽しそうなのに?
俺は
この時、既に南風に惹かれていた
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