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#04 ポルシェをぶつけて大ピンチ!〜怒るどころか僕の心配をしてくれるスパダリ課長〜
ポルシェの鍵を手にしてから、ロッティーの心は妙に浮ついていた。
セーラに「好きに使っていい」と言われた瞬間から、彼はまるで自分がその車のオーナーであるかのように胸を張っていた。最初は遠慮していたけれど、週末に一度だけ近所のスーパーまで乗ってみたら、その加速とハンドリングの良さにすっかり夢中になってしまった。
「すげえ……これ、俺の車みたい……」
駐車場でハンドルを握りながら、ロッティーはぼんやりと笑った。実際はセーラのものだとわかっていても、今は自由に使える。それだけで十分に優越感に浸れた。
そんな彼の様子を、セーラは何も言わずに見守っていた。ただ車から戻ってくるたびに「楽しかったか?」と低く尋ね、柔らかい視線を向けるだけだった。
◇
金曜日の朝、ペントハウスで。
セーラがスーツケースを玄関に置いて準備をしているところに、ロッティーがまだ寝起きの顔で出てきた。
「おはようございます、セーラさん……スーツケース?」
「ああ。今週末は実家に用事があって留守にする。日曜の夜には戻る。それまでは好きにしていい」
セーラはネクタイを締めながら、いつもの落ち着いた声で告げた。
ロッティーは一瞬、胸の奥がざわついた。
(……留守なんだ)
セーラがいない週末。誰にも気を使わず、自由に過ごせる。それなのに、なぜか少し寂しさのようなものが混じっていた。
◇
その日の午後、コピー機の前でロッティーは派遣社員のベッキーと鉢合わせた。
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【ベッキー】
セーラの部署に赴任している派遣スタッフ。ロッティーより二つ年下で、ふわふわの栗色の髪と大きな瞳が印象的な可愛らしい美少年。愛嬌のある性格で社内での人気も高く、ロッティーにとっては気兼ねなく話せる貴重な存在。
*/
「あ、ロッティーさん! お疲れさまです!」
「ベッキーくん、お疲れ。……週末、何か予定ある?」
「特にないです! ロッティーさんは?」
ベッキーの笑顔が無邪気で、ロッティーはつい口にしてしまった。
「じゃあ、日曜日、ドライブでもしない? 一人で乗るより誰かいた方が楽しいかなって思ってて……」
ベッキーの目が輝いた。
「えっ! 本当にいいんですか!? 行きます、絶対行きます!」
こうして日曜日、二人は待ち合わせ場所で落ち合った。
ロッティーが銀色のポルシェで迎えに行くと、ベッキーは目をまん丸くした。
「うわっ! これ、ポルシェじゃないですか!? ロッティーさん、こんな車乗ってるんですか!?」
「……まあね」
ロッティーは内心で胸を張りながら、照れくさそうに笑った。ベッキーが助手席に飛び込むと、興奮した様子でシートに座り直し「こんなの初めてです!」と連呼した。
「どこ行きたい?」
「うーん……海! サウサンプトンとか、どうですか?」
ロッティーはハンドルを切り、ポルシェを滑らかに発進させた。車内は終始賑やかだった。ベッキーが仕事の愚痴をこぼしたり、音楽をかけたり、窓を開けて風を楽しんだり。ロッティーも自然と笑顔になり、久しぶりの軽やかな時間が流れた。
「ロッティーさんって、どうやってセーラ課長のお気に入りになったんですか?」
「えっ? いや、お気に入りだなんて……」
「いや、そうですよ! いいなぁ『ダイヤモンド◇プリンス』のお気に入りなんて」
「え、プリンス……?」
「え、知らないんですか? 実家がインドのダイヤモンド鉱山とかで」
「……えっ、そうなの?」
「でもって、うちの会社の偉い人でもあるらしいんですよ」
「……そうなの?」
「そんなセレブと個人的に親しくなるなんて、ロッティーさんってやっぱり何か持ってますよね」
ロッティーは絶句した。いつも優しく自分を気遣ってくれる上司のバックボーンが、そこまで桁違いだとは夢にも思っていなかったのだ。
そんな会話をしながら、二人はサウサンプトンの港町へ足を向けた。フェリーやヨットを眺めながら歩く中、ベッキーがはしゃいでスマホで写真を撮る姿に、ロッティーもつい笑ってしまう。潮風が気持ちよく、非日常のひと時だった。
帰り道、港近くの狭い路地でバック駐車に挑戦するロッティー。だが、後方を十分に確認しないまま、勢いよくハンドルを切り込んでしまうと——ガリッっと鈍い音がした。
リアバンパーに白い傷が走っている。低い石柱にぶつけてしまったのだ。
「……やばい」
血の気が引いた。ベッキーも息を飲む。
震える手でロッティーはセーラに電話をかけた。コールが数回続き、ようやく繋がる。
「……もしもし? セーラさん、今大丈夫ですか……?」
『どうした』
落ち着いた、低い声。ロッティーは震えながら事故のことを伝えた。
『怪我はないのか』
セーラの第一声がそれだった。ロッティーの胸が締め付けられる。
「は、はい……俺は大丈夫です。でも車が……」
『車はどうでもいい。お前が無事ならそれで十分だ』
優しく、けれど有無を言わせぬ声。ロッティーの目頭が熱くなった。
「……すみません。本当に、ご迷惑を……」
『気にするな。それより——』
短い間。
『誰か、他に乗せてたのか?』
ロッティーの心臓が激しく跳ねた。
「……会社のベッキーくんと、ドライブに……」
『ふーん』
セーラの声に、わずかな影が落ちた気がした。
『まあいい。お前も結構すみに置けないな。浮気くらいなら構わない。ただ、厄介なことにならない程度にしろよ』
浮気——その言葉に、ロッティーの頭が真っ白になった。
「あ、いや……俺たちは別に、そういうんじゃ……」
『いいから、早く帰ってこい。夕飯、温めて待ってる』
電話が切れた後も、ロッティーはしばらく動けなかった。ベッキーを駅まで送り、ペントハウスに戻ると、玄関の灯りがついていた。
「おかえり」
リビングからセーラの声が響く。何事もなかったかのように、キッチンで夕食の準備をしている後ろ姿。
「……ただいま、戻りました」
ロッティーはポケットの中の鍵を強く握りしめた。
怒らない。責めない。ただ「お前が無事なら」と優しく包み込む。その甘さが、じわじわとロッティーの心を溶かしていく。
(……どうして、怒ってくれないんだろう)
思えば思うほど、セーラから離れられなくなっていた。
そしてロッティーは、まだ気づいていなかった。
あの電話の後、セーラが誰かに短く指示を出し、ベッキーの契約更新を来週で終わらせる手配を、すでに済ませていたことを。
つづく
—
【次回予告】
フランス語の研修でセーラとロッティーの親密すぎるイチャラブを目の当たりにし、激しい絶望と黒い感情に支配されたアーメンガード。自室に戻った彼を待っていたのは、行き場のない焦燥感と淫らな妄想だった——。
次回
#05 研修中にイチャラブで見せつけられる絶望!〜卑淫な妄想で自慰に溺れるアーメンガード〜
……カジュアルな姿のセーラさんも、すごくかっこいい……
お楽しみに!
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