1 / 2
第1話
【首の折れた男(家にまつわる怪談話)】
『俺ん家の近くに、“絶対に人が住み着かない家”がある。
入居者は全員すぐ出てく。
理由は、その家に“首の折れた男”が出るから。
住宅街の一角にある、庭付きの一戸建て。そこそこデカくて駅からも近い。なのに値段は激安。たまに人が入居するんだけど、みんなすぐ出ていく。
結局、俺が子供の頃からずっと空き家のままだ。
昔、引きこもりの男が親を殺して、自分も首を吊ったらしい。
だから近所じゃ、
「家族の幽霊が出る」
って噂されてた。
でも、その噂が本当だって分かる事件が、去年あった。
近所の不良グループが、夏休みにその空き家へ肝試しに行ったんだ。
夜中の一時。コンビニで酒買って、五人で侵入。リビングの窓を割って入ったらしい。当然、電気もガスも止まってる。
でも妙に一階だけ綺麗だったって。リフォーム済みみたいに。なのに、二階へ続く階段だけ異様だった。
壁紙は剥がれ、手すりは黒ずみ、カビ臭い。途中で右に曲がる階段なんだけど、踊り場の上だけ妙に暗い。
「うわ、絶対出るやつじゃん」
最初はそう言って笑ってたらしい。とりあえず一階から見ようってなって、全員で風呂場へ行った。
そこも綺麗だった。窓から街灯の光が入って、薄暗いけど周りは見える。
「広っ」
「うちの風呂よりいいじゃん」
そんなこと言ってたとき、一瞬だけ、風呂場が暗くなった。同時に。
――ゴシャッ。
すぐ外から、重いものが落ちた音。全員、黙った。
「……猫だろ」
一人が半笑いで窓を開けた。身を乗り出して外を見る。
「誰もいねぇ……」
でも、その辺りから空気がおかしくなったらしい。湿っぽいというか。 息が詰まる感じというか。
その時。二階から、
ギ……ギ……
って音がした。誰かが歩くみたいな音。でも全員、一階にいる。
「……帰ろうぜ」
誰かが言って、みんな無言で廊下へ出た。そこには、あの階段がある。
一人目、二人目はさっさとリビング側へ逃げた。三人目が、何となく階段を見上げた。それで止まった。
「……誰かいる」
全員、階段を見る。踊り場に、男が立ってた。見えたのは足だけ。
裸足。 泥だらけの足。顔は天井に隠れて見えない。
「お、おい!誰だよ!」
三人目が叫んだ瞬間。男は、ギ……ギ……って音を立てながら、二階へ上がっていった。
「ビビらせやがって!!」
恐怖をごまかしたかったんだろうな。三人目が怒鳴りながら階段を駆け上がっていった。
その直後。二階で、
ドタンッ!!
ってデカい音がした。そのあと。
ゴキン。
って聞こえた。
次の瞬間、三人目が転がるように階段を降りてきた。
「いた!!いたって!!」
半泣きだった。
「クローゼットから出てきた!!」
「首が!!」
「首折れてた!!!」
全員パニックで玄関へ走った。
でも、開かない。鍵は開いてるのに、ドアが壁にくっついたみたいに動かない。全員で泣きながら体当たりしてたとき。
後ろから。
ギ……ギ……
って音がした。
振り返ったら、男がいた。階段の途中に。
デカい男。
首が、ありえない方向に曲がってた。白目を剥いて、 口から泡を垂らして立ってた。
「ぅ……う゛ぁ……」
唸るような声が聞こえた瞬間、一人目が金属バットを投げた。
ガコンッ!!
って音がして、男が仰向けに倒れた。
その瞬間、玄関が開いて、全員悲鳴上げながら逃げたらしい。
で。
次の日から、一人目は学校に来なくなった。
家に様子を見に行った奴が言ってた。
夜中になると、部屋のクローゼットに向かって、ずっと誰かに話しかけてるらしい。
「ごめんな」
「痛かったよな」
って。』
--------------------------------------------------------
軽快な着信音が、久我 迅の眠りを妨げる。だだっ広いリビングの真ん中に敷いた布団の中から腕を伸ばしてスマホを手に取り、薄目で見ながら通話ボタンを押す。
『迅?俺だ』
「あぁ……兄ちゃん……?」
『まだ寝てんのか、今日はいい天気だぞ』
「あぁ、うん……」
電話口で、兄の久我真が喋っているのを迅はウトウトしながら聞いていた。
5日ほど前から、迅は一人暮らしには広すぎる一軒家に住んでいた。3LDKの、庭付き一戸建て。妻子がいるわけでもない陣がここへ住んでいるのは、電話をかけてきた兄からの指令だった。
曰く、ここの家に怪奇現象が起きているというからしばらく住んで検証してほしい、とのこと。
兄はいわゆる不動産投資をやっていて、その縁で購入した一軒家だった。よくない噂があるのは知ったうえで購入し、弟に検証させ、怪奇現象が起きないことが証明されれば良し、万が一怪奇現象が起きればそういう『触れ込み』で話題にしてやろうという心積もりらしい。
兄からの条件は二つ、毎日自宅で眠ることと、定期的な報告を欠かさないこと。
『仕事もしてねぇんだから、暇だろお前』
そんな風に言われてカギを手渡され、迅は住む場所と生活費をくれるなんて自分は良い兄を持ったんだとウキウキで入居した。
『頼むぞ、迅』
「あいあい、分かってるよ」
電話が切れて、迅は枕に突っ伏す。真っ白い枕カバーは嗅ぎなれない洗剤の匂いがして、引っ越しを機に洗剤を変えたのを思い出す。
「ん゛~~……起きるか……」
のそ、と体を起こした迅は枕元に置いている黒ぶち眼鏡をかけて立ち上がった。全身を伸ばして伸びをする迅の目に、家具一つないダイニングと殺風景なキッチンが映る。
