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Epilogue 最後の手紙

かの物語から、数百年が経った。 その間一度も魔王は現れず、勇者も生まれなかった。 世界は魔物の脅威から救われた。 誰も知らない。 この平穏が、四人の願いの上に成り立っていることを。 春の陽射しの中、噴水の周囲を子どもたちが駆け回っていた。 遠い昔にも、あの輪の中を走っていた少年がいた。 神殿は権威を失い、王国は共和国となった。 かつての神話は、寓話(ぐうわ)として語られていた。 失われた彼らの名を知る者は、もう誰もいない。 ただ、一人の青年の名前だけは歴史書に刻まれていた。 世界の何処かで、今日も戦禍が上がっていた。 魔物の襲来がなくなった世界は壊されることがなくなり、人類は発展していった。 手を取り合って魔物と対峙していた人々は、その脅威がなくなったあと、互いの領土を、地位を奪い合い、人と人とで争うようになった。 この世界にはもう、神は関与しない。人が縋るために創り出した神のような何かが、崇拝されているだけだった。 かつてこの街が王都だった頃から、街全体を見渡せる小高い丘の上に、古びた墓標が立っている。 ――勇者の魂 此処に眠る 誰が建てたものであるのか、そう記された墓標は古いながら厳かなものだった。 その隣には、勇者が生前建てたとされる石碑があった。 長い年月で風化した文字は、今もなおかろうじて読み取れる。    我が永遠の伴侶『ノア』    親愛なる友『ラグエル』『オルフェ』    平和の礎を築いた彼等を心より称えん 歴史は語る。 世界に永遠の安寧を齎したとされる、最後の勇者の名を。 語り継がれるその者の名は、『ルイアス』。 彼は死の間際まで、三つの名が刻まれた石碑の傍らで眠ることを願ったという。 愛するノアへ。 君が願った未来は、今ここにある。 共に歩んだ友へ。 君たちが繋いだ明日は、決して失われない。 いつかまた、何処かで巡り逢うその日まで。 聖剣と共に在った僕から、魔剣と共に歩んだ君へ。 了

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