1 / 5

prologue

月の良く見える、からりと晴れた夜だった。 剥き出しの首を風が冷やし体を震わせる。 嗅ぎ慣れない独特の香りに胃液が上がってくるのを、必死で堪えていた。 『……ねえ、秘密にしてくれる?』 『そんな……』  大丈夫、少年はただそう呟く。 簡単さ、ただ口を閉ざすだけ、たったそれだけさ。 君ならできるだろう、そう言って少年は微笑む。 『僕のこと助けて』  助けを求める声に握りこんでいた手を開き、きつく唇を噛むと首を縦に振る。 あの光景は一度だって忘れたことはない。 誰にも知られてはいけない二人の秘密は、今もあの笑顔と共に閉ざされている。

ともだちにシェアしよう!