迅が布団を敷いているのはリビングで、そこにアパートに住んでいたときのローテーブルとテレビ、タンス代わりのカラーボックスと衣装ケースを置いている。生活必需品がほとんどその程度しかなく、続き間になっているダイニングには何も置いておらず、僅かな調理道具が置かれているキッチンがあるだけだった。廊下を挟んだ風呂場とトイレには一応多少のものは置いてあるが、二階は全くの手付かずだった。
それもそのはず、兄から滞在時間は長くて一か月と言われているし、ここは他の人に貸し出すために購入した物件なのだからあまり汚すなちゃんと掃除しろと言われている。
「まあ、掃除ぐらいやりますけどね」
とはいえ、家賃光熱費なし、生活費の負担ありの1か月は迅にとってはありがたい。何しろ、彼は無職だからだ。勤めていたバーで迅を巡って色恋沙汰が起き、穏便に済ませるためにセクシャルをばらしたらさらにヒートアップした相手に切りつけられたせいだ。迅は被害者なのだが、そのまま働き続けると相手がまた現れるかもしれないということで辞めた。代わりに別のバーを紹介すると言われたが、この機会にしばらくのんびり過ごそうと思い返事は保留してある。そんなときに兄からこの合法ニートの話が舞い込んで、飛びついたわけだった。
スマホで時刻を見れば14時を少し過ぎたところだ。昨日は深夜まで酒を飲んでいたため、まだ頭の奥が重く、少し痛みを感じさえする。二日酔いとは少し違った痛みに顔をしかめながら冷蔵庫の中のミネラルウォーターをがぶ飲みし、長時間の睡眠で固まった首をグルグルと回してほぐした。抜けていかないだるさと酒臭さに顔をしかめて、迅はキッチンと廊下を挟んだ向こうにある風呂場に足を向けた。
適当に服を脱ぎ捨て眼鏡を外し、風呂場へ入る。シャワーのコックを捻ると、冷たい水がすぐにゆっくりと温度を上げて迅の体を滑り落ちていった。
「っはぁ〜……」
低く息を吐き、濡れた黒髪をがしがしと掻き上げる。短く切った髪は水を含んでも重たくならず、硬さもあるため額の方から掻き上げるように撫でつけてもすぐに立ち上がった。
迅はもともと肌が焼けやすく、学生時代に外で遊び回っていた名残か、三十路手前になっても腕や首筋にはうっすら日に焼けた色が残っている。そのせいで、白い浴室灯の下でも妙に生々しい体つきに見えた。
泡立てたシャンプーを頭にぶちまけながら、迅は鏡を見る。
湯と泡が混じった流れが鎖骨を滑り、胸を伝い、腹筋へ落ちる。筋骨隆々、というほど鍛えているわけではない。だが、重心が低く、妙にどっしりしている。厚い胸板と太い腕には喧嘩慣れした男特有の圧がある。兄からは『チンピラみたいな体つきしやがって』とよく言われるが、実際否定はできなかった。
三白眼気味の鋭い目。口元にはうっすら無精ヒゲ。親しくもない他人に振る愛想はなく、お上品なタイプでもない。初対面の人間にはだいたい怖がられる顔だ。
「……我ながら感じ悪ぃ顔」
呟いて鼻で笑う。とはいえ別に自分の外見が嫌いというわけではない。睨みの利く目つきは気に入っている。変な舐められ方をされずに済むからだ。
バーテンという職業柄、ちょっとばかり荒事に鉢合わせることもある。そういうときは特に、自分の見た目は有利に働く。
それともう一つ、この男くさい外見は男にモテる。
世間一般の女性からは怖がられ遠巻きにされる。だが、迅の好みは男だ。男らしい見た目はむしろ好まれる方だった。
時には強面が好きだという女性に言い寄られることもあるが、華奢な体や自分より低い身長はどうにも興奮しない。
どうせ抱くなら筋肉も脂肪もむっちり乗った大きな男がいい。そういう男が、男に口説かれて組み敷かれて羞恥と快感に塗れて晒す姿が何よりも興奮する。
行きつけの店で引っ掛けて、ホテルで濃厚な時間を過ごす。気に入ったらときどき連絡を取り合って、好きなときにまた会う。そういう生活を過ごしていた。
なのに、もう何日もそういう出会いがない。
「……はぁ」
兄に頼まれて事故物件へ住み始めて数日。連れ込むのは禁止されていて、誰も引っ掛けていない。性欲だけが無駄に蓄積していた。
別にすぐにバレるわけじゃないだろうと思ったが、玄関先に設置されている防犯カメラは兄が見られるようになっているらしい。そう言われてしまえば、コソコソと忍び込ませるのも何だかバカらしくて結果的に禁欲する羽目になっている。
夜は必ず自宅で寝ろと言われているから、外泊もできやしない。
溜まった欲を吐き出すために自分のチンポを握った、
その時だった。
――ゴシャリ。
「……あ?」
浴室の外から、何か重たいものが落ちる音がした。湿った土嚢が高いところから落ちたような、重たい嫌な音だ。
シャワーを止めて耳を澄ますが、それ以上の音は聞こえてこない。
事故物件だなんだと散々脅されていたせいで、最初は妙に神経が立っていた。だが数日住んでみた限り、今のところ変なことは何一つ起きていない。拍子抜けするほど普通の家だった。
だからこそ、今の音は妙に生々しく聞こえた。
最初は、誰かが敷地にごみでも捨てていったのだと考えた。
この辺りは住宅地で、人の行き来はさほど多くない。この家はずいぶん前から空き家が続いていたし、迅が入居したのは5日前だ。短期間だし面倒がって近所への挨拶もしていないから、この家に人が住み始めたと気づいている人は少ないだろう。
実際、空き家の時期には通りがかった誰かがごみを放り込んでいくことがあったらしい。
「人が気持ちよくシャワー浴びてるってのによぉ」
ぶつぶつ文句を言いながら、玄関でクロックスを履き護身用の金属バットを手に取る。無地の黒Tシャツに同色のハーフパンツ、黒ぶち眼鏡で短髪の人相が悪い男。袖や裾から出る手足にタトゥーがないだけマシという程度のガラの悪さ。
