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第6話 パパたちは仲よすぎ
結婚して数か月。
フィルの腹は、抱え込むほど丸く膨らんでいた。
鏡の前に立ち、横から自分の姿を眺める。
王子の衣装も、腹を締めつけないよう仕立て直されている。
細かった腰の線は柔らかく変わり、膨らんだ腹の重みを支えるため、立ち方にも少し癖がついた。
後ろの長椅子へ座っていたシンが、じっと見ている。
鏡越しに目が合った。
「何ですか」
「見てた」
「何を」
「お前の体」
「毎日見ているでしょう」
「毎日、前より魅力的になってる」
フィルは腹へ手を添えた。
「愛おしいという意味ですか」
「ああ」
シンは立ち上がり、後ろからフィルを抱き込んだ。
膨らんだ腹へ大きな手を重ねる。
「それだけじゃない」
「まだあるんですか」
「こんなに腹を膨らませて、腰の線まで変わって」
シンの唇が、フィルの耳元へ寄る。
「なんて魅力的で、エロい体なんだと思ってる」
フィルの顔が一気に赤くなった。
「身重の夫を、そんな目で見ないでください」
「無理だ」
「愛おしいだけでいいです」
「両方本当だから仕方ない」
シンの手が、腹の丸みをゆっくり撫でる。
フィルは抗議するように腕を叩いたが、離れようとはしなかった。
「怒ってるのか」
「少し」
シンは鏡越しに、その赤い顔を見る。
口では怒っていても、背中はすっかり胸へ預けられている。
「今夜も可愛がるぞ」
フィルの肩が小さく揺れた。
「後ろからなら平気だって、先生も言ってただろ」
「だけど僕、この体ですると感じ過ぎちゃって」
「じゃあ、ちょうどいいな」
フィルは鏡の中のシンを見た。
恥ずかしそうに目を伏せ、それでも小さく頷く。
「はい」
****
シンは膨らんだ腹を支えながら、フィルを後ろから抱き込んでいた。
体を預けられるように枕を重ね、腹へ負担が掛からない姿勢を作っている。
フィルが深く息を吐く。
シンの手が腹を守るように添えられている。
もう片方の手が、フィルの指へ絡んだ。
ゆっくりと熱が重なる。
フィルの唇から、細い息が漏れた。
「シン……っ♡」
急がず、少しずつ深くなる。
フィルは絡めた指へ力を込め、シンの名を呼んだ。
「奥まで、来る……っ♡」
「ああ。ちゃんと支えてる」
「分かってます……♡」
最後まで深くつながる。
フィルの背が小さく震えた。
シンはすぐには動かず、熱へ慣れるまで抱き締めている。
「シン」
「何だ」
「いっぱいです……♡」
「可愛いな」
「今は、男らしいと言ってください」
「こんなに感じても俺を信じて力を抜いてる。男らしいよ」
フィルの表情が、嬉しそうに緩んだ。
シンは浅く動き始めた。
内側をゆっくり擦る。
フィルの息が、すぐに甘く崩れた。
「んっ♡ そこ……」
「好きなの、知ってる」
同じところを丁寧に擦られる。
フィルの腰が、小さくシンを追った。
「ほら、自分から来た」
「言わないでください……♡」
「嬉しいんだろ」
「はい……♡」
素直な返事に、シンが低く笑う。
動きが少しずつ深くなる。
内側を擦り、奥へ届く。
フィルの声も、次第に高くなった。
「あっ♡ シン……そこ、奥……っ♡」
「ここまで欲しかったんだな」
「欲しかった……♡」
深く突き上げられる。
フィルの体が大きく揺れた。
「あぁっ♡」
膨らんだ腹を支えるシンの手へ、フィルが自分の手を重ねる。
「お腹まで、熱くなる……っ♡」
「全部つながってるからな」
「赤ちゃんも、分かるでしょうか……♡」
そのとき、腹の内側が小さく動いた。
フィルが息を呑む。
「今、動きました……♡」
シンの手にも、その小さな動きが伝わった。
「お前が幸せだから、分かるのかもな」
「パパの幸せを感じてる……♡」
「パパは二人だ」
フィルが、幸福そうに笑った。
「なら、二人分……っ♡」
シンはフィルをさらに深く抱き込んだ。
擦る動きと、奥への突き上げが重なる。
フィルの言葉が少しずつ崩れていく。
「シン……っ♡ もっと……♡」
「ああ」
「好き……大好き……っ♡」
「俺もだ」
深く。
さらに深く。
フィルはシンの腕の中で、何度も甘い声を漏らした。
「もう、体も、言葉も……我慢できない……っ♡」
「我慢しなくていい」
「シン……♡」
「お前も、この子も、俺が幸せにする」
フィルの目から涙がこぼれた。
悲しさではない。
愛情と快感が、同時に溢れている。
「嬉しい……っ♡」
シンの動きも、次第に余裕を失っていく。
フィルの声。
絡んだ指。
膨らんだ腹の中にいる、二人の子ども。
全部が愛おしくて、もっと深く求めたくなる。
「フィル」
「はい……っ♡」
「俺を離すな」
「離しません……っ♡」
奥へ強く突き上げる。
フィルの声が弾けた。
「あぁっ♡♡」
もう一度。
さらに深く。
フィルの体が限界まで震える。
「シン……もう、いく……っ♡」
「ああ」
「二人分、幸せで……いくっ♡♡」
フィルが大きく体を震わせた。
