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#02 王様ゲームで強制キス&顎クイ!〜スパダリ課長のペントハウスへまたお持ち帰り〜
金曜日の夜。ロンドン市内の高級ホテルで開催された、ミンチン・コーポレーションの四半期社内親睦パーティー。
大宴会場が華やかな熱気とシャンパンの泡に包まれる中、特設ステージのマイクが甲高くハウリングした。
「さあさあ皆様、本日のビンゴ大会、いよいよ目玉となる特賞の発表です! こちら、リテール部門の強力なコネで特別にご用意した……今季『ハロッズ』限定の『プレミアム・ブライス』です!」
司会が声を張り上げると、会場の社員たちから大きなどよめきが起こった。
「すでに市場価格が高騰している超レアものです! ハロッズ・グリーンの特製ボックス入り! 残念ながらこちら、数に限りがございます……。激レアアイテムを手にする幸運な方は果たして誰でしょうか!」
「リーチ!」「絶対欲しい!」と会場がヒートアップする中、会場の隅で大人しくオレンジジュースを飲んでいたロッティーの手元のカードが、ひっそりと「ビンゴ」の列を完成させていた。
「えっ……あの、ビンゴ、です……」
おずおずと手を挙げたロッティーに、周囲の視線が一斉に突き刺さる。
まさかの新入社員の男の子が特賞をかっさらったことで、会場は一瞬ざわついたが、当のロッティーは渡されたハロッズ・グリーンの重厚な特製ボックスを抱え、ただ戸惑っていた。
「男の僕が、こんな可愛い人形を貰ってもいいのかな……」
透明な窓から覗くブライス人形の、物憂げで吸い込まれそうな大きな瞳に、ロッティーは不思議と見入ってしまった。
だが、そんな幸運な新人を、遠くから射殺すような目で見つめる男たちがいた。
「……チッ、なんだあの新人。セーラの依怙贔屓 だけじゃ飽き足らず、特賞までかっさらうとはな」
ラビニアは不快げにシャンパングラスを揺らすと、取り巻きのジェシーに目配せをした。
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【ラビニア・ハーバート】
ミンチン・コーポレーション所属。セーラの部下であり、夜毎抱かれていた元恋人。プライドが非常に高くサディスティックな性格で、セーラのお気に入りになった新人のロッティーを激しく嫉妬している。
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「おいジェシー。あの生意気な新人を、少しばかり『可愛がって』やろうぜ」
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【ジェシー】
ラビニアの腰巾着であり、常にその後ろを離れない金魚のフン。内面から滲み出る下卑た欲望と粘着質な言動のモブ。ロッティーにとっては生理的に最も苦手なタイプ。
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ラビニアたちはロッティーを囲むと、「新人くん、ツイてるねぇ! ほら、お祝いだ、飲め!」と、度数の高いカクテルを次々と強引に飲ませ始めた。断りきれないロッティーは、あっという間に顔を真っ赤にしてフラフラになってしまう。
そして二次会へと流れ込む頃、ラビニアの主導で「王様ゲーム」が始まった。
「さあ、ルールは簡単。引いたカードの命令に絶対服従! 拒否したら罰ゲームだよ、新人くん♡」
もちろん、クジには事前に細工がしてある。
「よし、オレ が王様だ」
くじ引きの棒を掲げ、ラビニアが意地悪く唇を歪めた。彼の視線の先には、すっかり酔いが回って目がトロンとしているロッティーがいる。
「じゃあ、1番と3番。男同士で、みんなが見てて赤面するくらい濃厚なディープキスをしろ」
その過激な命令に、会場が「おぉーっ!?」と下世話な歓声を上げる。
ロッティーが震える手で自分のクジを見ると、そこには「1」の数字が書かれていた。
「え……ぼ、僕……1番……?」
怯えるロッティーを見て、ラビニアは内心でほくそ笑んだ。
(さあ、ジェシー。お前が3番だろ。あの新人に皆の前で辱めてやれ)