大抵の不審者は逃げ出すだろう。
「不審者だったらぶん殴る」
玄関先のタイルを踏みしめると、ざり、と砂の擦れる音がする。音がした場所は、玄関からはちょうど真反対の位置にある。家の裏手だった。
角を曲がるときには一応頭だけ出して先を確認したが、人気はない。野良猫かと思いもしたが、落ちたときの音を思い出すと野良猫程度の重さではなかったようにも思う。
「……誰もいねぇじゃん」
風呂場の窓のそば、家の裏手には何もなかった。雑草の入り混じる土に、何かが落ちたような痕跡もない。塀の向こうは隣の家の裏手の壁になっていて、そのあたりも人気はなかった。そもそも道に面していないので、ゴミを投げ入れることもできないだろう。
「何だよメンドクセェ」
出所のわからない音にイラつきながら、迅は足音高く玄関まで戻って家の中に入った。
ガチャリ、と音を立てて扉を閉めて鍵をかけた瞬間、空気の異質さに気づいた。
「…………」
リフォームを終えている家の1階はどこもかしこも綺麗だ。廊下は真新しいフローリング、壁紙も汚れていない白で、照明も明るい。
けれど、二階はまだ手付かずなのだとか。どうも、2階の改装を行う前に兄が噂を耳にして、もし怪奇現象が本当ならば古いままの方がよいのではと判断して中止したらしい。だから二階だけは、壁紙もフローリングも薄汚れていて、何となく暗く、湿っぽい感じがした。
二階には行かないからと、気にしていなかったそこからこの異質な空気が流れて、階段に背を向けて玄関扉の方を向いている迅の足元に流れてきているような気がした。
「へえ……」
これが噂の怪奇現象か。
手放す前だった金属バットを握り直し、迅はゆっくりと振り返る。目の前に何か出れば即横っ面をぶちのめしてやるつもりで、前腕にググっと力を込めていた。
「あ……?」
吸い込まれるように、視線が階段の方を向いた。外から玄関の扉を開けたときには絶対にいなかったはずの男が、二階へ続く踊り場に立っている。
天井に阻まれて上半身はほぼ見えないが、裸足の足だけが見える。薄暗い階段の途中で、じっとそこに立っていた。
「何だお前」
警戒心をわざと剥き出しにした大きな声で話しかけても、男はピクリとも動かない。こちらを窺っている様子ですらない。
ぼた、ぼた、と重みのあるものが床に落ちる音がした。よく見ると、泥の混じった水が男の足元に落ちている。
「人んち勝手に入ってんじゃねぇぞ」
返事はなく、ただ汚水だけが階段へ落ち続けていた。空気が湿って、カビ臭いにおいがする。息苦しささえ感じるが、迅は苛立ちの方が強かった。
「廊下汚しやがって……!俺が怒られんだろうが!」
階段を上がって捕まえてやろうと一歩踏み出した瞬間、ギ……、と床のきしむ音を立てて男の足が動いた。そのまま、ゆっくりと階段を上がっていく。ミシ……、ミシ……と古い木の軋む音がする。
「待てコラ!」
迅が階段を駆け上がると、踊り場から先の階段に汚水と泥の足跡が残っている。踏まないようにしながら二階へ上がったとき、廊下の一番奥の扉がギィ……と音を立てて少し開いた。足跡もその部屋に繋がっている。
「そこか?とっ捕まえて廊下の掃除させてやっから覚悟しろ」
薄暗く、古いままの2階は迅が廊下の明かりをつけてもなお、暗かった。リフォームしていないから当たり前だが、時代を感じさせる砂壁に手が当たるとぼろぼろ崩れて落ちる。
大股で廊下を進み、一気に扉を引く。すぐさま一歩踏み込むが、部屋の中には誰もいなかった。
「……隠れても無駄だぞ」
7畳程の洋間は、日焼け防止に兄が取り付けたカーテンのせいで薄暗い。フローリングの床は色褪せていて、壁には家具の跡が残っている。ガランとした何もない部屋だが、唯一、壁に埋め込まれたクローゼットがあった。だがそのクローゼットも扉は全開で、中には何も入っていない。
「いない?」
窓から逃げたのかとカーテンを開けた瞬間、バァン!!!と大きな音がして扉が閉まった。鼓膜を破るような音だった。
反射的に振り返った迅は、突然閉じた扉に駆け寄ってドアノブを掴む。
「は……?何だよ。開かない?」
ドアノブが回らない。力を込めても、ビクともしない。
「おい、ふざけんなッ」
誰に言うでもなく悪態をついて、扉を蹴る。蹴破るつもりでかなり強く蹴ったのに、扉は動きもせず人の足裏へ鈍い衝撃が返ってきただけだった。異様だ。古い木製の扉のはずなのに、まるでコンクリートでも蹴ったようだった。
バットを振り上げる。重い音がするものの、扉は動かない。傷一つ、ついていない。
「何だこれ」
呟いた迅の後ろで、ギ……、と音がした。木の床が軋む音だ。
「…………」
振り返ると、クローゼットの前に男が立っていた。つい今しがた誰もいないことを確認したはずなのに、音も立てずに現れた。次いで、迅が男を認識した途端、土の匂いがした。水の混じった腐葉土の匂いだった。
「お前、どこから……」
泥で汚れた裸足で、男は立っていた。薄汚れたスウェットが、太い脚に張り付いている。男は長身だった。177cmの迅が見上げる程で、どこかに隠れられたとは到底思えない。
「……へえ……」
汚れて濡れたスウェットがまとわりつく、どっしりとした腰。薄い布地のTシャツが包む、分厚い胸板。そして、首。
ぐにゃり、と不自然に折れ曲がっていた。あり得ない方向に、骨がゆがんでいる。傾いだ頭から、長い黒髪が垂れている。
生気を失った土気色の肌、白目をむいた目から赤黒い血が流れている。
