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第19話 淫乱

翌日になって目を覚ます……と、隣りのベッドの伏竜の姿が目についた。 こいつ、上半身裸で寝やがって……と思いつつ、その鍛え抜かれて割れた腹筋の陰影に赤面してしまう。 喉には龍の鱗のタトゥーがあり、呼吸する度に艶めかしく動く。 何度見ても、美形だなコイツって思った。 しかし逞しい胸板に、痛々しくついた刀傷が目に入った。 船で刺された時のものだ。 伏竜自身は船での戦闘も忘れているらしく、見覚えのない傷だと言っていたのが、またオレの心にズキッと響いた。 伏竜の怪我を治した時に血を流したオレの傷跡も、体にしっかり残ってるのに――。 一生に一度だけの人魚の力を使って、体まで重ねて――オレの『初めて』をいっぱい奪った最低の男。 でも、船でオレを攫ってキスした時の優しさは、確かに愛情を感じた。 愛情を……感じたよな、うん。たぶん。きっと。 いやいやいや! でもそれならオレのこと全部忘れないだろ! (あ~! もう! わかんない!!) オレが伏竜に背を向けると、逆側で寝ていたティグルと目が合った。 ていうか、ティグル、目の下に隈が出来てない!? 「モーシンの寝顔、見ていタ。もう、朝だったのカ……」 しかも『モーシン、好きダ』と挨拶代わりみたいに告白してくる。 お、お前お前お前……ッ! と、不覚にも胸がキュンとした。 しかも大型犬みたいに抱きつこうとしてくるので「ステイ!」と止める。 ティグルは良い奴っぽいけど、でも、オレ……。 「オレ、伏竜と番の呪いにかかってるし……」 その言葉にティグルは、きょとんとする。 「フーロンがモーシン以外の誰かを愛したら、モーシンに影響出ル。でもモーシンが誰かを愛するのは自由のはずダ」 あ、そっか! 伏竜が死ぬのもオレが死ぬのも共倒れになるし、伏竜が恋をしたらオレは海の泡になっちゃうけど、オレが誰かを愛するのは良いんだ! それなら、オレを大事に想ってくれる奴と添い遂げた方がいいかもしんない……。 (伏竜には一生独身で居てもらって) そう考えてると、ティグルの手が頬に、そっと触れた。 壊れ物を扱うみたいに優しい手つきだ。 そして確認してくる。 「……モーシン、キス、したイ。いいカ?」 「えっ?」 オレは慌てて伏竜を振り返る。でも伏竜からは静かな寝息が立っていた。 こいつ、グースカ寝やがって……! (オレが他のヤツとキスしてもいいっていうのかよ!) ……って、何期待しちゃってんだオレ! 伏竜はオレになんか興味ないんだから、誰とキスしても困らないだろう! 「いいよ! やろうやろう」 オレが目を閉じて顎を上げる……と、直ぐさま熱い衝撃が唇を塞ぐ。 「んッ……!」 割り開かれた唇から入り込んだ厚い舌が歯列をなぞる。 堪らずにオレも舌を伸ばしてティグルのモノと絡ませ合う。 ティグルの八重歯に触れた舌から全身に甘い疼きが走るようだった。 そしてティグルに覆いかぶされる。 「あッ、はぁ……」 まるで大きな虎に丸呑みにされるみたいな野性的なキス。 あんまり大きな声を出すと伏竜が起きちゃうからって、声を抑えていたら、オレの股間にティグルのモノがズボン越しにあたった。 それはズボンがはちきれんばかりになっていて……!  ズボン越しでも異様なまでにティグルの逸物が大きいことを示していた。 そんなのをオレのズボンに擦りつけながら、囁かれた。 「……モーシン、抱きたイ……」 だっ、抱きたい!? 伏竜とやったみたいに交尾したいってこと!? で、でも……。 「そ、そんなの挿れたら、オレ、壊れちゃうよ……ッ!」 それにキスだけだろって言いたいのに、オレのモノはティグルとの交尾を期待するみたいに勃ちあがりかけてた。 伏竜に貫かれた時みたいに、ティグルとも交わりたいってカラダは言ってる。 それを見たティグルが舌なめずりして荒い呼吸を漏らしている。 どうしよう、キスだけのつもりだったのに――!! その時、ティグルの喉元に刃がつきつけられた。 視線を向けると、怒りに燃える伏竜が剣を持って立っていたのだ。 そして伏竜はオレを見ると、目を細めた。 「誰とでもサカりやがって。この淫乱が」 軽蔑するように言われて、心がズキン、と痛んだ。 ティグルが唸り声を上げ、オレは涙が出そうになるのを何とか堪えていると「仕方ないさ」と鳳雛の声がした。 「鳳雛!?」 鳳雛が床板を剥がして出てくる。どっから出てきてんだよ!! 伏竜とティグルがオレを庇うように身構える中、鳳雛は嗤う。 「人魚は淫らで有名なんだ。男を誘惑し、海に誘い込む一面がある」 ケンカ売ってんのか! と八つ当たり気味に怒鳴ると、鳳雛は更に付け足した。 「だから人魚は最高の霊物なんだ。どれだけ双修を求められても悦んで股を開く。しかも霊力が強いから、修仙者なら誰でも欲しがるのさ」 な、何だって……!?

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