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第5話

「南風、見て」 「何~?」 「クリスマスツリー、沢山売ってる」 「ほんとだ~」 紫月に拾ってもらったのは、イブの夜 だから クリスマスが 冬が 好きになった 「どこの店も、クリスマスっぽくなってきたね」 「だな~」 「うちも、クリスマスツリー飾る?」 「え~。ほんの少しの間の為だろ?勿体ないって」 「そっか…まぁ、そうだね」 紫月と、クリスマスツリーを買って 飾り付けをして それは、どんなに楽しいだろう だけど あまりにも、容量以上を貰ってしまうと 失った時の喪失感が、半端ないだろうから 今でも、充分幸せ過ぎてるから 「紫月、クリスマスも仕事?」 「イブの日はね。けど、そんなに遅くならないと思うし、次の日休みだし、一緒に美味しい物食べようね」 「やった!」 「あ…南風、ちょっとだけ寄ってこう?」 「うん!」 クリスマスの話をして 冬の寒い日に 2人で、あの公園のベンチに座る 紫月は、このベンチに座ると しばらく、ぼ~~っとする あの日を思い出してるのか あの日より前から、こうしてたのか あの日、たまたま偶然 この公園に来たから出逢えた イブの夜 俺は、ゾウさんの腹の中で凍えていた その日は、散々な日だった まず、3日前 1週間程、快楽を提供する変わりに、衣食住を与えてくれてたお兄さんが 彼氏が出来た クリスマスは、彼氏と過ごす と、言い出して住むとこを失った 仕方がないので、居候させてくれそうな友達探して バイトが終わって、そいつの家、泊まりに行ったら なんか、そのアパートの周りに人だかりが出来てて なんか、パトカーとか居るし 嫌な予感の中 人混みに紛れて、こっそり覗いてたら 今晩泊めてくれる筈だった奴が 警察と共に、アパートから出て来て… 俺は静かに、その場を立ち去った 仕方がないので、ネカフェで一晩過ごして 明日からの、居候先を探す そこで、とんでもない事実を知る 『マサキさんがやってた美人局(つつもたせ)で、死人が出たって』 は? 死人?! 『客同士のトラブルで、マサキさんは直接関係ないみたいだけど、警察連れてかれたって』 そりゃそうだ 美人局の客同士なら まず、美人局がバレてアウトだろ 『マサキさんだけじゃなく、少しでも関わりあるヤツ連行されてるらしい』 は?! 連行… 『仲間を売ったりしないだろうけど』 『しばらくの間、会ったり連絡したり、控えた方がいい』 ちょっと待て 連行って…… さっき、目撃したばかりなんですけど?! 最悪な時は、最悪が続くもんで 翌日には 『警察が、ゲーセンとかネカフェとか、手当たり次第声掛けまくってるって』 ネカフェにも泊まれなくなった どうするかな 体売るったって、それなりに信用してる人の紹介じゃないと 目覚めた時には、何処でどうなってるか、分かんねぇとか…笑えないし くそ~~っ トラブルは、人に迷惑かけないとこで、こっそりしろよな 閉店間際のスーパーに入り 消費期限間近の、おにぎりと飲み物をゲット 何処行くかなぁ 夜中までやってるスーパー、この辺にあったっけ… ふらふらとしてたら 公園が見えてきて とりあえず、公園に入ってみた 公園で一番目立ってたのは ゾウさんの滑り台 とりあえず、登って滑ってみるよね 「ははっ…さっぶ~~。けど、結構楽し」 もう一度、滑り台の上に登って周りを見渡す 公園を一望出来る場所 そこで、今晩の食事を始めた 「うんまっ!このシャケおにぎり、旨っ!お前、もう少しで棄てられるとこだったの?もったいね!」 時間をかけて、シャケおにぎりを堪能すると だいぶ満たされた 「ひゅぅ~~っ!ははっ」 何度か滑り台を滑ってると 体も、あったまってきた 「さてと…どうすっかなぁ~」 ヴヴ 『ヤバいわ』 『マサキさん、クスリも売りさばいてたみたいで、ちゃんと逮捕だって』 「うわ~~~~……」 なんとなく、知ってた 多分、俺だけじゃなく皆も 皆、知ってる 多分、悪い事してるって だけど、そうしないと生きてけないなら それをするしかないだろ? 