半開きの口から、ごぼり、と泡立ったった血混じりの唾液が溢れた。
「あ゛ぁ゛……ぅ゛……」
男が呻く。低く、湿った声だ。ぐちゃ、ぐちゃと泥を擦るような足音を立てながら、男が一歩ずつ近づいてくるのを迅は見上げていた。
かなりデカイ。 おそらく180後半はあるだろう長身の男は、図体もデカかった。
「…………」
怖くなかったわけではない。さすがに、首の折れた死体が動くのは、迅だって初めて見た。普通の人間なら腰を抜かしているだろう。噂で聞いた『首の折れた男』というのは十中八九この男だろう。
だが、迅の脳裏に浮かんだ感想はたった一つだった。
(ヤベェ、クソ好みなんだけど)
怪異だか幽霊だかよりも先に、性癖が殴り掛かってきた。おまけに、そのえっちな姿態を余すところなく無防備に晒してこっちに迫ってきている。
決して迫ってはいないが、迅にはそう見えたのだから仕方ない。
「いやなんでそんなエロい身体してんだよ……」
首の折れた男は、真顔で呟いた迅の声など聞こえていないようにゆらりと手を伸ばした。長い指、爪の割れた大きな手だ。
その手が自身に触れそうになった瞬間、迅は反射的に動いていた。
「オラァッ!」
ドンッ!と金属バットの先が男の腹へ突き刺さる。今度はちゃんと手ごたえがあった。男の巨体が後ろへ吹き飛び、受け身も取らずに倒れ込む。
重たく濡れたものが倒れ込んだ音と同時に、ゴキンッと骨の折れるような音もした。
「あ゛、ぇ……?」
肘をついて上半身を起こした男は、倒れ込んだ拍子に曲がっていた首が元の位置へ戻っているようだった。きょろ、と動かした目にうっすらと黒目が浮かんでいる。
状況を把握しようと辺りを見渡しているその姿は、さっきよりもずっと『人間』らしかった。
「っ……」
それを見下ろしながら、迅が男に一歩近づく。気づいた男が、怯えたように息を呑んだ。
「何だお前、殴れんのか。そりゃいい」
殴り飛ばすことができるならこっちのものだ。そう思いながら、男の太い腰の上に体重をかけて勢いよく腰を下ろす。じわ、と数拍遅れで濡れた感触と男の冷たい体温が伝わってきた。
「っぐ、ぅう゛……ッ」
「勝手に人んち入ってよぉ。俺の風呂邪魔したうえに、廊下汚して、タダで済むと思ってねぇよな?」
「ぁ゛……」
近くで見ると、男は本当に迅の好みの体つきをしていた。肩幅が広く、胸板が厚い、Tシャツ越しでもわかるほどに。さらには脂肪が乗って、むっちりとした揉みごたえのありそうな身体だ。まさに性癖ど真ん中だった。
「はは、マジかよ」
思わず笑いがこみ上げる。怪奇現象の検証だなんて言って、性欲の発散もできないでいた自分に現れた怪異がまさかこんな身体を持ってやってくるなんて。
「お前何?幽霊?化け物?」
「ぇ……ぅ゛……」
「まあ、だから何だって話なんだけどよ」
問いかけるたび、男の目が揺れる。自分でもよくわかっていないのか、迅の言葉すら認識できないのか。
腕を伸ばすと殴られるのを回避するみたいに肩を竦ませる。そのまま片手で両頬を掴み、ぐいっと上向かせた。
「へえ、怖いんだ?いっちょまえに」
頬は思いのほか柔らかかった、無理矢理こちらを向かされた男は白く濁った黒目で見上げてくる。顔には怪異の不気味さと、人間みたいな怯えが同居していた。 その反応が迅には妙に可愛らしく見えた。
「安心しろよ。殺しはしないから」
迅は男の顔を覗き込んだ。安心させてやろうと、口の端っこを吊り上げる笑みも浮かべてやった。
逆効果だったらしい。きゅ、と眉間にしわを寄せて眉尻を下げた男は泣きそうな顔をしている。
男はよく見れば見るほど、異様だった。肌は土気色で生気がない。目元に黒ずんだ隈がくっきりと残っていて、首の片側は皮膚が裂けている。その傷から血が流れることもなく、赤黒い肉をのぞかせているだけだ。
なのに、恐怖と困惑に揺れる瞳だけが、妙に生々しい。その黒目は白みがかって腐っているくせにだ。
「お前、声出んの?」
「……ぇ、ぁ……」
まともな返事はない。喉がヒクヒクと動き、喃語のような呻き声のような音が出るだけだ。声の出し方を、忘れてしまったみたいだった。
「ふぅん」
だがそれで、迅は男が自分の言葉を理解していると察する。
分厚い体を持つ男が、自分の下で困惑し怯えて縮こまっている。迅の興奮を掻き立てるのに十分なシチュエーションだ。
相手が生きているかどうかは、性欲の溜まった迅には些末な問題ですらあった。むしろ、生きている人間に無体を働けば問題になるが、死んだ人間なら誰も文句は言わないだろうと思う余裕さえあった。
「俺溜まってんだよな」
「っ……!」
迅は男のTシャツに手を伸ばし、無遠慮にまくり上げる。濡れて汚れたTシャツを剥いで見れば思っていたよりはきれいな肌が露出した。
「へえ、意外と汚れてねえな」
言ってから、ゴク、と喉が鳴る。
しっとりと水気を帯びた男の胸板は、もともとの色白さに血色の悪さが重なって真っ白だった。そこにふっくらとささやかに盛り上がる胸が乗っていて、ツンと色の濃い乳首が鎮座している。
「可愛い乳首してんじゃん」
指先でつつ、と弾くと、男の胸筋がぶるるっと震えた。男は迅の行動の意味が分からないのだろう。ひく、と喉を震わせ、不安そうに目を細める。
迅が手のひらで男の胸を包み込むように撫でた。ふに、と柔らかい肉が指に沈む感触。餅のように柔らかいそれを揉み込むようにすると、男の口から「う゛……」と掠れた声が漏れる。その反応が面白くて、さらに指先で乳輪をなぞる。
「ぁ゛……ッ」
