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第5章 家族 第9話

 僕が転移してきた日、アントス様は宝箱を埋めた木の下にいた。年に何度か、視察の途中で立ち寄るお城。宝箱がまだそこにあることを、掘り返して確かめずにはいられなかったという。 「アリシアに悪いと思って、王宮に持ち帰ることはしなかったけど、やってることは同じだよね」  その日も、さあ掘ってみるかと深呼吸をしたところで、異変が起こった。空が裂け、海が荒れた。そこまでは十五年前と同様だった。違ったのは、七色の光が地下から差し、宝箱が飛び出してきたこと。蓋が開き、中の貝殻が一斉に、空の裂け目に向かっていった。一枚一枚が、七色に輝いていた。光は裂け目を包むように広がった。 「時間にすれば、十秒もなかっただろう。僕は手の中に落ちてきた箱を持って呆然としていた。貝殻は、七色の小さな玉になって落ちてきた。その時には、裂け目はあらかた塞がっていたよ。海も静まっていた。ほかの場所では引き続き異変が確認されたから、一部にだけ作用したのだと分かった。世界全体を守ってくれたのは、間違いなくレオだ。それと、君たち二人の想いだね。僕たちのこれは……ささやかな罪滅ぼしというところかな」  アントス様は、持ってきた宝箱を開け、中を見せてくれた。真珠のような玉がぎっしり詰まり、七色に煌めいている。一番上に置かれているのは、薄紅色のほっそりとした巻貝と、青みがかった銀色の、丸っこい巻貝だった。 「僕たちが最初に一緒に入れた、この二つだけは形が残ってる。ほかのは、この粒が本当の姿だったのかもしれないね。貝殻に変化して、来たるべき時を待っていたのかな。『真実』の名を持つうちのお姫様は、想いはどんな魔力も超えてみせることがある、って言っているよ」  ラトゥリオ様がもらったのは、細長い方の貝だという。彼は震える指で思い出を手に取り、いとおしげに撫でてから箱へ戻した。 「引き続き、南で保管してくれるか。今後も役立つことがあるかもしれん」 「そうさせてもらうよ」 「魔力を超える、か。アリシアには敵わんな」 「まったくだ。僕たちは身をもって教えられたからね。そうだろう、レオ?」 「え、あの」  赤くなって口ごもる僕に、黒の王と白の王は優しく頷いた。

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