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第1章 大罪人と救世主 第5話*

 浴室は、温泉旅館の大浴場みたいに広い。構造は、僕が馴染んできた世界のものと同じだ。ここだけ見れば、元の世界にいるんじゃないかと錯覚する。外に面した大きな窓は、下半分は曇りガラス。上の部分から、空がよく見える。夜は綺麗だろうな。洗い場には、椅子が二つ。 「レオ、洗ってやるからそこへ座りなさい」 「え。それも必要ですか」 「さっぱりしてから入りたいだろう?」 「それはそうなんですけど」  言われるままに腰かけたものの、優しい手つきが恥ずかしい。何で異世界で王様に洗ってもらってるんだろう。多分、こうしてると触れ合っていられるからだよな。そこに、昨日からの彼の行動の意味がある気がする。クスッと笑ったのが聞こえた。 「おもしろい子だ」 「子って。一応、僕のいた世界では成人してます」 「いくつだ」 「十九」 「それなら、ここでも大人だ」  僕の肩はもう泡だらけだ。背中もすごいことになっているだろう。お腹の方に彼の手がまわってきた。びくっと震えてしまう。 「おとなしくしていなさい」 「無茶言わないでくださ、い……んっ」  胸の突起を指が掠める。たった一晩で、そこは気持ちいいんだと覚えてしまった。彼は僕を後ろから抱きしめ、密着してきた。きっとお腹が泡だらけになっている。 「朝からこんなにして」 「誰の、せいですか……」  前に伸びてきた手が、待ち焦がれるようにむっくりと起きたものを包み込む。泡をまとわせているだけなのに、彼の言葉と色っぽい声でどんどん硬くなる。慈しむような仕草に、心が彼に向って傾いていく。僕って単純だったんだなあ……気持ちいい……。 「足も洗おうな。立てるか?」 「力、抜けてきてますけど」 「では、座る場所を変えようか」  彼は僕の泡を綺麗に流し、自分にたくさんついたのも流した。お尻を泡が流れていく感触にドキッとした。滑らないように支えてもらって浴槽まで行き、縁に腰かけた。彼は「ちょうどいい」と呟きながら、そばのボディソープのボトルを引き寄せ、たっぷりと手に取った。足の指を、一本一本ほぐすように泡で包まれて、ますます力が抜けていく。ふくらはぎから、膝の裏、太腿の内側へと、僕の反応を見ながら泡を広げていく。恥ずかしいやら気持ちいいやらで、頭がボーっとしてくる。だって、彼の目の前に僕のアレが! おねだりするように涙を流している。 「我ながら呆れているが……こうも我慢が利かなくなるとはな」 「え? あ、あっ……」  足の付け根を指でなぞっていたと思ったら、パクッと僕のモノを口におさめた。な、に……熱い……。舌が這い回って……指より容赦がない。攻め立てられて、背を反らせた。このままじゃ……。 「ラトゥリオさ、ま……」  促すように太腿を撫でられ、強く吸われて、生まれて初めて人の口の中に出した。 「はぁ……はぁ」  肩で息をして、ハッと気付いた。眼下に白いものが散った様子はなく、あるのは唇をぺろりと舐めている美しい彼の顔のみ。 「あの……まさか」 「そんなに困った顔をするな。お前の言葉で言うなら、これも『必要』なことだ」 「全然意味が分からないです……」  生気が増したかのように輝くばかりの王様が、僕を見上げている。アレが体にいいなんて聞いたことないぞ。 「のぼせないように、ほら、水を飲んで」  至れり尽くせりの風呂場には、水飲み用のコップまで用意されている。きりっと冷えた水は、火照った体に心地いい。彼も飲んだ。喉仏が動いてる。セクシーだなあ……。 「ん?」 「あ、いや、水がおいしいなって」  見とれていたのはバレバレだろうけど。水がおいしいのも本当。僕はミネラルウォーターでなくても喉が渇けば普通に水を飲む方だけど、これは特においしく感じられた。小学校の林間学校で、朝、外の水のあまりの冷たさに驚いたのを思い出す。景色からみて、ここは高い所にあるようだしなあ。  ひと口、もうひと口、と味わう僕を、彼は嬉しそうに見ている。単に役目だから王様をやっているんじゃなくて、いろんなものをとても大事に思っている人なんだな、と感じた。  その後、ラトゥリオ様に後ろから抱えられる格好で湯舟に浸かった。ゆったりと、体を預ける。人の心も自然も豊かで、見るからに有能な王様がいて、水がおいしい国。何不自由なく、という言葉がぴったりなのに、何かの危機にさらされ、彼は必死で対処しようとしている。僕はそれをお手伝いしているらしい。役に立っているのかどうか今いち分からないけど、昨日のような地震はない。  ちゃぷ、とお湯が揺れる。お腹の上で組まれた彼の手に、僕の手を重ねてみた。抱きしめる力が強まった。もっと、僕から触れてみてもいいのかな。 「ラトゥリオ様、あの」 「何だ」 「体の向き、変えてもいいですか」 「ああ」  体を反転させ、長い足に挟まれる形で向き合った。 「俺の足をまたいで……そうだ」  遠慮と、好奇心のようなものと……単なる欲なのか、それともほかのものなのか。迷う僕の背中を押すように、密着させる。触れること、求めることを許されていると思えた。唇を寄せると、目を閉じて迎えてくれた。甘い疼きが体中に広がっていく。大きな手が背を撫でる。自然と触れ合うそれぞれの中心を擦り合わせ、口づけを深めていく。   彼の手が、背中から腰へと下りてきた。双丘を丸く愛撫され、それから……間に、指が入ってきた。 「んっ……」  まだ教えてもらっていない場所。周囲を、円を描くように指が動いて、鼓動が速くなっていく。きゅっと窄まったところをやんわりと押され、お腹の奥がキュンとなった。 「ラトゥリオ様……」  唇を離して彼を見つめる僕の目は、潤んでいるだろう。 「ここは、どんな感じがする?」 「もっとあなたに教えてほしい、って……感じます」  正直に答えた。 「いい子だ」  お湯で弛緩した体。おまけに、僕は彼の手にとろかされることを学習してしまった。何もかも初めてだけど、彼ならいい。彼がいい。 「いい子だ、レオ……」  王の声が震えている。指先も、少し。やわやわとほぐされていく感覚。異世界に来た理由があるとしたら、この人と出会うため。そう思っても、いいですか……。

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