そのままかりかり♡と爪先で乳首をひっかくと、男の腰が跳ねる。乳首から走る感覚に戸惑っているのか、目を見開いたまま固まっていた。
「化け物でも感じんのかおもしれぇ」
迅は乳首から手を離し、自分のハーフパンツと下着をずり下ろす。ブルン、と勃起したチンポが勢いよく鎌首をもたげた。それなりモテると自負してそれなりに遊んでいる迅のチンポは、経験の少ない人間が見れば怖気づく大きさだ。黒々として亀頭が大きく、カリ首がでっぷりと張っている。久しぶりの性的興奮にビキビキと血管が浮いて大変凶悪である。
だが男は、不思議そうに瞬きを繰り返しているだけだ。どうやら、このチンポがどういう意図で晒されたのか、わかっていないらしい。
「しゃぶれよ」
「ぅ……?」
男は、自分の口元へ押しつけられた迅のチンポに困惑しているようだった。何を言われているのかわからない、といった様子で、迅を見上げてくる。
「しゃぶれって言ってんの」
迅は男の頭を掴み、自分の股間に押しつける。抵抗することなく迅の股間に顔を寄せた男は、それでも状況が飲み込めていないようで、ただ困惑したように迅を見上げてくる。その表情にすら嗜虐心を煽られる気がした。
「口開けろ」
冷たくて柔らかい唇に先端を押し付けると、薄く開いた唇から舌が覗く。てろ、と亀頭を舐めたがそれだけだった。
「何だよやり方もわかんねぇのか」
「……ぁ」
男の顎を掴むと、無理矢理口を開かせた。そしてそのままチンポを突っ込む。頭を抱え込んで固定し、腰を押し付けていく。上あごを撫でるように動かすと、男が嫌がるように首を振った。
「ッ……っぷぁ、ぉ゛……」
「歯立てたらまた首へし折ってやるからな……ッ」
迅は男の頭を掴んだまま、好き勝手に動いた。どうせ死んでいる身体だ。呼吸などしていないだろうと思って喉奥まで突っ込む。ドタバタと足を動かしている音がするが無視だ。言われたとおりに歯を立てないようにしているところがいじらしく感じる。
男の口内は死んでいるくせにねっとりとした唾液に満ちていた。そのくせに、体温は低く、熱く勃起しているチンポを包み込む。腰を動かして咥内を穿つと、裏筋を男の柔い舌が刺激してゾクゾクと快感が走った。
「は……ッ、ん……いいぞ、使え、るなお前……ッ」
「ぇ゛ぉ、ぉ゛え゛……ッ」
喉奥へ亀頭をねじ込む。奥の狭くなったところにカリ首が引っかかり、そこを拡げるようにして何度もピストンする。男の喉からは苦しそうな音が漏れているが、そのことに構う余裕もなかった。久々の快感に腰が熱く蕩けそうになる。早くこの欲望を吐き出したい一心で腰を振った。
「っは、っあ゛ー……っ!!」
「っ……!?」
異物を押し出そうとしているらしい男の喉が絞まる。先端を締め付けられ、ブルっと迅の腰が震えた。じゅぶ♡じゅぼ♡と唾液と先走りの混じったモノが抜き差しの度に男の口から溢れる。
「っは、っは……っん゛……」
「ん゛ぶっ、っぉ゛ご……ッ♡ん゛ぉッ……!?」
「ははっ、喉まんこ使われて気持ちいか?」
戸惑ったような声で呻く男を見下ろしながら、迅は詰った。男の声に甘さが混じっているような気がしたからだ。ぎゅっと目を瞑ったまま、迅に頭を掴まれてされるがままの男は逃げるでもなく太ももに手を添えている。
んく、と男が口内にたまった体液を嚥下した。反射的な動きだが、ガチガチに勃起したチンポを絞り上げるような動きに射精感が高まる。喉の奥でカリ首を扱きながら、舌先を裏筋に押し付ける。
「ッ、出る……ッ」
「ん゛……っ?!」
男の口の中でチンポが一層膨らむ。その瞬間、迅は男の頭を引き寄せた。そのまま、一気に射精する。
「っぉ、ぶ、ぉ……♡」
「あ゛ー……イイ……ッ♡」
びゅるるるううぅ……ッ!♡と勢いよく噴き上がったザーメンを男の喉奥へ叩きつける。一滴残らず注ぎ込むように、腰を突き上げた。男は逃げることもできず、ただ迅の射精を受け止めるしかできない。苦しそうに足をばたつかせるくせに、太ももに添えられた手は力を籠めることすらしなかった。
「っはぁ……、ッ」
「んっ……ぅ゛、く……ん゛……っ」
口内にチンポを埋めたまま余韻に浸っていると、男の喉が大きく上下する。ごく、と何度か嚥下した後、口内でゾロリ、と冷たい舌が動いた。押し出すような動きではなく、舐め取るような動きだった。次いで吸い付かれ、尿道に残った汁まで啜られて迅の考えは核心になる。
「は……、ははっ……何、お掃除フェラまでしてくれんの?」
「ん、っぅう゛ッ……っ♡」
「ッ、もう出ねぇって、また勃起すんだろ離せ離せ」
じゅ♡じゅる♡となおもしゃぶりついてくる頭を引きはがし、半分ほど勃起したままのチンポを引き抜いて立ち上がった。ぢゅぽ、といやらしい音を立てて口からチンポを引き抜かれた男は、頭を床に落としてはぁはぁとその分厚い胸板を上下させている。
薄汚れたTシャツをまくり上げられたまま白い胸を晒して身を投げ出してる様を、迅は舐めるように見つめた。そうしてふと、男のスウェットが盛り上がっているのに気づく。
「何だよ、お前勃起してんの?」
「!?」
指摘すると、男は上半身を起こしてもたもたと後退りして迅の足の間から逃げようとする。だがそこには扉の空きっぱなしになったクローゼットがあるだけで、男はクローゼットの奥の壁に背中をぶつけて止まった。迅は膝をついてしゃがむと、男の膝に手をかけて足を開かせる。
「逃げんなよ。しゃぶってくれたお礼に抜いてやるから、な?」
「っぁ゛……ッ!?」
