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第3話 同居、そしてキス?(前)

「ったく、俺だけ知らなかったなんてな~」  自室のベッドに腰掛け俺がそうぼやくと、優真はクスクスと笑った。  俺の部屋にあの優真がいる。しかも立派に成長した姿で。  その光景が、なんだかすごく不思議に思えた。 「僕が奏汰ママに頼んだんだよ。内緒にしておいてって」 「なんで」 「奏汰のびっくりした顔が見たかったから」 「それは、ご期待に添えたようで」 「うん、最高だった」  そうして、今日からうちに居候することになった優真がまた楽しそうに笑った。  あの後、俺たちは母が腕によりをかけて作ったいつもより大分豪勢な夕飯を食べた。  突然すぎてなかなか現実を受け入れられない俺を見て、優真も母もずっとご満悦といった表情だった。  うちは今父が単身赴任中で、この何かと物騒な世の中、優真がこの家に居候することは父も大賛成だったようだ。  ちなみに優真の部屋はこの部屋の隣、元々は父の書斎用だったがその後物置部屋と化していた部屋だ。 (そういや、最近なんか片づけてるな~とは思ってたけど)  まさか、幼馴染がそこに越してくるなんて思わないだろう。  ちなみに優真のベッドや他大きめの家具は明日届くらしく、今日は俺の部屋に布団を敷いて寝ることになった。  そういえば昔もよくお互いの家に泊まりっこしてたなぁと思い出しながら訊く。 「いつこっちに来るって決めたんだ?」 「ずっと前からだよ」 「え?」  布団の上に座った優真が、目を細め俺を見上げていた。 「いつか僕だけでも絶対こっちには戻ってくるつもりで、ずっと準備してたんだ」 「そうなのか」  余程日本が好きなんだなと思った。  それか、海外生活が合わなかったのだろうか。 「元々はこっちで一人暮らしするつもりだったんだけど、うちのママが奏汰ママに話したら、ならうちに来なさいよって言ってくれて」  嬉しそうに話す優真を見て、俺も笑った。 「そっか。や、びっくりしたけどさ、俺も勿論大歓迎だから。これからよろしくな、優真」 「うん! よろしくね、奏汰」  笑顔の幼馴染を見て、これから楽しくなりそうだと思った。  ――そう、このときはまだ。  まさか、これから俺にとって波乱の日々が始まるなんて、思いもしていなかったのだ。  最初の異変は、その夜のこと……。  懐かしい話で盛り上がり気づけば深夜になっていて、俺たちは流石に寝ることにした。  俺は明日も学校があるし、優真も正式な入学はもう少し先だが、その前に手続きなどやらなければならないことが色々とあるらしい。  おやすみを言い合って目を閉じ、それから俺はすぐに夢の中へと落ちていった。  ……それからどのくらいしてからだろう。  ギシリ、とベッドが揺れた気がして俺の意識は深いところから浮上した。  でも眠すぎて目が開けられない。  と、唇に何か感触を覚えた。 (……?) 「あんなので満足出来るわけないでしょ。ちゃんと貰うからね」  そんな声が聞こえた気がして、もう一度、唇に柔らかい感触。  漸くうっすらと目を開けると、優真が俺を見下ろし薄く笑っていた。  それからまたギシリとベッドが軋んで、優真の姿は見えなくなった。 (……なんだ、夢か……)  そして、俺は再び夢の中へとダイブしたのだった。    *** 「……」  チュンチュンと窓の外から小鳥の囀りが聞こえる。  朝だ。  ふと傍らを見下ろせば、優真が布団の中でまだ静かに寝息を立てていて。  まだあどけなさの残るその寝顔を見て、俺はじわじわと自分の顔が熱くなっていくのを感じた。 (……俺、なんつー夢見てんだよ!?)  こいつから、幼馴染の優真からキスされる夢を見るなんて! しかも二度もされた……。  確実に昨日した慣れないキスの影響だろうが、罪悪感でいっぱいになり俺は頭を抱えた。 「おはよ~、奏汰」 「!?」  そのふやけたような声を聞いて俺はびくっと肩を震わせた。  優真がいつの間にか起き上がり目を擦り擦りこちらを見上げていて、俺は精一杯の笑顔を作る。 「おはよう、優真。よく眠れたか?」 「うん。まだ眠いけどね」  そうして大欠伸をした優真に俺は心の中でめちゃくちゃ土下座した。 (ガチですまん、優真!)

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