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第9話 故意の事故。
結局夕食は私一人で作っていた。
条件通りセドリックに作ってもらおうと思っていたけれど、彼はピアノの下で居眠りをしていたので声を掛けることが出来なかった。
今日に限って不安そうにしていたセドがようやく休んでいるような感じがしたので、私はそっとしておいたのだ。
そして夕食が出来上がり、セドを起こそうとした。
けれど眠っているセドは安らかで、起こすのは忍びないと感じた私は、彼に毛布を掛け隣に座って待つことにした。
「……本当はピアノなんてどうでも良かったんだ」
セドは目を瞑ったまま、話し出した。
先程話したいと言っていたことを、どう切り出すか悩んでいたら、眠ってしまったのだろう。
「神父様のピアノが美しくて優しい音色だったから、俺は一瞬で恋に落ちたんだ。……好きな人の気を引きたかったから、俺はピアノをはじめた」
苦しそうに彼は眉を寄せて話を続けた。
「俺はアルが好きで、でもアルは神様を愛していた。気を引くためにピアノを勉強していたら、俺もピアノを弾くことが好きになれた。けど……高等部に上がるための試験中に事故が起きた」
聞いていたくない、そう思いながらも私はセドの話に耳を傾けた。
「……ピアノの蓋が演奏中に落ちてきたのかい」
「そうだよ」
「痛かったろう」
痛かっただろうし、そして辛かったに違いない。
「……事故にしたかった」
したかった?
「事故じゃ、ないのかい?」
「俺を手に入れたいという男爵夫人が声をかけてきた、ピアノの専属演奏者にならないかって。俺は学校でピアノを学んでから村に帰りたかった。拒んだら、演奏中に試験官が蓋を落としてきた。……俺からピアノがなくなれば、もうアルの気すら引けなくなる」
セドは泣いていた。
彼の瞳が開き、その瞳から涙が頬を伝っていた。
「……夫人を殺してしまおうと考えたけど、でも未遂に終わった。逆に弱味に漬け込まれて、俺は夫人の愛人になった」
なんて残酷なのだろうか。
「何故今になって打ち明けた?……そのときに相談してくれたら、私が助けに行けたかもしれないのに」
「夫人の愛人になったから、村には帰れなかったんだ。愛人になって夫人を抱いて、夫人の思うまま男も目の前で抱いた。気付いたときには、……俺はどうしようもないクズ男で、街の遊び人になってた」
私は彼の頬を伝う涙を指で拭い、そして抱きしめた。
「辛い思いをしていたんだね、セドリック。よく打ち明けてくれた」
「街でやり残してきたことをしてくる。夫人に手切れ金を渡して縁を切ってくるから、そしたら俺は村で真面目に学校に通う」
「偉いね、セドリック……」
『今日は疲れただろうから、夕食を食べて寝なさい』、そう続けようとしたが、セドは私を押し倒してきた。
「俺に、アルを抱かせてください」
え?!
……聞き間違いだろうか?
彼は今とんでもない問題発言を口にしたような気がして、私は見上げた。
セドは真剣な面持ちだったから、その問題発言が冗談なんかではないことに気付き、彼の腕の中から逃れようと藻掻いた。
「ちょ、ちょっと冗談は止めてくれないか!!……私は神に生涯を捧げている」
私はセドから離れようとしたが。しかし、セドの行動は早かった。
「アルの心が神に向いてるなら、身体だけでいい。俺を慰めてください」
「身体も神に捧げている!!セド、君に捧げるつもりはない」
私より一回り以上大きい身体になっていた彼に、私は組み敷かれ、慣れた手付きで聖職者の服を脱がされてしまった。
私の汚らわしい身体が露わになった。
その右肩に口付けされ、私は言葉を失った。
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