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prologue
月の良く見える、からりと晴れた夜だった。
沈黙に支配された空間で、剥き出しの首を風が冷やし体が震える。
嗅ぎ慣れない独特の香りに胃液が上がってくるのを、ただ必死に堪えていた。
『……ねえ、秘密にしてくれる?』
『そんな……』
自分の鼓動がやけに大きく耳に響く。
少年はまるでそれが正しい答えであるかのように大丈夫だと囁いた。
簡単さ、ただ口を閉ざすだけ、たったそれだけさ。
君ならできるはず。
そう言って少年はいつものように微笑む。
『僕のこと助けて』
助けを求める声に、強く握りこんでいた拳から少しずつ力が抜けていく。
いけないことだと分かっている。
……それでも。
湧き上がる感情を押し殺し、言葉を飲み込むようにきつく唇を噛みしめる。
小さく一度頷いたその瞬間、自分は罪を犯した。
あの光景は一度だって忘れたことはない。
誰にも知られてはいけない二人だけの秘密は、今もあの笑顔と共に記憶の奥底に封じられている。
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