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#01 残業中に突然のバックハグ!「熱あるんじゃないか?」〜スパダリ課長の看病と言う名お持ち帰り〜
第一章 スパダリ課長と新入社員のイチャラブ 〜お持ち帰り先は最上階ペントハウス〜
突然の通り雨——ゲリラ豪雨。それは、これから「何か」が起こることを告げる最強の舞台装置であり、逃れられない様式美——。
深夜のミンチン・コーポレーション超高層フロア。総合商社であるこのオフィスの窓に激しい雨音が打ち付ける中、新入社員のロッティーは受話器を置き、デスクに突っ伏して震えていた。
「だめだ。ここもまた、フォース・マジュールか……」
原因は、昨今の深刻な「ナフサ不足」のあおりだった。先輩のラビニアに無理やり押し付けられた大口顧客の案件だったが、原材料高騰による世界的な物流の「目詰まり」が直撃しており、新人のロッティーが方方に手を回したところで、その商材を確保できるはずもなかった。しかも雨に打たれたせいで高熱まで出ている。終電はとっくに逃し、この雨じゃタクシーも捕まらない。
(このままここで死ぬのかな……)
熱で視界がぼやけたその時、廊下から仕立ての良い革靴の足音が近づいてきた。
「こんな時間まで残業か。感心しないな、ロッティー」
振り返ると、そこにはロンドン支社の頂点に君臨する完璧なスパダリ課長、セーラが立っていた。細身のスリーピースを完璧に着こなした姿は、まさに絵に描いたようなエリート商社マン。
ロッティーが震える声で商材が確保できない絶望的な状況を告白すると、セーラは小さくため息をついた。
「しょうがねえな」
そう呟くと、セーラは背後からすっと腕を伸ばし、ロッティーを包み込むように覆いかぶさった。
まるで背後から抱きすくめられるような、完璧な——バックハグの体勢。セーラの温かい体温がロッティーの背中にピタリと密着し、耳元で吐息を感じるほどの距離で、長い指が滑らかにキーボードを叩いていく。
セーラの淡いコロンの香りと、男の体温が濃密に絡みつく。ただ腕の中にすっぽりと収まっているだけで、ロッティーの身体は熱を帯び、下半身が急速に疼き始めた。
股間が熱く硬くなり、シャツの裾を押し上げるようにこんもりと主張しているのが自分でもはっきりとわかってしまう。
(……どうしよう、バレちゃう……っ)
心臓が激しく鳴り、息が浅くなる。セーラの胸に顔を埋めたまま、ロッティーは必死に腰を引こうとしたが、かえって密着を強めてしまい、ますます熱が昂ぶっていく。
パニックになりながら身を固くするロッティーをよそに、セーラは独自の特別なルートのシステムへアクセスし、見事に目詰まりを回避して、あっという間に不足分の商材を確保してしまった。
「これでよし、と。俺のルートを使ってやったんだ。高くつくぞ。これは貸しだからな、ロッティー」
わずか数分で絶望的な状況をひっくり返したセーラは、ロッティーの額に冷たい手のひらを当てた。
「……それにしても、ひどい熱じゃないか」
その低い声に、ロッティーの心臓が激しく跳ねる。
「もう仕事は終わったから、帰るぞ」
「でも……もう電車、終わっちゃったんで……」
「いいからついてこい」
半ば強引に腕を引かれ、連れてこられたのは地下駐車場。
そこには、鈍い銀色に輝くスポーツカーが佇んでいた。熱でぼんやりとしたロッティーの目が、一瞬で大きく見開かれる。
「えっ……これって、ポルシェじゃないですか……!」
まさか憧れのセーラ課長がこんな車に乗っているなんて。しかも今からこれに乗せてくれるんだ——。高熱のテンションも手伝って、ロッティーは思わず子供のように小さくはしゃぎ、車に向かってトトトッと駆け寄っていった。
そして、嬉しそうに助手席だと思い込んだ側のドアの前で待つ。そんなロッティーの後ろ姿を見て、セーラがフッと呆れたように笑った。
「おいおいロッティー、そっちは運転席(左側)なんだよ。お前が乗るのはこっちだ」
セーラは戸惑うロッティーを回り込み、右側の助手席のドアノブを引いた。
「カチャッ」という精密な機械音が地下駐車場に静かに響き、スマートにエスコートされる。
「あ、ありがとうございます……」
促されるまま、身体が包み込まれるようなバケットシートに沈み込むと、セーラがドアを外から「バンッ」と重厚な音を立てて閉め、滑り込むように運転席へと乗り込んできた。
再び「バンッ」とドアが閉まると、車内は一瞬にして静寂に包まれた。狭く、濃密なポルシェの密室空間に、二人きりで閉じ込められたような錯覚。あまりの静けさに、自分のバクバクと高鳴っている鼓動の音がセーラに聞こえてしまうんじゃないかと焦り、その緊張でさらに鼓動が跳ね上がっていく。
だが次の瞬間、セーラがキーを回すと、轟然たるエキゾーストノートが鳴り響いた。地を這うような大きなエンジン音が、ロッティーの情けない鼓動の音をすっかり掻き消してくれる。
エンジンが低く唸りを上げる中、ロッティーは興奮冷めやらぬまま訊ねる。
「あの……うちの会社って、課長ともなるとこんな凄い車に乗れちゃうんですね。やっぱりお給料、もの凄くいいんですよね……っ」
