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プロローグ①

 夜19時半。  ピンポーン、とすこぅしユーモラスな玄関のチャイムの音がなった。 「たっくん、また何かお買い物したの!?」と夕ご飯のお盆を持った母親がヒステリックな金切り声をあげる。 「るっせぇな! どけよ、ババア」  男は、ぶよぶよとした脂肪で覆われた巨体で、くたびれた初老の母親にわざとぶつかった。  すると、ババアはぎゃっと悲鳴をあげて、味噌汁をひっくり返した。  その様子を見て、スッと胸がすく思いがする。  男はいわゆる“こどおじニート“だった。  望んでもないのに、両親が性交をしたばかりに生まれてしまった可哀そうな存在。  世間は、子供部屋おじさんやらニートやらに風当たりが強いが、圧倒的な責任は親の方にあるだろう。  男は、生んだこどもの面倒は死ぬまで親が見るべきだという考えを常に持っていた。 「あのー……早くしてくださいよお! 次が控えてんですからぁ!」  配達員の青年はひどく横暴で、明らかに子供部屋おじさんでニートの男を見下していた。  正直、関わるのも面倒臭いし、若い配達員の男に力で敵うとも思えない。  さっさと荷物を受け取ることにした。  どうせ、気まぐれでAmazonで頼んだオナホかなんかだろう。 「……たく、こんなでかい荷物……」  配達員が毒づく。  まるで、ラブドール一体でも入っているような大きな段ボール箱だった。  何かの懸賞が当たったのだろうか。  配達先は――美少年カタログ、と書いてあった。  男はあっと声をあげた。 「重いんだから早く受け取ってくださいよお!」 「……適当に、」  適当に置いてほしい、という意味だ。 若い青年に尻込みして、もごもごとした話し方になってしまう。 (肉体労働にしかつけない低学歴の癖に……威張ってんじゃねえぞ)  ちっと配達員は舌打ちをすると、乱暴に段ボール箱を玄関に置いた。    がごん、と何か嫌な音がした。  小さい呻き声。 ……まさかな。  男は、巨大な段ボール箱を抱えるとふぅふぅ言いながら運んだ。 (まさか、あのサイト、本物だったのか?)  信じられない気持ちと微かな期待。  あのサイトがデマでないとしたら男は世界で一番幸運な人物かもしれない。

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