迅は男の太ももを抱え上げた。持ち上げられた尻から濡れたスウェットと下着を剥がすように脱がせる。それと同時に、むわ……♡と濃い雄の匂いがした。男の股間はしっかりと勃起していた。それどころか、先走りが先端に滲んでいる。
色は薄いがなかなか大きなチンポだった。太さも長さもしっかりあって、やや皮の被った愛らしいチンポだ。
「お前も溜まってんのか、まあ死んだら抜くこともねぇよな」
「ひっ♡」
「スケベな身体しやがってよぉ……」
握り込むと、ガチガチに勃起しているはずのチンポを少し冷たく感じる。だがそれは、己が興奮して体温が上がっているせいかもしれなかった。
「んっ!ぁ゛……ぉ゛……っ」
「後から後から溢れてくんじゃん。汁多い方?エロいね」
迅はニヤニヤと笑いながら、相手が化け物だとわかっていながらもついついセフレに言うような言葉をかける。皮を剥き降ろし、竿をゆっくりと撫で上げる。ヒクヒクと亀頭が揺れるのを掌で包み込み、男が見えるように高い位置から唾液を滴らせた。チンポの先端に落ちたそれに、尿道がヒクつくのが見える。
「ぉ゛……ッ、ぅ゛……♡」
唾液の滑りと男のチンポから染み出したカウパーを使ってヌルヌルと扱き、先端を親指の腹で撫で回す。迅の手管に翻弄されて小さく呻く男は、自分のTシャツを両手で掴んで身悶えた。泣き出しそうな顔で俯いているが、その視線が自分のチンポに釘付けなのは明白だった。
それを横目で見ながら、耳元にそっと声を吹き込む。
「お前男にチンポ扱かれてこんななってんだよ」
「ぁ゛、ゃ゛……ッ♡」
「恥ずかしい?可愛いじゃん」
揶揄うと、青白い肌に赤みがさしたような気がした。Tシャツをたくし上げて自分の顔を隠す様が、幼気な子供のようでそのアンバランスさにぞっとした興奮が迅の体を駆け巡る。
しゃぶってやったらどんな反応をするだろうか、と思う。けれど、薄汚れた体に口を付ける勇気はなかった。代わりに、もう片方の手で柔らかい睾丸の下、会陰を押し込んでやる。
「どう?ここ好きな奴はこれだけで射精すんだけど」
「んっ、っお゛……!♡」
身を強張らせた男の喉から、はっきりとした声が漏れた。どぷ♡と先端から溢れ出したカウパーが迅の言葉に答えている。
「ヨさそうだな」
「ぉ゛お゛ッ……♡ぉ、ほ……ッ♡♡」
何度か押し込むたび、男は明瞭に喘いだ。快感を追いかけて腰が上がり、ヘコヘコ♡と動いて迅の手で自分のチンポを扱く動きさえして見せた。
「素直でいいねぇ」
「っ、ぅう゛ッ……っ♡」
会陰とチンポを責められている快感が相当強いのか、男はゆるく首を横に振った。は♡は♡と短く息をしながら、胸元でTシャツを握り締めている。
反応があることに驚いている部分はあるが、迅はそれよりも自身の欲求を優先した。戸惑いながらも確実に快楽に耽溺しているこの男を、思うままに乱してやりたかった。
片手で先端を覆うように掴むと親指でその鈴口を撫で、会陰を圧していた手で竿を思い切り扱いてやる。びゅ、ともはや射精と思うような先走りが溢れた。
「ひ、っぅ♡」
「イキそうなんだろ?」
ねっとりとした興奮に満ちた低い声で囁くと、男が身を縮める。
竿を扱きながら、鈴口を苛め続ける。呼吸の感覚が早くなり、ときどき堪えるように下腹に力が入る。顔が真っ赤になっている。カクカクと腰が震えて、射精寸前であることが見て取れた。
迅は男の耳朶に唇を寄せると、吐息を吹きかけるように再度囁いた。
「イケよ」
「ッ……!?ぉ゛♡おぉ゛っ……ッッ!!!♡♡♡」
その瞬間、男の腰が跳ね上がった。ビュルルルルッ!!♡と勢いよくザーメンが噴き上がり腹に散る。びゅく♡ビュ♡と何度かに分けて射精し、それに合わせて背筋を反らして痙攣した。
射精が終わるまでずっとチンポを握って扱き続けてやると、やがてガクンと体から力が抜けて足をだらりと投げ出してしまう。
「ッ……っぁ゛……♡」
肩で息をして、涙の溜まった瞳でこちらを見てくる男に、ぞくぞくとした愉悦を感じる。
「お前敏感すぎじゃね?こんな簡単によがっちゃってさ」
揶揄うと、男はくしゃりと顔を歪めた。それがなんだか愛しく思えて、もっと可愛がってやりたくなる。未だ萎える様子のないチンポを掴んで、ゆっくりと上下に扱く。ぴゅ♡と残滓が飛び出した。
「ぁ゛……ッ」
「もっとヨくなろうな」
片方の足の膝裏に腕を入れて抱え上げ、膝を立たせて広げる。ぼやっとした顔でこちらを見つめる男に話しかけながら、腹の上の淫液を指で拭い取ると、肉厚な尻を反対の手で押し広げた。色の薄いアナルが、皮膚を引っ張られた刺激で慎ましく窄まっている。そこへザーメンにまみれた中指を押し当て、にゅぷ♡と問答無用で押し入れた。
「ッッ!?」
ギクンッ、と身を強張らせた男が、強く指先を締め付けてくる。だが自分が出したザーメンの滑りで迅の中指はさらに奥へ押し込まれた。
「ぁ゛ぇ゛……ッ」
「ちょっとびっくりしたなぁ。ごめんごめん。ほら力抜け」
「ぉ゛、ふ……ッ、ふ、ぅ゛……」
軽く太ももを叩いてあやすと、男は素直に息を吐いて力を抜こうとする。化け物のくせにチョロいなと思いながら、少し冷たい内壁を撫でる。腹側、ちょうどチンポの根本あたり、圧をかけると投げ出したままの男の足がビクと跳ねた。ザーメン塗れで力を失っていた男のチンポもピクピクと反応している。
「んぃ゛、っ?」
「あ、ここ?」
「……??」
男が口を半開きにしたまま小首をかしげる。いっそあざとささえ感じるその仕草に、可愛いなと思ってしまう。
「ここな、お前がメスになるトコ♡」
「ぉ゛……っ?」
