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第8話 彼の我が儘。
セドリックが村に帰ってから一週間が経過したが、彼は今後のことについて、考えてはいないようだった。
相変わらず、私の自室に入り浸りつつ、昼寝をしたり本を読んだり、私はそんな彼の姿を見ていた。
若い少年がこうしてダラダラと過ごして良いわけでもないので、私の薬草畑の雑草抜きに誘った。
「手伝ったら、ご褒美をください」
「私の作った食事を食べているでしょう。それこそご褒美じゃないだろうか」
「……たしかに、そうだね」
特に今日の彼は顔を合わせた瞬間から、若干の違和感を感じていた。
呆けていることが多く、そして口数も少なかった。
「アルは正装で畑仕事をして大丈夫?汚れるよ」
「君がいるから、私はこの服から着替えられないのです」
私は畑仕事をするときも、正装を崩さなかった。
理由は、彼に隙を見せないためだ。
セドには『聖職者ではない私』を見せられなかった。
雑草取りを終えてから、私の自室に向かうセドはいつも通りの我が儘を言い出した。
「今日はアルの部屋に泊まっていく」
「いつも通り今日も帰りなさい」
この一週間こんなやりとりをしている。
きっと今日も言えば帰るだろう、そう思っていたけれど、セドは縋るような瞳で私を見ていた。
「今日は一人でいたくない。……これからはちゃんと村の学校に行くから、今日は泊めてほしい」
「私は君を泊めない。今日も素直に帰りなさい」
「いやだ」
泊めることを拒む理由は、セドが私に何をするか分からないからだ。
聖職者の正装を崩せないのも君が居るからだと、はっきり言ってしまったほうがいいのだろうか。
「私は君を受け入れることは出来ない」
セドが何も言わなくなったので、分かってくれたのかと振り返り確認すると、彼はステンドグラスの窓の外を見ていた。
いつもと違う表情の彼は、何処か知らない人のようだった。
「今晩は、どうしても一人でいたくないんだ」
セドの瞳は微かに揺れていた。
彼は何かに怯えている、そんな表情をしていることに気付いた。
その彼の怯えを取り除いてあげたくて、私は慎重に聞いた。
「……何か悩みでもあるのかい、セドリック」
「今晩、俺の話を聞いてほしい。だから、どうかアルのそばにいさせてください」
セドが泣いているようなそんな気がした私は、溜め息を吐いてから、譲歩することに決めた。
「君が今日と明日の食事の用意と、教会の掃除の手伝いをするのなら、今晩は泊めてあげよう」
「ありがとう、アル」
セドは私に向かって、感謝を伝えてきた。
今日の彼は、とても辛そう見えた。
まるで迷い子のようだ、と、私にはそう感じた。
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