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夏休み明け 4
「自分のことで精一杯だった人間が、他人の事にまで憤慨できる余裕があるなんて実に優雅なことじゃないか」
ローラが口の端で笑っていると、レンシアは少し恥ずかしそうに片手で前髪を弄っている。
「…俺はだって…何にもなくなってしまいましたし…」
「そうか?そうじゃないから元気なんだと思っていたがな」
「どういう意味ですか?」
「わかるだろ。“必要なものは片手に収まるくらい”だ。
そうでないと、いざって時に持って逃げられないしな
自分を偽って媚び諂って100人に支持されるよりも、ありのままでいいと言ってくれる1人がいるのとでは幸福度は段違いだ。
量よりも質というかな。」
レンシアはなぜか頬を赤らめながらも、彼の足にずっと前足を押し付けている犬と目を合わせるようにしゃがみ込み犬の頭を撫で始める。
「そうかも…しれませんね…
今の方が…ちゃんと持っている、といえるのかもしれません…」
その横顔を見ていると、誰のことを頭に浮かべているのかすぐに分かってしまい
ローラは自分で言っておきながらうざったくなって、あ゙ぁー、と天井を仰ぎながら唸るのだった。
「…友人代表スピーチはイヴィトに頼めよ…俺はごめんだ…」
「な、…はぁ?何を言ってるのですか…!?」
「あの真ん中分けの長身男は確かに優良物件だろうがな…」
「違…っ!イオンさんはそんなんじゃないですもん…!
それに俺は…ちゃ、ちゃんと弁えてますし!」
「同じこと言ってら…」
レンシアは焦ったように犬を抱きしめており、ローラは心底深いため息を溢すのだった。
何かがおかしいとか何かが起こると分かっていても、完璧に回避ができるわけではない。
占いや預言はあくまでも選択肢と可能性を広げるだけの事で、
この世で起こる完璧な事象を無くすことは出来ないのだ。
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