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リウとの初めての出会いは、自分の犯した、初めてのミスからだった。 「面倒なことに巻き込まれたな…。どこか一旦隠れられる場所は………」 元々は高貴な家の生まれだった。しかし、父親の仕事での不正が発覚。失脚を余儀なくされ、そのまま流れるように底辺まで落ちた。 ……没落貴族。 そんなレッテルを貼られた自身の今までは、まるでお涙頂戴と言っているかのように哀れで、惨め。 その日の食べ物にすらたどり着けず、家なんて呼べるものはもちろんない。 妹がいた。 ただ既に他界した母と同じで酷く病弱だった。「貴族」と呼ばれていた頃はまだ病状もよかった。 だが、衛生的にも治安的にも悪い所にずっといれば、身体は弱まる一方。 「お兄さま、………おく、すり」 そんな代物、ここにはない。まず金がない。 一番手っ取り早く稼げること。 男に、股を開くこと。 父は逃げ、母もいない。 今では使用人よりも低い地位。誰もこの兄妹に手を貸さない。 何度目かわからない。両の手で数えられなくなる頃には数えるのをやめた身売り。 身を売って稼いだ金で買った薬を与えた。しかし妹はあっけなく死んだ。 それでも、身売りはやめなかった。 否、やめられなかった。 少し……少しだけ痛いのと、気持ち悪いのを我慢すれば食べ物にありつける。布団に入れる時もある。 何より、上手い人に当たれば死ぬような快楽が得られる。 まるで中毒。 身体が疼けばそこらの男より良いものを身に付けている男に声をかける。 「ねぇ、………僕を買わない……?」 そうやって、生きてきた。 「おい、そこで何してる」 幼い頃の記憶にふけっていると、突然声をかけられた。 ………まさか、自分に? そんなわけ。だってここは、自分がいま隠れている場所で……。 「見つかる訳ねえってか? おいおい甘いんじゃないのか? 隣国の密偵兼狙撃主(スナイパー)さんよ」 振り返る。そこには自分よりも背の高い褐色肌の男。フードを深く被っていて、表情はよくわかるない。 ……ただ、口元は緩やかに弧を描いている。 「…誰だ」 「これはこれは失礼しました。(わたくし)、この国の国王直属機関の暗殺集団≪王の鎌≫(シークレット・チェス)部隊総括官リウ・ヤノーシュと申します」 別段驚きはしない。こちらはもうバレているのだ。 先ほどやらかしたミス……それは標的とはまったく関係のない民間人を銃で撃ってしまったこと。 恐らく、今目の前にいるコイツは、そんなミスをやらかした自分を始末するためにここにいる。どうやって時間を稼ぐか…。 「………ッチ。……何が望みだ」 金か身に付けている武具一式、……もしくは、命。 「名前を教えろ」 「……っは」 「聞こえなかったか? 名前だよ、お前さんの」 頭、呆けてるのか。 そんなこと、教えるわけが…。 「な? 良いだろべっぴんさんよ……俺、上手いぜ?」 「__っ!」 音もなく、一瞬にして、距離を詰められた。 奴の右手は自分の顔に、逆の手は腰に添えられている。 …避ける、ことができなかった。しかも今の言葉。 だが、どうしてなぜか。 この時のことばっかりは、今となってもまったくわからない。 なぜ、初対面である正体不明のこの男に、自分の名前を告げたのか。 ____まったく、わからない。 「ルカ……。ルカ・ルシフェード・モンテリア」

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