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24. エル、煽る※R-18
寝室の扉が、乱暴に開かれる。ベッドへ倒れ込んで、僕たちは裸になった。
フェリの装備を外してやる。指先が震えたけれど、バレてはいないだろう。ずっと興奮して呼吸が荒かったし、僕の肌に吸い付いていたから。
大きな掌が、恐る恐る僕を抱きしめる。その手が腰へと降りて、お尻を触った。
「あ……?」
しかめられた顔を、おぼえたてのキスで黙らせる。ズボンのウェストをほどいて、足から抜いた。
いきなりあらわになった僕の局部に、フェリの顔から、表情がすとんと抜け落ちた。
「すぐいれられるよ」
緊張で声が掠れる。出しっぱなしだった香油の瓶を取って、ゆらした。
フェリの顔がみるみる赤くなる。歯を食いしばって、目じりには涙まで浮かんでいた。かわいいことだ。
「お前、他の男と……!」
勘違いされてもよかった。とにかく僕にとっては、おそらく童貞だろうフェリの、はじめてを奪うことが大事だったから。
悪い男としてでもいい。最低な大人としてでもいい。フェリにずっと僕を覚えていてほしい。
たとえこれまでの思い出が全部、この行為で汚されたって、それが欲しい。
僕はフェリの手をとって、後ろへと触れさせた。香油でぐじゅぐじゅに潤んだそこに、フェリの中指が沈む。
「じゃあ、どうするの?」
挑発するように舌を出した。フェリは泣きそうな顔で、僕の唇に噛みつく。
最悪のセックスだ。心はどんどん冷えていくのに、身体は熱くなる。フェリの顔は真っ赤で、悔しそうに歯を食いしばって、僕の後ろに指をいれた。
「あ、……」
変な声が漏れる。身体の内側で感じる他人の体温に、産毛が逆立った。フェリの身体を仰向けに転がして、その上に乗る。騎乗位の格好だ。
僕の身体、変じゃないかな。引退してから余計な肉がついたし、筋肉も落ちた。きっと興奮を煽れるような、美しい身体ではない。
だけどフェリは、僕の身体へ指を伸ばした。後ろにフェリの勃起したものがあたる。
「たってる」
舌が転んで、発音が拙くなった。上体を起こしたフェリが「悪いか」と悪態をつく。
「お前が誘ったんだろうが」
指が、ナカへと押し込まれた。一息に突き立てられて、息が詰まる。
フェリが僕に触れている。僕で興奮している。
それだけで腹の底から、こんこんと熱があふれた。僕のものも頭をもたげて、フェリと僕の腹の間で揺れる。
「ふふ、ふ」
笑う僕の口を塞ぐように、フェリがキスをした。もうどうにでもなってくれよ。
僕が悪い。僕が、僕たちの関係を壊す。
「もっと」
おねだりをすれば、求めた以上に与えられる。拙い指使いで身体中を撫でられて、ずっと感じていたさみしさが噴き出した。
たぶん、自分でも蓋をしていたんだろう。フェリの熱い指先が嬉しい。ずっとこれがいい。後ろをいじるフェリの手の甲に指を添えて、もっと奥へと誘う。
「ここ、すぐ……はいる、よ。ほら、やわらかい、でしょ?」
「いれない」
フェリは頑なに言って、僕のお腹の中を探った。
指が増やされたのか、ナカの広がる感覚がした。胎内に、圧迫感がある。
「ひ」
また、変な声が漏れた。我慢しようと唇を噛めば、「こら」とたしなめられる。
「いやか?」
首を横に振る。僕は腰を揺らして、「フェリは」と呟いた。そこから言葉に詰まって、黙り込む。
今更フェリに、いやかどうかなんて聞いて、どうするんだろう。
「エル」
熱く掠れた声が、耳元へと吹き込まれる。その吐息にすら感じて、腰が反った。
「きもちいいのか?」
その質問には、荒い呼吸で返事をする。フェリは僕を抱き寄せて、不器用な手つきでナカを責め立てた。
自分でいじる方がずっと気持ちいい。だけどフェリの愛撫だと思うと、僕の身体は、これまで以上にたかぶった。
「ん、ふ……、っん……あ、あ」
腰が揺れる。たくましい腹筋へ、僕の情けなく勃起したものを押し付けた。抱き着いて、ただ甘える。