法律は、俺達を捕まえに来るけど 今日の住むとこも、明日の食う物も、与えてくれないんだから 「ヤバヤバ~~」 滑り台を降りて とりあえず、ゾウさんの腹の中へと入れてもらう 滑り台の裏側は、洞窟みたいになっていた マサキさんは、俺達の面倒を見てくれてた人だ 色んな人達と繋がってて 俺達に、仕事紹介してくれて 相談に乗ってくれて どうすっかなぁ しばらくは、自分でテキトーなバイトするとして 問題は、住むとこだよなぁ 「~~っ…なんでっ…ママのとこ帰れないのっ…」 あれは、誰だっけ? そんな風に泣いてる子を見て へぇ~~ あの子は、母親と居たかったんだ… それで、あんな風に泣いたりするんだなって 不思議に思ったっけ 「~~♪︎~~♪︎ん~~♪︎ルルル~♪︎」 歌って不思議だ 歌ってると、なんか楽しくなってくる ただなのに、なんてコスパがいいんだろ 「んん~♪︎ん~~♪︎寒い~♪︎夜だよね~♪︎」 どんなに悲観的になったって どんなに泣いたって 誰かが、どうにかしてくれる訳じゃない 「リュリュ~♪︎ルルル~♪︎美味しかったから~♪︎シャケシャケ~♪︎」 だったら、楽しい方がいい 明日死んだって、今日死んだって 誰にとっても、関係ない事で 俺が、どう思ってたかだけなんだから 「んんん~~♪︎ん~~♪︎雪が~♪︎降ってきたね~♪︎白い雪~♪︎綺麗だね~♪︎」 寒いけど 寒いだけじゃ、悲しいじゃん 「静かに降る雪~♪︎一つ一つ~♪︎綺麗で~♪︎」 こんな日にって思ったら ただただ最悪って思ったら 俺の負けじゃん 「月の光が~♪︎綺麗だね~♪︎ほら、雪が~♪︎…っ?!」 気付いたら すぐ傍に人が立ってた 「何?!」 警察…じゃない いや… 刑事? 「えっと……そこで…何してるの?」 月明かりに照らされた、その人は 「さっきの曲…なんて曲?」 「え?君…作曲家なの?」 真面目な顔して おかしな事を言ってきた 俺は、生まれて初めて クリスマスの夜に 欲しいものを手に入れた 「そろそろ行こっか」 「うん」 「南風も、イブの次の日は、ずっと家に居る?」 「紫月が居るなら居るよ」 「じゃあ、ずっと一緒に居られるね」 俺の人生に こんな幸せなクリスマスが訪れるなんて ヴ~~…ヴ~~… 「……あ」 スマホを見た紫月が、表情を曇らせた 「はぁ…ごめん、南風。ちょっと電話出るね」 「うん…」 「…もしもし………ん…だから、行かないって…ん…うん……いや、別にいいよ……いや、いいって…」 なんだろ 紫月が、ちょっとイラッとした感じになってる 珍しい 「……え?……うん……あ…そうなんだ………いや、そんな話してなかったじゃん………あ~…分かったから……はいはい…予定分かったら、後で連絡するから…じゃ……はぁ~~…」 「紫月…大丈夫?」 「……大丈夫じゃない…お正月…実家帰らなきゃならなくなった」 「あ…そうなんだ」 「はぁ~~…ずっと南風と居られると思ったのに…」 そうか そうだよな お正月って…実家帰ったりするよな そんなの、全然考えてなかった 「俺の事は気にしないで、ゆっくりしてきなよ」 「やだよ。帰らないつもりだったんだから。最短で用事済ませて戻って来る」 「待っててくれる家族が居るんだろ?いい事じゃん」 「……南風は…」 「俺は、そんなの無いからさ。紫月が戻って来るまでは、どっかでテキトーにしてるよ」 「え?」 俺の言葉に、紫月が足を止めた 「南風……どっか…行くの?」 「だって、紫月の家なのに紫月が不在だったら、俺だけ居るのおかしくない?」 「おかしくないよ……なんで…待っててよ…」 ほんとに心配そうな、不安そうな顔してる いいのかな 俺…そこまで信用されて 「紫月がいいなら、待ってるけど…」 「いいに決まってる…俺が居ない時…南風が居てくれないと……あの家は、俺達の家なんだから」 「……ありがと。じゃあ、そうするね」 俺達の家… 嬉しいけど それは違う だって、全然家賃なんて払ってない 光熱費も、何にも払ってない 何もかも与えられて 一時的な居候なんだ 紫月の優しさで、それが長く続いてるだけ 今を楽しむのは得意だ だけど 期待するのは苦手だ 攻略法は知っている どんなに楽しくても 最悪を考えておく事 そしたら、きっと どんな事が起きても またすぐに、笑えるから

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