6 / 6

君を忘れぬ花言葉

「本当…ヒドい奴」 病院の屋上を囲う鉄格子に腰掛けて、冬の渇いた寒空を見上げて涙が零れる。 7年。 早いものだ。 春成は、あの日あの姿のまま、ベッドで眠っている。 7年、ほぼ毎日病院に通い詰めて思った。 「……春成、弱かったんだ」 僕はどこかで春成をどこまでも強い存在だと決めつけていた。 …きっと広くて大きなあの背中のせい。 こんなになってしまった春成。 もう離れた方が良い。 もう、彼の人生に関わらない方が良い。 できなかった。 どんな春成でもいい。春成なら何でもいい。 僕の傍の春成がいるなら、僕はそれだけで。 「春成…ブーゲンビリアって知ってる? 僕の大好きな花。知らなかったでしょ。だって言ってないもん、まだ。 ねえ春成。……僕待ってるから。ずっと、ずーっと。 春成が起きるまで、僕死ねないから。 春成が起きて、誰よりも最初に、名前呼んでもらいんだからね。 それまで嫌でも隣にいてあげる。 ねぇ春成……愛してるよ」 今は、彼に繋がれたあの機械が、……あの機械の立てる音が、春成の代わり。 春成が、心電図(心の声)を聞かせてくれてるから。

ともだちにシェアしよう!