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「おいルカァ~。お前、起きなくて大丈夫か?」 「………っ!!」 今宵は赤の月と青の月、2つの月が満月になる半年に1回の双子月(ふたごづき)。その夜の男は、酷く性に貪欲になると聞く。 そのせいかどうかは知らないが、昨晩は手酷く虐め抜かれたお陰でこのザマである。 「ルカ、明日の任務早ぇから夜中に出るって言ってたろ」 「うるさい! 誰のせいだと……!」 「はぁ~いはい。俺ね、俺のせい」 「くそっ、だから今夜はなしとあれほどいったのに…!」 「お前も善がり狂ってたじゃんかよ~」 「黙れっ!」 いつかの言葉通り、リウは上手かった。 今まで経験した中でも、断トツと言っていいほどに。 気づけば、こんな関係になってもう半年を越える。……ただ、今と半年前で決定的に変わったことがある。 「気を付けてこいよ」 「…あぁ……」 「無事でな」 額に1つ、キスを落とされる。 「……行ってくる」 決定的に変わったこと。 それは自分とリウの間に、愛が生まれたこと。 お互い言葉にはしていない。 でもはっきりとわかる。 人を愛し、愛されること。 間違いなく、今の自分とリウは、その関係にある。 お互いに普通ではない仕事柄。 片や大国ルーラの密偵で狙撃手(スナイパー)。 片や国王直属機関≪王の鎌≫(シークレット・チェス)の長官。 仕事が重なればめったに会うことはできない。 それでも、じっくりと重ねてきた時間の中で、互いが互いを求め、必要とし、支え合う仲になった確信が、ルカの中にはあった。 少なくとも、この時はまだ「幸せ」という形の中にリウとルカはあった。 大きく歪むこの先の未来を、まだ2人は知る由もない。

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