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第二話 広場での呪いと咎の逆転劇

ラファエルがルウを連れて「境界の森」から戻ったその時に、天界の広場に居合わせた天使たちは騒然とした。 本来なら透き通るような芳香に満ちているはずの彼の周囲に、重く淀んだ「暗黒の匂い」が漂っていたからだ。ラファエルの背中からは、隠しきれない黒い霧が細く、しかし確実に立ち上っている。 「ラファエル様、それは一体………!」 異変を察知した下級天使たちが、次々と武器を手に集まってきた。彼らの視線は、ラファエルの腕の中で震える、灰色のマントを羽織った小さな影に注がれる。 「悪魔だ………!穢らわしい悪魔が、ラファエル様を汚している!」 「その怪物が毒を撒き散らしているのか!ラファエル様、今すぐこちらへ!」 天使たちの殺気だった声が響く。 ルウは恐怖でラファエルの胸に顔を埋め、小さな手で彼の衣をぎゅっと掴んだ。 「……ごめんなさい………僕のせいで、ごめんなさい………」 天使たちに阻まれた苛立ちで、ラファエルの羽から一段黒い煤のような霧が立ち上る。 それが、周囲には「悪魔が天使を侵食している」最悪の光景に映った。 「下がりなさい」 ラファエルの冷徹な声が広場を圧した。 彼はルウを抱き抱える力を強め、翼を大きく広げて、群がる天使たちを遮るように立った。その翼の根からは、今もどす黒い霧が漏れ出ているというのに、彼の表情はどこまでも聖人そのものだった。 「この捨てられた小さな悪魔は、私が保護します。それが天の慈悲ではないですか?」 「しかし、その者はあなたを汚しています!その不吉な霧が見えないのですか!」 一人の天使が叫ぶ。ラファエルはその言葉に、心の中で冷笑した。 (汚しているのは私自身だ。この咎を背負うべきは私だというのに) 「………いいえ、この子はただ怯えているだけです。力が制御できず、溢れてしまっている。私が責任を持って、この小さな悪魔が悪事を働かないように管理しましょう。私の側で、常に監視し、教えを説く。それこそが、主の愛を体現する私の役目です」 ラファエルは、跪いて祈るような仕草で、ルウの額に優しく口づけをした。 その瞬間、ルウから発せられた純白の輝きが、ラファエルの羽から出ていた黒い霧を瞬く間に掻き消した。 「………ご覧なさい。私の導きがあれば、この闇も鎮めることができる」 天使たちは、その「奇跡」のような光景に気圧され、それ以上踏み込むことができなかった。 ラファエルは、腕の中の小さな獲物を守るように抱きかかえ、誰にも邪魔されない自分の宮殿へと歩き出す。 「………ラファエル………さま……」 震える声で呼ぶルウに、ラファエルは耳元で低く、彼にしか聞こえない声で囁いた。 「いい子だ、ルウ。君がいなければ、私は今ここで堕天していただろう。………だから、誰にも渡さないよ。……君の居場所は私の腕の中だけだ」 ルウは何も言わずに、ラファエルを涙で潤んだ大きな目で見つめることしかできなかった。

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