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0 世界で一番幸せな、
庭園の一角で、ユルとディミタルはおやつ時を楽しんでいる。
うららかな午後の陽射し、そよぐ木々。焼き菓子の艶に、紅茶を淹れるディミタルの姿。目に映るすべてがユルをわくわくさせた。
ジャムのクッキーは午前中にユルが焼いたものだ。初めてのわりに美味しくできたが、大きく作りすぎてしまった。ディミタルの真似をして一枚まるごと口に放り込むと、もう喋れない。咀嚼するほど口内の水分が消え去ってなかなか飲み込めなかった。
「こうやって見ていると……キミは俺の小鳥というか、俺のハムスターだな」
「ふぁい?」
「ほら、お茶だ」
「ふぁい」
ユルは渡されたカップの中身を口へ流し込む。芳醇な渋みが喉を潤した。
ふぅと一息吐いて、小鳥がさえずる広い庭を見やる。
──こんなに穏やかに過ごせるなんて、あのころは想像もしなかった。
そう考えるのはディミタルも同じだ。大人びた手でユルの華奢な手を握る。
「キミは俺を世界で一番幸せな男にしてくれた。この喜びをどう伝えようか、毎日そればかり考えるよ」
「……そういえば私、殿下とお話したことがあるんです。ディミタルと一緒になれるなら、世界一幸せなオメガになれなくて良い、って」
「ム。俺ではユルを幸せにできないと?」
わかりやすく拗ねるディミタルに、ユルはふふっと笑う。
手を握り返して、空よりも青いディミタルの瞳を見つめた。
「そういう意味じゃないですよ。私は……世界で一番幸せな、あなたの小鳥 です」
──オメガとしての幸せは、もっと他にあるだろう。私はそれ以上の特別を与えてもらった。
ディミタルのしかめ面が、安堵そして歓喜の表情に変わる。
地面の小鳥が羽ばたいてテーブルに着地した。小さな足でぴょんぴょんと移動し、皿上のクッキーをつつく。人間の食べ物に首を傾げ、ぴぴぴと軽やかに歌う。
テーブルに小さな影が映ったかと思えば、もう一羽現れた。
二羽は合流するなり、仲良く飛び立っていった。
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