「3番は誰だ?」とラビニアがジェシーの方を見ると、ジェシーは青ざめた顔で首を振った。
「おい、ラビニア……俺、3番なんて持ってないぞ。いつの間にか手元から消えてて……」
「はぁ!?」
——と、その時だった。
「——俺だ」
低く艶やかな声と共に、スッと「3」のクジが掲げられた。
騒がしかった周囲の空気が、一瞬にして静まる。そこに立っていたのは、いつの間にか輪に加わっていた完璧なスパダリ、セーラだった。
司会がマイクを握りしめ、興奮気味に叫ぶ。
「おっとぉ!? これはなんと……『ダイヤモンド◇プリンス』こと、セーラ・クルー課長ご本人だぁーっ!」
インドにダイヤモンド鉱山を持つ超巨大財閥の御曹司であり、我がミンチン・コーポレーションの社外取締役(および大株主)でもある父の七光りを背に、ロンドン支社の頂点に君臨する男。そんな雲の上の存在が、こんな下世話な王様ゲームのターゲットになったという事実に、社員たちは息を飲んだ。
「セ、セーラさん……っ!?」
ロッティーが後ずさろうとした瞬間、セーラの長い腕が彼の腰を強引に引き寄せた。
「……命令だからな」
耳元で低く囁かれたかと思うと、セーラは酔ってふらつくロッティーの顎を軽く持ち上げ、その唇に「チュッ」と軽いフレンチキスを落とした。
濃厚なディープキスの命令に対し、あえて余裕たっぷりの軽やかでスマートなキスで応えてみせた完璧な対応。
そのあまりの男前な振る舞いに、会場の社員たちからは「おぉーっ!」「ヒューヒュー!」「セーラ課長、ごちそうさまです!」と割れんばかりの歓声と冷やかしが飛び交い、一気に大盛り上がりとなった。
「……ぁ……セーラ……さん……っ////」
一瞬のキスの後、ロッティーは完全に腰を抜かし、ふにゃふにゃと膝から崩れ落ちそうになった。すっかりお酒が回り、完全に出来上がってしまっている。
セーラは呆れたように彼のふらつく身体をすっと受け止めると、涼しい顔で周囲を見渡した。
「こいつはもうダメだな。俺が連れて帰って面倒を見る」
それだけを言い残し、ハロッズ・グリーンの特製ボックスを片手に、もう片方の腕でロッティーを抱き寄せて会場を後にする。
その背中に向けて、会場からは再び「ヒューヒュー!」「お気をつけてー!」と盛大な冷やかしが飛んだ。
大盛り上がりの周囲とは対照的に、目論見を完全に潰されたラビニアだけは、「キーッ!」と憎悪に顔を歪め、持っていたグラスをギリッと握りしめていた。
◇
ポルシェの心地よいエンジン音に揺られ、ロッティーがペントハウスのベッドの上でうっすらと目を覚ました頃には、すっかり深夜になっていた。
枕元のサイドテーブルには、箱から出されたばかりのブライス人形が、静かに二人を見下ろすように佇んでいる。
「……起きたか」
ネクタイを緩めたセーラが、ベッドに手をついて覗き込んできた。至近距離で見つめる瞳には、いつもの余裕の奥に、ほんの少しだけ独占欲の熱が混じっている。
「お前、俺がいなかったら、あんな奴らの前で他の男とキスする気だったのか?」
「ち、違います……僕は……っ、ふぁ……」
必死に弁解しようとしたロッティーだったが、セーラの寝室の安心感に包まれた途端、一気に酔いと睡魔が押し寄せてきたらしい。コクン、と首を揺らすと、そのままスヤスヤと無防備な寝息を立ててしまった。
「……たく。本当に世話の焼けるやつだ」
毒気を抜かれたセーラは小さくため息をつくと、ロッティーの額にかかるふんわりとした髪を優しく撫でた。
ブライス人形の無機質で美しい瞳に見つめられながら、ロッティーはセーラの甘く穏やかな空気に包まれ、朝までぐっすりと深い眠りに落ちていったのだった。
つづく
—
【次回予告】
ペントハウスでの甘い同居生活と、セーラの直属として囲い込まれる日々。しかし、社内の視線が痛みを増す中、ロッティーの手にはついにポルシェの鍵が握らされる——。
次回
#03 スパダリ課長と高級イタリアンランチ!〜連日のお泊まりで増える私物と車の合鍵〜
「俺のものは、お前のものだと思って使え」
お楽しみに!
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