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「……」
「……」
2人の間に流れる、石のように重い空気。
黙りこくって、はや数刻。
言葉は一切交えていないが、2人の考えていることはほぼ同じだった。
「ルカ」
「リウ」
同じタイミングで、互いの名を呼ぶ。
一瞬、間が空くが、また同時に笑いだす。
たった1人の、愛しい人の名前を呼んだ。
「ルカ」
「リウ」
友好関係にあったはずの、リウとルカの両国。
それが崩れたのは、つい2週間前。
きっかけは、とてもささいなこと。
そんなことで、と誰もが思ってしまうような、そんなこと。
だが両国王の怒りは日に増すばかりだった。
1日前、リウは国王より、ルカは女王より、とある命が出された。
「ルーラには超精鋭の密偵軍団がいる。そいつらを1人残らず始末しろ」
「向こうの国には国王お抱えの極秘暗殺集団がある。あの国はそれを潰せば終いだ。…潰せ」
お互いが、お互いを殺す命令だった。
納得なんて、できるわけなかった。
こんなに愛しているのに。
どうして。
また自分の手の中には何も残らなくなるの。
どうして、なんで。
「ルカ」
「ねぇリウ。俺はやっぱり幸せになってはいけないんだ」
「…ルカ。聞け」
「なんだって神様は俺から何でも取り上げるんだろう」
「ルカ」
「もう、もう俺は………っ!!」
「…っルカ!!」
「………な、に」
「そんなことない。そんなこと言うな。お前はそうじゃなかったかもしれないが、少なくとも俺は。………俺は幸せだった。お前と過ごした期間全てが」
「………___っ。俺だって、俺だって幸せだった!! 生きてきたなかで1番!! 俺にはリウだけだった!!! ……なのに、なのに何で……!」
「何で神様は俺から何でも奪っていくの!!」
こうなる、運命だったのかもしれない。
こうなるしかなかったのかもしれない。
唯一の幸せと思えたそれすらも、なくなっていく。
愛する人を殺すなんて、俺には____。
「……残る。残るよ、ルカ」
「…え? 」
「俺たちが過ごしてきたことが、証拠だ」
口に感じた、塩っぽさで、初めて自分が泣いていることに気がついた。
……いつぶりだろう。もうずっと泣いていなかったから、涙が溢れて止まらない。
「…………最後には、お前の笑った顔が見たいよ、ルカ」
それぞれが作戦に旅立つ朝。2人は、笑っていた。
「ルカ」
「リウ」
「愛してる」
「うん、俺も」
「また」
「きっと」
「「いつか、どこかで必ず」」
最後の優しいキスを、愛しい人の唇に。
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