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王国の危機
その年は、これまで国を統治してきたルーカス国王陛下が若くして、病で崩御した年だった。国民は早すぎる国王陛下の死を嘆き悲しみ、喪に服す。
ルーカス国王陛下の後継者に選ばれたのは第一王子だったが、まだ若く、ルーカス国王陛下のように国を治めることができるのだろうか……? そんな不安が、国民の沈んだ心に更に影を落とした。
そしてその年は、作物が全く育たない年でもあった。それまでは絵筆程の太さしか育たなかった人参は、芽を出して間もなく枯れてしまう。人参だけではなく、ライ麦や小麦、芋も玉葱も全てが育つことなく枯れて朽ちていく。作物が育たない畑はひび割れ、砂埃が宙を舞った。
農民は疲れ切った顔で空を仰ぐが、雨が降る気配すらない。
城内にある畑は、リリス村の花生み達が産み落とした種でなんとか作物が実っていたが、その畑さえも今はまるで砂漠のようだという。足りない食物を補っていた貿易も、王が変わったことで国同士の関係が悪化し、今は途絶えてしまったようだ。
「なんということだ……」
若くして国王となった男は苦々しい顔をしながら、枯れ果てた作物を踏みつける。
「もうどれくらい雨が降っていないのだろうか? それにこの瘦せこけた土地は一体どうしたというのだ? いくら種を撒いたところで芽さえもでないではないか。このままでは、この国が滅亡してしまう」
新国王は意を決したように畑に背を向けた。
「馬を用意して騎士団を招集しろ。これから出かける」
「は! かしこまりました」
近くにいる家来にそう命じた後、ゆっくりと歩き出したのだった。
◇◆◇◆
「城内にある畑の作物も、ついに全部枯れ果てたらしい」
「なんてことだ……。村長、村は大丈夫なのか? 何者かが作物を狙って攻めてくる、なんてことはないだろうか?」
ノアの家の前には先程から数人の村人たちが集まり、討論を繰り広げている。ノアはその会話にそっと聞き耳を立てた。
「大丈夫だ。そんな輩が攻めてきたときには、国王陛下と騎士団がこの村を守ってくれるという条約が結ばれている。だから心配することなんて何もない」
「そんな約束、ただの口約束だろう?」
「そんなことはない。なぜなら我々花生みは、今まで国のために一生懸命、城に作物や種を納めてきたんだ。そんな我々を国王陛下が裏切るはずなんてない」
必死に村人たちを宥める父親を見て、ノアは溜息を吐く。
――なんてお人好しなんだろう……。
そんな口約束を律義に守るのか? あの新しい国王陛下が? ノアは以前出会った、黒い髪の男のことを思い出しては、とても信頼する気になどなれずにいた。
そんなノアの予感は的中してしまう。
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