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第20話 痴話喧嘩

オレはティグルと絡んでた所為で強く反論できずにいた。 しかも股間はティグルのを待ちわびてるように勃ち上がったままだ。 今だってティグルのが触れる度に、ビクン! と体が甘く痺れる。 「あッ……♥」 声が漏れて、慌てて両手で口を押さえる。 それを見た伏竜は怒りも露わに唇を噛み締めている。 「この……クソ野郎が!」 何処か悔し気に告げる伏竜。 でもオレもそんな伏竜に反論していた。 「オ、オレが誰とヤろうと伏竜には関係ないだろ!」 「!」 伏竜が目を見開く。でもオレは止まらなくて叫んでた。 「オレのことなんて全部忘れちゃった癖に! 彼氏面すんなよ! ばか!」 すると伏竜も応酬してきた。 「何だと手前! 俺にだけ節制を強いて、手前は自由にヤりてぇってか!」 もうオレの股座は萎えていたけど、伏竜の言い方にハラが立ってプイと横を向く。 「そーだよ! すぐ怒る伏竜なんかよりティグルとか他のヤツのが優しいし気持ち良かったし! やっぱり優しいヤツとヤる方がいいよなー! 好きなヤツとヤッた方がゼッタイ良いしー! キモチ良くて、何度でもやっちゃうくらい!」 他のヤツなんて知らないけど、伏竜としか経験がないとバレたくなくて嘘をついた。 すると、伏竜は見たことがないくらいに激怒した表情でオレを見てくる。 「……ッ!」 オレは思わず息を飲んだ。今にも殺されそうなくらいの殺意すら感じる。 その感情の名前が何なのか探る前に、鳳雛がちょこんとベッド際から顔を出した。 「なら鳳雛とセックスしようか? キミの霊力がどれだけ搾り取れるか楽しみだ♥」 いや―――!!  オレが叫ぶと同時に伏竜とティグルが鳳雛をベッドから引き剥がす。 そうしてから、ティグルが伏竜に話しかけた。 「フーロン、モーシンとワタシに嫉妬してル」 「してねぇよ!」 え……? 吐き捨てるように告げる伏竜。 しかしティグルは続けた。 「してル。でも、言わないとモーシンに伝わらなイ。モーシン、ちょっと……いや、かなり鈍イ」 がーん!!  オレって鈍かったんだ!? ショックを受けるオレにティグルは「でもそこが可愛イ」と、熱く見つめてくる。 いや、そう言われて見つめられても、嬉しくないからな? オレはティグルの言葉にショックを受けつつも、伏竜を見ると……。 伏竜は、ばつが悪そうな表情で剣を仕舞っていた。 そして伏竜は扉へ向かう。 「玄武門派のアジトへ向かうぞ。こんな茶番、さっさと終わりにしてぇからな。淫乱人魚と共倒れなんざ、ゼッテェ御免だ!」 むかーっ! 何だよコイツ! カンジ悪!  オレも舌を出して伏竜に「ばーか!」と叫ぶ。 「手前!」 「何だよ! 伏竜のばーかばーか!」 鳳雛は笑っていたし、ティグルはボソリと「……二人共、正直じゃなイ……」とか言っていた。 ◆◆◆ 白虎門派のアジトを出る前に、ティグルに別れの挨拶をしようとする。 でも何故かティグルはついて来た。ど、どうして……。 「ワタシ、モーシンとケッコンしたイ。ずっと傍にいたイ」 そう言われて抱きしめられた。持ち上げられて頬ずりまでされる。痛い痛い! でも直ぐに伏竜に引き剥がされた。 どうやらティグルは右腕的存在にアジトを任せ、玄武門派の縄張りまでオレを護衛するつもりらしい。 それは正直、有難いけど好意に甘えてもいいのかな……って思った。 だってオレ、ねえちゃんと再会したら海に戻りたいし……と考えて、腰にぶら下げてたナイフを思い出す。 ずしりと重い、赤い刃物。 鳳雛にこっそり『これを使う以外で人魚に戻れる方法はあるのか』って聞いたけど、無いらしい。 人魚の番の呪いは強力で、愛した男を殺して返り血を浴びる以外に元に戻れないんだとか……。いや、愛してないけど。 でも……。 前を歩く伏竜の背中を見る。 黒く長い襟足が風に揺れて、形の良い背中と長い足。 程よく筋肉がついた肉体は、海で見た時から変わってない。 綺麗だなって一瞬見惚れて首を振る。 こんなヤツ、愛してなんかないけど! オレ、こいつを殺さないと海に戻れないんだ……。 「おい」 泣きそうになってると、振り返った伏竜に声をかけられた。 オレの名前は『おい』じゃない! とプンスカ怒る。 けど伏竜は構わずにオレの腕を引いた。 「視界に居ろ。手前はフラフラしすぎなんだよ」 むきーっ! と怒ってると、最後尾を歩いていたティグルが頷いた。 「モーシン、フォンチュの近くは危なイ。フーロンの隣りが良イ」 そういえば鳳雛、オレの後ろにいたんだ……と今更ながらゾッとする。 鳳雛自体は「警戒しすぎじゃないかね?」と呆れていたけど、オマエを警戒してないと、直ぐに実験だの何だのしそうだろ! 被害者ぶるなよ! こうしてオレ達は白虎門派の縄張りを抜けて、島の北に位置する玄武門派を目指すのだった。

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