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第一話 聖歌隊の大天使ラファエルと呪われた浄化の悪魔

聖歌隊の大天使ラファエル 天界に夜はない。しかし、ラファエルの心には常にどす黒い霧が立ち込めていた。 その日も彼は、天界の最上層にある「祈りの塔」で歌っていた。地上で続く果てしない飢餓、子ども達の泣き声、報われない誠実な者たちの悲鳴。それらをすべて吸い上げ、神へと届けるために。 「………おお、主よ。なぜ、あなたは黙しておられるのですか」 歌の合間に漏れ出たのは、祈りではなく呪詛に似た問いだった。数千年の間、彼は歌い続けた。喉を枯らし、魂を削り、神の愛を信じて。だが、神からの返答は一度としてない。 (神など、最初から存在しないのではないか?) その「罪」の思考がよぎった瞬間、ラファエルの背中の白い羽から、媒のような黒い霧が立ち上った。暗黒の匂い。天使が最も忌むべき、堕天の兆しだ。 「っ………このままでは、私は……」 彼は己の汚れを隠すように、天界の端にある、光の届かぬ「境界の森」へと逃げ込んだ。 呪われた浄化の悪魔 森の奥深く、天界の浄化された空気が淀む場所に、それはいた。 小さな、本当に小さな、灰色のマントを羽織った子供のような影。 ルウだ。彼は地獄で「触れるものを白く染めてしまう」という忌まわしい呪いを持って生まれたために、悪魔たちに激しく拒絶され、天界のゴミ溜まりに放り出されたばかりだった。 ラファエルの視線がこの小さな悪魔を捕らえた。 「………あ………」 ラファエルの鋭い視線に気づき、ルウは怯えて震えた。 ルウの指先が触れた地面の花は、色が抜け、純白の灰となって崩れていく。 ラファエルはその時、ルウの浄化の能力に目を奪われた。 ラファエルは、黒い霧を纏った手でルウの細い首を掴もうとした。殺すためではない。確かめるためだ。 「……ひっ………!ごめんなさい、汚して、ごめんなさい………!」 ラファエルに首を掴まれたルウは、泣きながら身をよじった。 その瞬間。 ラファエルの腕を覆っていたどす黒い霧が、しゅるしゅると霧散し、焼けるような苦痛が清涼な感覚へと塗り替えられていった。 「君………名前は?」 「………ル、ルウ。………殺さないで………」ルウは大きな目に涙を浮かべて、見上げた。 「殺すわけがない………君が必要だ、ルウ」ラファエルは言った。 その顔の上に浮かべた笑顔は、聖母マリアのような慈悲深いものではなかった、溺れる者が藁を見つけた時の、狂気すら孕んだ笑いだった。 「………可哀想なルウ。悪魔の身で天界に迷い込むなんて。私が『保護』してあげよう」 ラファエルは、ルウの小さな体を肩に抱き上げた。 ルウの純白の呪いが、ラファエルの汚れを吸い取る。 「君のことを一生守ってあげるよ」 ラファエルが聖歌よりも甘く、ルウに呪縛の言葉を囁いた。

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