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『ファーストキス ―望月碧―』end
カーテンの隙間から朝日が射している。8帖の寝室は光で満ちていた。
替えたばかりのシーツの上で、愛しい人が眠っている。これ以上に幸せな光景はないと碧は思う。
碧は横向きに寝ころびながら太陽の寝顔を見詰めていた。風邪を引かないように、下着はクローゼットから拝借し、密かにお揃いで買っていた夏用のバスローブを着せている。
(いつ見てもキスしたくなるんだよな。太陽さんの寝顔って)
今でも二十歳そこそこにしか見えないが、太陽の穏やかな寝顔が、さらに幼く見える五年前の姿へとオーバーラップする。
◇
――五年前。
当時二十歳だった太陽が、一度だけ碧の実家に泊まったことがあった。
近所で空き巣の被害があり、家を空けていた碧の父親が心配して、太陽に泊まるように頼んだのだ。
当時はまだ恋愛感情を自覚していなかったが、太陽と少しでも長く一緒にいられることが嬉しかった。
碧の家庭教師で大学生だった太陽が碧の部屋で一緒に眠るはずはなく、太陽は客間にある来客用の布団で寝ていた。
太陽が同じ家にいると思うだけで緊張してしまい、碧はあまりよく眠れなかった。朝早く目が覚めたため、朝食の準備をすることにする。
「太陽さん。朝ご飯できたよ」
客間の扉をそっと開く。太陽は規則正しい寝息を立てていた。
その顔がうっとりするほどかわいくて、中学生だった碧は身を乗り出して見入ってしまう。
(クラスの女子より断然かわいい)
顔に吐息がかかるほど間近で、長い間太陽の愛らしい唇を見詰めていた――。
◇
――現在。
「……ん……」
太陽が寝返りを打ったため、碧は我に返った。
顔を上げれば触れてしまうかと思うくらい間近に、太陽の愛らしい唇がある。
心臓が胸郭を突き破りそうなほど脈打っている。碧は顔の角度を変え、太陽の唇を覆った。
柔らかな感触が気持ちよくて、調子に乗り過ぎたのだろう。上唇と下唇を交互に食んでいると、太陽がいきなり身を引いた。
目を開けると、胡乱げな顔が目の前にあった。
「おはよう」
碧が満ち足りた笑みを浮かべる。
太陽の口角が上がった。
愛しい人が、幸せそうに微笑んだ。
了
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