1 / 42
天使の誕生 1
彼の誕生は、
友達ナシ恋人ナシ両親ナシの天涯孤独のネガティヴクソ陰キャ、サンイヴン伯爵が受けた天啓から始まる。
伴侶やら生涯の友やらのゲットチャンスでしかない学園生活を見事にボッチで過ごし、成績も特筆すべき事もなくなんともフツーで
持たざる者のまま卒業を迎えて十数年。
両親が他界し爵位を継ぎ、心底退屈なお役所勤め魔法使いとして、生まれ暮らした家から職場を行き帰りするだけの毎日。
自分を変えなきゃと焦りはするものの大きな出来事を引き起こす勇気も知識もなく、相談できる友人もいない。
社会に出ているだけの引きこもりと化していたサンイヴン伯爵が、
こんな人生はなんの意味があるんだろうとうっすら鬱になっていたある日のこと
妙に眠気を感じて仕事から帰るや否や死んだように眠りについた。
そしてとある夢を見る。
それはそれは麗しい黒髪の少年が現れて、
星空のように輝く紺色の瞳を輝かせながら人差し指を立ててこう言った。
「いいか?人生を変えたい、自分を変えたいと思うのであれば
そういう意識を持って生きなければ何も変わらないぞ!
いつか白馬に乗った王子様がやって来て、ご都合主義な世界に連れていってもらえると思ったら大間違いだ!
ぐだぐだ言ってる暇があったら床屋の一つにでも行くんだ!!
隣の席のアホ面に声でもかけてみろ!!」
6歳か7歳くらいの少年に只管正論で殴られる夢が、あんまりにも明瞭で衝撃だった為
サンイヴン伯爵はこれは天啓やもとこじつけて翌日早速床屋へと駆け込んだ。
あんなに行きたくなくて避けていた床屋も、お告げがあったからだと思うと不思議と勇気が湧いたし
寧ろそれが義務のようにすら感じていた。
普段なら絶対に近寄らない妙にシャレついた床屋に行ってしまうと、
隣の席に腰を抜かす程のどタイプの青年がいた。
青年は紺色の瞳を不安げに潤ませながら、髪切り屋のいいように亜麻色の髪を弄られていた。
そして店と同様にシャレついていて妙に圧のある店員に
「こんな感じでいかがでしょうか?」
「あ………えと…………ハイ…………」
と言いくるめられている姿にシンパシーを感じてしまい、
意を決して声をかけてしまった。
「…襟足は…もう少し切った方がよろしいかと…」
これは今世紀最大の勇気だったと後に伯爵は語る。
「ですよねぇ……」
へにゃりと微笑んだ薬屋の青年と婚約したのはその半年後の事である。
ともだちにシェアしよう!