迅は指先で先程の場所を圧し上げた。ぎゅ、と男の太ももに力が入って、指も締め付けられる。宥めるためにゆっくり指を引き抜き、男の力が抜けたところでまた指を押し込んで同じ場所を圧し上げる。
「っ、ぉ……ぐッ!?っ、ぉほ……ッぉ゛♡ぉ゛ッ!!♡♡」
「そうそう、ゆっくり気持ちよくなろうな……」
「は、ぁ゛……っんぃ゛……!!♡ぃ゛、あ゛……ぁ゛♡♡」
繰り返していると、内壁が蕩けていくのが分かる。指に吸い付き、指をしゃぶるように阿ってきた。前立腺を捏ねられても腰をくねらせて感じ、勃起したチンポを揺らして先走りを飛び散らせた。
「才能あるなお前」
「っぉ゛……♡……お゛ッ!?♡」
にゅぷ♡と指を二本に増やして中を探る。嫌がる様子がないので再び前立腺をトントン♡と圧すと、指が食いちぎられそうなほど締め付けられる。男の腰が浮き上がって、迅の顔のすぐ横で揺れるチンポから先走りが滴り落ちてクローゼットの床を汚した。
「なあ、自分で足持って」
「ッ……?」
「ほらこうやって。足持ってケツ突き出してろ」
肩あたりまでクローゼットの壁にもたれている男に、膝裏を掴んで足を抱えさせる。チンポもタマも迅の指を咥え込まされたアナルも全部晒すような格好だが、男は言われるまま膝を抱えた。
「ぁ゛う゛……♡ぉ゛、……♡」
ゆっくりと指を引き抜き、押し込む。チンポが入ったときと同じ動きだ。男は前立腺に触れられないことにもじもじと尻を揺すっているが、痛みはないらしい。半開きの口からダラダラと涎を垂らし、指を咥え込むアナルを見下ろしている。
「自分のケツほじられてるの見て興奮すんだ?」
「ぁ゛、ぅぐ……ッ♡ぅん゛……ッ♡」
「エッチだねえ。力抜いとけよ」
「ッひ、ぐ……ッ!!!♡♡」
三本目の指を押し込むと、さすがに男が顔を顰めて奥歯を噛み締める。迅が男のチンポの先端を手のひらで撫で回してやると、その快感に飛びついた男が、両足の指を丸めて呻く。その隙に、緩んだアナルの中で内壁をかき分け前立腺に触れる。
「んぉ゛、ぉ゛……ッ!!♡♡♡」
三本そろえた指でにゅぷ♡にゅぷ♡と前立腺を押し込み、何度も刺激する。時折広げるように指を開いたりして男の胎内を蹂躙した。震える太腿を片手で撫で、男の腰が引けるのを妨害する。
「いい感じ」
「ぉ゛……♡ッ♡」
指先を引き抜き、収縮するアナルを見下ろす。迅が触れるまで慎ましやかだったそこは、少し赤みを帯びてヒクついていた。何かを咥え込むことを覚えさせられ、先を期待しているような淫靡さだった。
「お前の反応がいいから、俺もこんなだよ」
男の痴態にすっかり勃起している自分のチンポを押し付け、尻の間に擦りつける。にじゅ♡ぐじゅ♡と体液の絡む音をさせながら、挿入しているときのように大きく腰を動かした。アナルから会陰、タマを擦ってチンポ同士が擦れ合い、亀頭と亀頭がぶつかるたび溢れたカウパーが糸を引いた。
「お゛っ♡、ぉ゛ッ♡」
「チンポで擦られて気持ちいい?」
ガクガクと足を震わせ、男の体が仰け反る。足を掴んでいた腕が離れ、空いた方の手で股間を隠そうとするのでその手も取って膝裏に戻す。
「隠すなよ。ちゃんと持ってろ」
「ひ、ぉ゛……ッ!?♡♡」
「あー、挿れてぇ。挿れていい?」
「んっ、ぅ゛……?っ、ぁ゛……?」
肉厚な腿裏から尻を撫でつつアナルを亀頭で軽く押しながら問いかけると、男がこちらを見上げる。きっと理解なんてしていないだろうと思いながら、迅はわざと男の顔を見つめ返す。
「ダメつっても入れるけど」
「ん、ぉ……?」
チンポの根元を持って体重をかける。にゅぷ……んッ♡と亀頭を飲み込んだアナルがその大きさに慄いて強く締めあげてきた。けれど指の時と同じく、ザーメンや体液でヌルついたアナルは迅の思うままチンポを受け入れてしまう。
「ぉごッ……おぉ゛……ッ!!」
「はい、ナマそうにゅー……っ♡」
壁に押し付けられるようにして大柄な体を折りたたまれ、雄のチンポを受け入れさせられた男はブルブルと震えながらも自分の膝から手を離さない。迅は男の様子を窺いながら、徐々に奥へと腰を進めた。ずぷぷぷぷぷ……ッ♡と太いチンポがアナルを押し拡げながら入っていく。
「ぉ゛ほぉ゛……ッ!!!」
「ッ、きっつぅ……こりゃ初モノだわ」
男が首を振って声を上げる。しかし迅の侵入は止められない。少し引いて押し込むごとに、ぬちゅ♡にゅぢゅ♡と粘ついた水音をさせながらチンポを呑み込ませていく。
「貫通おめでとう……♡」
「っぉ゛ッ、ぁ゛、ぐ……ッ!!」
「はは……やべぇなこれ」
腹筋がピクピクと引き攣るのに合わせて、男の胎内が締め付けてくる。思わず射精してしまいそうになるのを堪えて、奥の奥まで挿入しきった。
「はぁー……全部入った」
「ぅ゛、う゛ぅ……ッ」
「ほら、こっち寝転んで」
チンポが根元まで挿入され、男の尻と迅の鼠径部がぴったり合わさる。男の首に腕を回し、迅と壁に挟まれていた体をクローゼットの床に寝かせた。また首が折れては萎えるので、しっかりと頭の裏を支えて、だ。好みの男とは言え、さすがに死姦の趣味はない。
「これも脱いで」
「ん゛……ぅ」
男の胸元でぐちゃぐちゃになっているTシャツを脱がせ全裸にする。真っ白い体に、さっき弄った乳首がツンと勃ち上がっていた。指の腹でかりかり♡と先端を優しく掻いてやれば、男が身を震わせてチンポを包む肉壁がざわめくように動く。
「ぉ゛……っ♡ぁ゛♡」
少し強く乳首を摘まむと男の逞しい体が痙攣して、抱え込んだ足のつま先に力がこもった。すぐに離してスリスリ♡と撫で擦り、くりゅくりゅ♡と捏ね回して身悶える男を堪能する。男が快感に翻弄されるのに合わせて、肉筒が少しずつ解れ蕩けて迅のチンポになじんでいく。硬いチンポを締め付ける内部からの刺激にすら、甘い痺れを感じているのも分かるようになってきた。
