12 / 41

第12話 伏竜の記憶の行方

オークション会場の料理? ああ、月餅美味かったよなぁ~と、オレがヨダレをじゅるりとさせている間に伏竜が眉を寄せる。 「何だ? 料理に毒でも入ってたってイチャモンつける気か? あれは俺も青龍門派も奴らも摘まめるものは食ったぞ」 「キミは気づかなかっただろうが、修仙者用の毒が入っているものと入っていないものがあった」 オレは噴き出した。 「ええ~!? じゃあオレ、毒食べてたかもってこと!?」 伏竜をガクガク揺する。 しかし伏竜に手を振りほどかれた。 「手前は修仙者じゃねぇから、関係ねぇだろ!」 「あっ……そうだった」 けど、伏竜は動揺して鳳雛にむかって声を荒げる。 「あの料理は玄武門派に材料の発注かけてウチで手掛けた料理だ! 毒なんざ入れても誰も得しねぇだろ!」 オレは不思議に思って伏竜の袖を引いた。 「なぁなぁ、その玄武門派の材料に毒が入ってたんじゃないのか?」 この問いかけに応えたのは鳳雛だった。 「有り得ないね。玄武門派は『金は何より尊いが、信用は金より遥かに重い』がモットーの組織だ」 鳳雛の言葉の後に伏竜が腕組みして頷く。 「しかも青龍門派と合同主催のオークションでそんなことをすれば、一気に二組織の敵対意識が高まる。面子を潰された青龍門派によって潰し合いに発展しかねねぇ。……まぁ、それで得をするのは朱雀門派と白虎門派だろうがな」 「じゃあ、鳳雛が入れたんじゃないのー?」 オレが問いかけると、鳳雛は笑った。 「変装してまで敵地に乗り込んで? 厨房に入って? 大量の料理に修仙者用の毒を入れたり入れなかったり? そんな思いつきで行動する程、鳳雛は蛮勇にかられていないね。大体、鳳雛が見たかったのは人魚だ。だから闇オークションに忍び込んだんだよ」 まさかこんなにおバカな人魚とは予想外だったがね、と嫌味を付け足される。むっかーっ! けれど鳳雛も計算外なことがあったらしい。 「修仙者用の毒と解毒料理が何に入っているのか気になって食べ分けていたら、何者かの襲撃にあってね。生憎、毒の方を食べていたから術が使えず、海に落ちて鮫のエサさ」 「じゃあ今話してる鳳雛は、船で死んだ一人目、伏竜に殺された二人目のあとの三人目ってこと……?」 オレが問いかけると、鳳雛は「お利口さん」と頭を撫でてくる。 その手を伏竜が弾くと、鳳雛の胸倉を掴んだ。 「御託は、もういい! それよりも俺から奪った記憶を元に戻せ!」 鳳雛が伏竜の手を払う。 「何度も言うが、鳳雛はキミの記憶なんかに興味はない。それにウチの門派では捜魂をするには肉体的な接触が不可欠だ。鳳雛は船でキミと接触した記憶はない」 確かに、鳳雛が伏竜にキスでもしようもんなら殺されてそうだしなぁ……。 じゃあ誰が伏竜の記憶を盗んだんだって話になった時、鳳雛は笑顔のまま忠言した。 「朱雀門派が奪った記憶でないのなら、戻し方は奪った者にしかわからない。キミが朱雀門派にに肉体を委ねて我々が隅々まで研究していいと言うのなら、話は別だがね」 「断る」 伏竜が食い気味に否定した。 じゃあどうするんだよってオレがテーブルを拳でポコポコ叩くと、鳳雛が提案してきた。 「わからないなら、買えばいい。玄武門派なら情報も売っている。それこそ、個人の人生すらデータ化して金や霊石と交換するような連中だ。きっとキミの身に何が起こったのかも、データ化して保存しているだろう」 「えっ」 驚くオレに鳳雛は、にっこり笑って、後ろに控えていた給仕の一人の額にナイフを投げた。 どうっ、と重い音をたてて給仕の人が血を噴きながら倒れる。 ナイフを額に突き立てられた給仕の人を見ても、周りの給仕は動じていない。こ、怖ッ! な、なんで急に殺したんだとオレが慌てるも、鳳雛は口元に指を立てて片目を閉じる。 「玄武門派のスパイは何処にでもいる。この会話すら、漏れているところだったということさ」 「だからって、殺さなくても!」 オレが血と死体に半泣きになっていると、伏竜が足を組みながら答えた。 「生きてる人間の口を信用できるほど、マフィアは温くねぇんだよ」 マフィア怖い……。 こうして長い問答の末、次は玄武門派の所へ行くこととなったのだった。 結局、朱雀門派へ来たのはムダ足だったわけだけど……。 玄武門派のところなら、白月ねーちゃんの行方もわかるかも知れないし! 頑張るぞ!

ともだちにシェアしよう!