シンもそのすべてを抱き締めたまま、同時に限界を越える。
しばらく、二人は言葉を失っていた。
フィルは乱れた呼吸のまま、シンの腕へ頬を寄せる。
腹の内側が、また小さく動いた。
フィルは目を細めた。
「赤ちゃんも、幸せだったみたいです」
「そうだな」
「シン」
「何だ」
「僕も、幸せです」
シンはフィルの髪へ口づけた。
「知ってる」
****
季節が巡った。
王妃は、腕の中の孫をあやしていた。
「ほら、お婆ちゃんですよ」
赤ん坊は、王妃の指を握ったまま眠っている。
「今、笑いました」
「眠っていますよ、母上」
「私にだけ分かる笑顔です」
フィルは、少し離れた場所からその様子を眺めていた。
腹は、何事もなかったように再び丸く膨らんでいる。
シンが後ろから、その腹を撫でる。
「母上、すっかり孫大好きのお婆ちゃんですね」
「世継ぎを急かしてた頃より楽しそうだな」
「僕にも、あれくらい甘くしてくれればよかったのに」
「今は十分甘いだろ」
「孫には負けます」
王妃は赤ん坊の頬へ口づけている。
フィルは笑った。
「あんな顔をするとは思いませんでした」
「こっちも待ち遠しいな」
シンの手が、膨らんだ腹を優しく撫でる。
「はい」
フィルは振り返り、シンへ口づけた。
短いはずのキスは、すぐに深くなる。
唇が離れたあとも、二人の距離は近いままだった。
シンが腹へ触れながら言う。
「でも、今夜もするよ」
フィルの頬が赤くなる。
「こんな魅力的な体、我慢できないから」
フィルは少しだけ目を伏せた。
それから、素直にシンの胸へ手を置く。
「はい」
嬉しそうに笑う。
「僕も、お腹の赤ちゃんも幸せになりたいです」
シンは満足そうに目を細めた。
もう一度、甘いキスを交わす。
その向こうでは、王妃が孫へ新しい玩具を見せていた。
****
さらに数年後。
王城の庭を、二人の子どもが駆け回っていた。
「待って!」
「こっちだよ!」
笑い声が芝生の上を飛び交う。
木陰の長椅子では、シンとフィルが並んで座っていた。
フィルが何か話しかける。
シンが笑う。
そのまま頬へ触れ、口づけた。
子どもたちが、すぐに気づく。
「パパたち、またチューしてる!」
「チューばっかり!」
フィルが慌てて離れようとする。
シンが腰を抱いたまま逃がさない。
「仲よしだからな」
「僕たちも入れて!」
「僕も!」
子ども二人が走ってくる。
シンは片腕ずつで抱き上げた。
フィルもそこへ腕を回す。
「じゃあ、四人で」
四人で抱き合う。
子どもたちは声を上げて笑った。
フィルも笑う。
シンは三人をまとめて抱き寄せた。
「重い」
「パパ、力持ちでしょ」
「二人くらいなら平気だ」
「僕も抱いています」
「お前は自分で立ってるだろ」
「気持ちの話です」
子どもたちは、ますます笑った。
そこへ王妃が現れる。
家族四人の様子を眺める。
それから、シンとフィルの近すぎる距離を見た。
何かを察したらしい。
「さあ、二人とも。お婆ちゃんと遊びましょう」
子どもたちが王妃を見る。
「今来たばかりだよ」
「新しい玩具があります」
「行く!」
「僕も!」
二人はシンの腕から下り、王妃のもとへ駆けていく。
王妃は孫たちの手を取った。
「夕食まで戻りませんから」
フィルの顔が真っ赤になる。
「母上!」
「私は何も言っていません」
王妃は振り返らず、子どもたちを連れていった。
庭に残されたのは、シンとフィルだけ。
急に静かになる。
フィルは王妃たちの背中を見送り、しばらく黙っていた。
やがて、シンの肩へ寄る。
シンはその腰を抱き、顔を覗き込んだ。
「今日は、子作りするか? そろそろ三人目欲しいだろ?」
フィルは、部屋に飾られたガラスの靴をチラッと見て、首を横へ振った。
「今日は、このまま」
上目遣いで、シンを見る。
「駄目?」
シンは即座にフィルの腰を引き寄せた。
「駄目なはずねぇよ」
そのまま長椅子へ押し倒す。
「わっ、シン」
「王妃が夕食まで戻らないって言っただろ」
「母上は、そこまでの意味では」
「分かって言ってる。あの人はそういう人だよ」
「もう……」
シンが覆いかぶさり、深く口づける。
フィルの腕が首へ回る。
「今日は、ただお前が欲しい」
フィルは、恥ずかしそうにしながらも目をそらさなかった。
「はい。僕も、シンと愛し合いたいです」
「最高に可愛いな」
「男らしいも言ってください」
「こんなところで欲しいって言えるんだ。十分男らしい」
フィルが嬉しそうに笑った。
「では、もっとキスしてください」
「それだけで終われると思うなよ」
「終わらなくていいです」
唇が重なる。
フィルの幸せそうな笑い声が、庭の木陰へ溶けていった。
城の奥には、今も一枚の札が残されている。
牢屋♡
けれど、捕まった二人がそこまで戻ってくるのは、もう少し先になりそうだった。
** イケメンシンデレラは、健気王子に沼る ~男前な騎士と恥じらい王子の逆転BL童話~ (完)
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