キラキラした目で未来への希望を語るロッティに、セーラはハンドルを握りながら苦笑した。
「新人くんの夢を壊すようで悪いけどな、そう簡単には給料は上がらないぞ」
「えっ、じゃあどうして……」
「……さあな。でも俺の部下なんだから可能性はあるかもな」
そう言ってポルシェが会社の地下駐車場のゲートを抜け、ロンドンの街灯りがフロントガラスに流れ込んできたところで、ロッティーはおずおずと口を開いた。
「あの、言いにくいんですけど……僕ん家、イーストエンドの方なんです……」
ロンドンの中でもかなり庶民的で、このオフィス街からは遠く離れたエリアだ。それを聞いたセーラは、小さく眉をひそめた。
「……面倒くさいな。結構遠いじゃないか」
「えっ」
「もう今日は遅いから、お前、うちに泊まって行け」
「えっ!? でもそんな……っ」
「明日、朝会社まで送ってやるから。それにお前、熱出てるじゃないか……。いいから今日は言うこと聞け」
反論を許さない、有無を言わさぬスパダリの決断。
──完璧なお持ち帰りだった。
セーラのペントハウスは、テムズ川を見下ろす最上階にあった。足を踏み入れた瞬間、その圧倒的な広さと夜景にロッティーは目を丸くする。
「すごい……うちの会社って、課長ともなるとこんなとこ住めちゃうぐらいお給料もらえるんですか?」
呆然と呟くロッティーに、セーラは苦笑しながらネクタイを緩めた。
「なわけないだろう。あんまり恥ずかしくて言いたくないけど、ちょっとばかり親が太くてな」
セーラはロッティーの前に立つと、汗ばんだ前髪をそっと指で透き、今度は熱を測るように、ロッティーの額と自分の額を「コッツン」と優しく合わせた。
「……やっぱりかなり熱があるな」
至近距離で見つめられるセーラの瞳に、ロッティーは息が止まりそうになる。
「今日はとりあえず、あのゲストルームで寝ていけ。着替えはこれを使え」
手渡されたのは、セーラが普段着ているという、少し大きすぎるシルクのシャツだった。セーラの甘い香りが染みついたシャツに着替え、ロッティーがベッドに横たわっていると、しばらくして「コンコンコン」と静かにドアがノックされた。
「おい、大丈夫か?」
セーラが再び部屋に入ってくる。その手には水の入ったグラスがあった。
「解熱剤、切らしててな。ちょっと下まで行って、買ってくる。少しおとなしくしてろ」
トップエリートの課長が、自分のために夜中のロンドンへ薬を買いに行ってくれる。その事実に胸が熱くなっていると、しばらくしてセーラが戻ってきた。
「はい、薬。……だけど、空っ腹で薬飲むのは良くないからな。夕飯まだだったろ? 何か少しぐらい食べられるか?」
セーラは手際よく、キッチンで温かなチキンブロス とハーブのリゾット を仕上げて運んできた。
「食べられるか?」
スプーンで優しく口元に運ばれる温かなスープ。完璧すぎる優しさに、ロッティーの目から涙がこぼれた。
「どうして……僕なんかに、ここまで……」
潤んだ目でセーラのシャツの袖をぎゅっと掴むロッティーに、セーラはふっと微笑み、その頭を優しく撫でた。
「いいから、薬を飲んで早く寝ろ」
エッチなことは何もせず、ただ徹底的に甘やかし、看病してくれるスパダリの圧倒的な余裕。ロッティーは薬が効いてくるのを感じながら、幸福感に包まれてそのまま深い眠りに落ちていった。
翌朝、ロッティーが目を覚ますと、部屋の外からトントントンと小気味良い音が聞こえてきた。
音のする方へ誘われるように部屋を出ていくと、そこにはまさかのエプロン姿でキッチンに立つセーラが、朝食を用意してくれていた。淹れたてのコーヒーの香りと、トースト、そして綺麗なハムエッグ。
「おぅ。もう大丈夫なのか?」
「はい! おかげさまで、すっかり……!」
二人で並んで美味しい朝食を食べ、ロッティーの体調が戻ったのを確認すると、セーラは約束通りポルシェでロッティーを会社まで送り届けた。
体は治ったものの、昨夜の甘い看病を思い出して頬を桜色に染め、どこか夢見心地で足取りがおぼつかないロッティー。セーラはそんなロッティーの腰に、ごく自然に手を回している。独占欲丸出しの視線は隠そうともしない。
その二人を、遠くから射殺すような目で見つめる人物がいた。
——かつてセーラに同じようにお持ち帰りされ、夜毎抱かれていたラビニアだ。
何もないはずがない。二人の間に漂う、他人が踏み込めない甘ったるい空気感と、ロッティーから溢れ出るような幸福なオーラ。ラビニアの鋭い直感が、全てを察知した。
(……あいつ、絶対に潰してやる)
嫉妬と屈辱でプライドをズタズタにされたラビニアの手の中で、握りしめたスマホの画面が、ミシッと嫌な音を立てた。
こうして、ロッティーに対する陰湿ないじめの幕が、静かに開いたのだった。
つづく
—
【次回予告】
残業を終えてセーラのペントハウスで極上の看病を受けたロッティー。しかし、甘い余韻もつかの間、社内の親睦パーティーで待ち受けていたのは逃れられない非情な罠だった——。
次回
#02 王様ゲームで強制キス&顎クイ!〜スパダリ課長のペントハウスへまたお持ち帰り〜
「命令だからな」
お楽しみに!
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