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第5章 家族 第10話(最終話)

 その後、宝箱はアリシア様が管理している。イレミオの兄に当たる南の王子様は、母が貝殻を磨きながら、「ありがとう」「ほんと、手のかかる人たちね」と温かな声で呟くのを聞いたそうだ。この前来た時、イレミオに「手のかかる人たちって、誰のことだろうな」と話していた。  僕はその時の様子を思い出し、微笑んだ。「んー、レオとラトゥリオ様!」って答えるの、聞いてたんだぞ。  丸いほっぺたをつつくと、王が訝し気に僕を見た。 「どうした?」 「ふふ、内緒です」 「ならば……今夜もお仕置きだな」 「お手柔らかに」  ドキドキしながら、腰に手を回し、寄り添って歩く。森の出口だ。 「おしおきってなーに?」 「うわ、聞いてたのかイレミオ」 「うん。ね、なーに?」 「うぅ……大人になったら分かるかもしれない」 「かもしれないじゃやだー」 「落ちるぞ、イレミオ。しっかり掴まっていなさい」  坊やは頬をふくらませた。 「だってー」  舌ったらずなのは眠い証拠だ。 「ぼく……はやくおとなに……なる」  またうとうとして、黒いマントを握り締めた。 「急がずともよい。ゆっくり大人になれ」  寝顔に語りかけるラトゥリオ様は、父親の顔。見とれる僕は、いまだに新婚気分だ。  愛が溢れる愛しい人に、受け止めきれないほどの想いをあげたい。あなたの想いも、溺れたって全部受け止める。僕たちの坊やにも、一歩ずつ大人になって、恋から生まれる愛を知ってほしい。想いは魔力を超える。それはきっと、どんな絶望からも君を救ってくれるんだ。 「ラトゥリオ様」 「ん?」 「愛しています」  背伸びして、チュッと頬にキスをした。お返しの濃厚なやつを人前でされないうちに、王宮の門へと走り出す。 「ただいま!」 「お帰りなさいませ。レオ様、また陛下と追いかけっこですか」 「うん。ラトゥリオ様、早くー」  不意打ちをされて憮然としていた王様は、気を取り直してイレミオを抱え直すと、ニヤッと笑って歩き出した。今夜のお仕置きはいつもの倍かもしれない。長い髪とマントが、意志を持っているかのように揺れる。ゾクゾクするほどかっこよくて、際限なく甘やかしたいほど、かわいい。いとおしい。  僕にとっては最初で最後の、たったひとつの恋。ふたつの世界、ふたつの家族。守り抜くんだ、この先何が起ころうとも。  前庭の中ほどで追いついてきた大きな手が、僕をつかまえて引き寄せた。 「うわっ」  バランスを崩したところへ、唇が迫る。さらりと僕を包む髪のカーテン。この髪に閉じ込められて、異世界は僕の生きる場所となった。  甘い口づけを交わして微笑む僕たちを、目を覚ました坊やの大きな瞳が見つめていた。

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