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#03 スパダリ課長と高級イタリアンランチ!〜連日のお泊まりで増える私物と車の合鍵〜

あれから一週間。 ロッティーは連日、深夜までオフィスに残っていた。あの担当案件が、再び暗礁に乗り上げていた。セーラが目処をつけてくれたはずの取引が、突然連絡を絶たれ、代替ルートはことごとく潰され、提出書類の不備を執拗に指摘される。すべてがロッティーの担当範囲で起きている。 明らかに、誰かが意図的に彼を嵌めている。 「……なんでだよ、目詰まりは解消したはずなんじゃ……」 自席で頭を抱えるロッティーの肩は、疲労と不安で小さく震えていた。机の上には山積みの書類と、未解決のファイル。必要な資料が忽然と消え、データフォルダが行方不明になる。もう「ミス」では片付けられない。 (もう……ダメかも……) その時、背後から低く甘い声が降ってきた。 「ロッティー」 振り返ると、セーラが立っていた。ネクタイを緩め、ジャケットを片手に、疲れたような色気さえ漂わせて。 「あ……セーラさん……」 「お前、まだ残ってたのか。もうこんな時間だぞ」 セーラはロッティーのすぐ後ろまで寄り、そっとその肩に触れた。 「すみません……でも、これが終わらなくて……」 指先が震えて書類をまとめられないロッティーを、セーラは無言でじっと見下ろしていた。その視線は重く、熱を帯びている。 「……お前、最近ずっとこんな顔してるな」 頭にそっと手が添えられ、指先が優しく髪を掻き回す。 「お前は悪くない。これはお前のせいじゃない。誰かが意図的に邪魔をしている」 「でも……そんな……」 「いいから。明日から、お前は俺の直属で動け」 有無を言わせぬ、甘く低く響く声。 「育成って名目でいい。お前は俺が全部面倒を見る」 ロッティーは言葉を失い、ただ頷くことしかできなかった。セーラの手に頭を預けているだけで、胸の奥が熱くなる。 それからのロッティーの日常は、完全にセーラ色に染め上げられた。 客先訪問には必ずロッティーを連れて行き、商談の席では新人の彼にわざと意見を振る。周囲の好奇の視線など気にも留めず、セーラはロッティーの腰に軽く手を添えてエレベーターに乗り込む。 ランチも毎日二人きり。 「今日はどこにする?」 「え……コンビニでいいです……」 「そんなもん食わせてられるか。お前、最近ますます痩せてきただろう」 セーラはロッティーの細い手首を掴み、強引に近くの高級イタリアンレストランへ連れていく。個室に入るなり、メニューも見ずに次々と注文を済ませ、ロッティーの皿に取り分けてやる。 「ほら、口開けろ」 「……セーラさん、俺自分で……」 「いいから。食べさせたいんだよ、今は」 セーラの指がフォークを運ぶたび、ロッティーの頰が熱くなった。視線が絡み合う。逃げられない。 残業で終電を逃す夜は、当然のようにポルシェの助手席に押し込まれる。 「今日はゲストルームじゃなくて、俺の部屋で寝てもいいぞ」 「えっ……!?」 「冗談だ。……今はな」 セーラが小さく笑うと、車内が急に狭く感じた。 ロッティーの私物は、少しずつセーラの家に増えていった。電動歯ブラシ、着替え、お気に入りのクッション。そしてある朝—— 「これ、持っておけ」 キッチンでコーヒーを淹れながら、セーラがポルシェの鍵を差し出した。 「え……?」 「お前がうちに泊まるのが当たり前になっただろ。俺の車を使え。移動手段があった方が便利だ」 「でも、こんな高級な……」 「いいから。待っとけ」 セーラはロッティーの手に鍵を握らせ、そのまま指を包み込むように覆った。温かいコーヒーカップが、もう片方の手にそっと置かれる。 「俺のものは、お前のものだと思って使え」 その言葉の意味を、ロッティーはまだ上手く咀嚼できなかった。ただ、心臓が激しく鳴っていた。 社内では、当然のように噂が広がっていた。 「ロッティーくん、セーラ課長に完全に囲われてるよね……」 「毎日ランチ一緒に食べて、客先も二人きりだって」 「新人をあそこまで可愛がるなんて、絶対何かあるよ」 ロッティーが慌てて否定しようとした瞬間—— 「否定するな」 背後から、セーラの声が降ってきた。涼やかで、しかしどこか愉しげな響き。 「え……?」 「否定したら、余計に面白がられる。ここは俺に任せておけ」 セーラはロッティーの肩を引き寄せ、まるで自分のものだと周囲に宣言するように、軽く抱き寄せた。 「俺がお前を甘やかしてるのは、事実だからな」 (……なんで、そんな……) ロッティーの耳の先が真っ赤になる。セーラの体温と、微かなコロンの香りに包まれながら、彼はもう抵抗する気力を失っていた。 つづく — 【次回予告】 ポルシェの鍵を手に入れて天狗になっていた週末、留守中のセーラの目を盗んで派遣のベッキーを助手席に乗せたロッティー。楽しいドライブの代償として待ち受けていたのは、あまりにも冷徹な現実だった——。 次回 #04 ポルシェをぶつけて大ピンチ!〜怒るどころか僕の心配をしてくれるスパダリ課長〜 「誰か、他に乗せてたのか?」 お楽しみに!

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