何度かフェリの名前を呼んだ。肌に顔をくっつけると、血と汗のにおいがきつくにおう。だけど嫌じゃない。
フェリのにおいだ。舌を出して、舐めてみる。しょっぱい。五感全部でフェリを感じたくて、必死だ。
「ふぁ、……ん、ん、う……」
大人しくされるがままの身体にすがりつく。あたたかい熱で包み込まれて、気持ちいい。こんなときなのに、どこか安らかになる。
好きだ。ずっとこうしていたい。
フェリの身体へ、体重をかけた。目を閉じると、身体がぐるんとひっくり返る。
「う?」
目を開けると、天井があった。フェリが僕の顔をのぞきこんで、頬を撫でる。
その表情は、なんでか穏やかで、優しかった。
「お前。俺のことが、好きか?」
どうしてそんなことを聞くんだろう。僕の心臓が、胸を激しく叩く。フェリはおかしそうに笑った。久しぶりに、フェリの屈託のない笑みを見た。
それからすぐに、困ったように眉を曇らせる。
「泣くな」
頬を撫でられる。その濡れた感触に、僕は言葉も出なかった。
「ほんとだ。ないてる……」
「お前がびっくりして、どうするんだ」
どこまでも優しい声だった。フェリは僕を抱きしめて、深く息を吐く。たくましい身体に包まれて、食いしばっていたあごが緩んだ。だらしなく「なんで」と間抜けな声が漏れる。
フェリは、低く囁いた。
「うん、分かった。これは俺が悪い」
「フェリは、わるくないよ」
「俺が悪いんだよ、エル」
無意識に張り詰めていた緊張が、ゆるんで、ほどけていく。フェリは僕を抱きしめて、背中を叩いた。
「変に格好つけず、さっさと言っておけばよかったんだ。お前が好きだって」
僕の髪の毛を撫でる、大きな掌。そのまま耳たぶをいじって、彼は穏やかな声で言った。
「お前も、俺のことが、好きだろう?」
なんてことを言うんだろうか、こいつは。顔が熱い。胸が苦しくなって、僕はフェリの肩口に噛みついた。
「痛い。噛むな」
笑い混じりで制止されるだけだった。僕は「そうだよ」と、悔し紛れに吐き捨てる。
「だから何? 僕はもう、きみについていけない。腕はだいぶ落ちたし、前線には立てない」
「そうだな。だから、俺たちの間違いは、そこから来ている」
フェリは、僕の目じりを指の腹で拭った。懐かしむみたな、優しい手つきだ。
「俺もお前も、お互いに相棒だと思っていた。戦えない自分に、価値はないんだと思い込んだんだ」
「ちがうの……?」
「そんなわけないだろ」
フェリは「ばかだな」と呟いた。その声があんまり優しかったから、僕は彼のすねをつま先で軽く蹴った。
「……ごめんなさい」
僕のちいさな謝罪は、キスで受け止められた。しばらく、触れるだけのキスを繰り返す。
フェリの唇を食みながら、僕は考えた。
「そうか。僕たち、両思いなのか」
「さっき俺が言ったぞ」
「言ってない。僕が最初に言った」
子どもみたいな言い合いをしながら、僕は身体を起こす。フェリの上に乗っかって、耳元へ唇を寄せた。
「まだ黙っていたことがあるんだけど……聞きたい? 僕の貞操について」
「なんだ。言ってみろ」
あからさまに不機嫌な声色で、フェリが言う。だけどこれを聞いたらご機嫌になるんだろう、と思うと、おかしかった。
「僕ね、今日がはじめて。これまでずっとひとりで、からだを、いじってたんだ」
笑い混じりで囁く。フェリの呼吸が、比喩でなく止まった。おもしろい。
不格好になるけれど、腰を振った。どうせこんなんでも煽られてくれるんだろう。童貞だろうし。
「だから、はじめてのえっち、一緒にしよ……」
身体がまたひっくり返される。ベッドであおむけに転がった僕の上に、フェリが覆いかぶさった。
「煽りやがって……ッ」
手負いの獣みたいに気が立っている。僕はその獣へ、ためらわずに腕を伸ばした。
恐る恐る、股を開いて、すべてをさらけ出す。
声が上ずって、変に裏返った。
「きて」
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