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「水瀬さん入りまーす!」 煌々と照明のたかれたスタジオに、スタッフの大きな声が通る。 機材の手入れをしていた者、衣装や化粧道具のチェックをしていた者、その場にいた全ての視線が、スタジオの入り口に集まる。 「どうも、水瀬伊束(みなせ いつか)です。本日は宜しくお願いします」 がっしりとした筋肉質な身体から、スラリと伸びた長い手足、およそ日本人のものとは思えない目鼻立ちに、花緑青(はなろくしょう)の瞳。一度見てしまえば深く印象に残って、まさにこの仕事をするために生まれてきたかのような、そんな人。 ………のマネージャーをしているのがいたって普通の純日本人、黒渕佐都(くろぶち さと)。 姉が同じ事務所で敏腕マネとして働いている事もあり、そのコネ(?)で今いる事務所に入ってきた。 「黒渕君、今回も水瀬の説得、感謝するわ!」 「社長…! おはようございます。…いえ、そんな。僕にはできることが少ないですから…」 現在、水瀬は事務所の中でも1、2を争う稼ぎ頭。今回の撮影のような大きな仕事には、稀に社長までもが同伴する。………と言っても、多忙なので最初の挨拶で帰ってしまうのがほとんどなのだが。 「何言ってるの! 貴方以外の口からは絶対に頷かなかったあの水瀬が君が言った途端に首を縦に振ったんですもの、そりゃ感謝するわ!!」 「…はは、ありがとうございます」 背中をバシバシ叩かれながら社長に感謝をされる。だが本当に今回、自分はこの仕事の話を、水瀬に振っただけなのだ。 ………そもそも、なんで自分以外の人間から受けたこの話に、水瀬が承諾しなかったのかが不思議でならない。

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