「気持ち良さそうだな」
「ぉ゛ッ♡ぉ゛……ッ♡……ぉ゛ッ♡ぉ゛ッ……!♡」
押し付けたままの腰を、擦りつけるように動かす。奥を捏ね、アナルにチンポの太さを慣れさせる動きに、男はされるがままで甘く声を上げ続けた。にゅぷ♡にゅぷ♡と体液の混ざり合う音が鳴る。次第に、男の体が弛緩していくのが分かった。
足を開いたまま、全身の力を抜いてされるがままになっている。そろそろ馴染んできたかと腰を引くと、亀頭の段差で内壁を捲りあげられる感覚に男が背中を反らせて喘ぐ。
「ぉ゛ッ♡ぐ、ぅ……♡♡」
カリ首が抜ける寸前まで腰を引き、男の足首を掴んで頭の方へ押しやり尻を上向かせる。上から腰を下ろすようにしてチンポを深くまで挿入していくと、男は自分の頭を抱え込んでその快感を堪えているようだった。
「っお゛ぉ゛……!!♡♡♡」
ずちゅ♡じゅぷ♡と何度も緩慢な抽送を繰り返すと、肉襞が蕩けて柔らかな媚肉がチンポに絡みついてきた。熱く蕩けた肉筒がチンポを歓迎するようにうねり、包み込む。すっかりと、雄を咥え込む蜜壺になっていた。頭を掻きむしっていた男の手もだらりと投げ出され、腹をさらけ出して雄の侵略を受け入れるままだ。
その心地よさに夢中になって抽送を繰り返すうち、徐々に迅の余裕もなくなっていく。
「はぁ、やべぇなこれ……っ♡」
「ぉ゛……♡っぁ゛♡お゛……っ♡」
腰を掴み、奥を穿つ。奥に亀頭が当たるたびに、男は声を上げた。きゅう♡きゅう♡とアナルが収縮して、迅の射精を促してくる。
「ッく、……ッ!!♡♡」
「ぉ゛ー……ッ♡っぁ゛……!!♡♡」
大きなストロークでピストンし、媚肉でチンポを扱く。冷たかった男の体内は、今や熱く蕩けて雄を受け入れていた。奥を捏ねると背を撓ませて震え、前立腺を抉ると身を強張らせてこみ上がる快感に耐える。男の反応に呼応するようにチンポがぴくぴくと腹の上でのたうち、カウパーを溢れさせた。
「自分でチンポ扱けよ。俺お前のケツアナほじんので忙しいからさ」
「ぁ゛、ぅ゛……ッ♡う゛♡」
「ほら」
男の手を掴んでチンポを握らせるが、ゆるゆると撫でるような動きをするだけで一向に扱こうとしない。迅も自分の快感を追う方が優先で、鼻で笑って放置した。
「お前チンポ扱くのもへたくそかよ」
「ぅ゛う゛……♡」
「あーあ、ケツでイけるといいな」
「ぁ゛、ぁ゛ッ……♡♡」
にゅぷにゅぷと中を掻き回しながら、男の体に覆いかぶさる。大きな体はクローゼットの中に横たわってもまだ窮屈そうで、首筋に鼻を埋めて思い切り息を吸った。ほのかなカビ臭い匂いと腐葉土の匂い。
じわ、と下半身に熱が集まっていく。それが興奮によるものなのか、はたまた別の理由なのか、迅にはわからなかった。
「ぉ゛ッ♡ぉ゛ッ♡……お゛……ッ!!♡♡」
腰を引き、ギリギリまで抜いてから奥を穿つ。ぱん♡ぱん♡と肉同士がぶつかり合う音が響く。そのたびに男の声が大きくなっていった。声帯を潰されたような濁った嬌声だが、そこに甘さと快感が混ざっているのはわかる。男の体がビクビクと震えて、腹の上のチンポが跳ねた。絶頂が近いらしい。
「あ゛ー出そ……ッイ、く……!!!」
ずちゅんっ♡と奥まで突き上げ、射精のために強く抱きしめた。ぎゅうぅうううッ♡とアナルが締まり、奥が亀頭に吸い付いてきた。
「ぉ゛お゛ッ♡♡ぉ゛ー……ッ!!♡♡♡」
「ッ……!!♡」
びゅるるるぅうッ!!!♡びゅうッ♡と勢いよく精液が吐き出され、男の最奥を濡らしていく。その熱さと量に男は体を跳ねさせ、自身も射精した。
「ぉ゛……ッ!!♡ぉ゛ッ!♡」
「はぁっ、まだ……ッ全部、飲め……ッ」
何度も緩く抜き差しし、尿道に残ったザーメンまで一滴残らず注ぎ込んでいく。それに合わせてビクッ♡ビクッ♡と男の体が震え、断続的に精液を撒き散らした。男のチンポはほとんど萎えたままだったが、それでも射精を続ける。
全て出し切ってからずるりとチンポを引き抜くと、迅は体を起こして男の体を見下ろした。
「んぃ゛……ッ♡」
「はぁ゛ー……やべ、気持ちよかった……」
男は足を投げ出したまま横たわっている。腹の上で自分の出したザーメンにまみれ、虚ろな目をしていた。その表情に、先ほどまでの快感の余韻がまだ残っているようだった。
「んぁ゛……♡ぁ゛……っ」
ぐったりとしたままの男が、体をくねらせて尻を持ち上げる。肉厚な尻の奥から、ドロリ♡と迅の出したザーメンが溢れていた。どうやら、精液を排出しながらも快感を得ているらしい。迅が男のアナルに指を入れると、待ちわびていたかのようにきゅ♡と締め付けてくる。
「んぃ゛……っ?♡」
「やべ、もっかい勃起してきた……っ♡」
迅は男のアナルに指を突き入れ、中の精液を掻き出していく。ぐちゃぐちゃと水音を立てて出し入れすると、それに合わせて男の腰が揺れた。前立腺を圧し潰すように刺激すれば、体を震わせてチンポを勃起させ先走りを垂らし始める。
「あー、やべぇなこれ。止まんねぇかも……」
頭の隅に、取り込まれたのではないか、という考えが浮かぶ。けれど快感と男への性欲が、すべてを覆い隠した。自分のモノを突っ込んで種付けしてやりたい。抱きしめて全身で密着したい。汗や唾液や、自分のザーメンまみれにしてやりたい。この体の深いところに俺を刻み込んでやりたい。その欲求が強すぎて、他のことは何も考えられなかった。
ともだちにシェアしよう!

