20 / 27

第20話 本来の彼。

 その日の早朝、私は薬草畑に行く途中約二ヶ月ぶりにセドリックに会った。 「アル、ただいま」  彼はこの村の学校の制服を着ていた。 「おかえりなさい、セドリック。いつ村に帰ってきていたのですか」 「昨日の夜に村に着いたんだ。直ぐにアルに会いに行こうと思ったけど、父さんに止められて。報告が今になっちゃいました」  心配をしていたセドと会えただけで、私の機嫌は充分に回復していた。  彼は私を身体を暴いた憎むべき相手なのに、幼い頃から彼を知っているからか、どうしても憎むことが出来なかった。 「ずっとアルに会いたかった。街での片付けに二ヶ月も掛かるなんて思ってもみなかったよ」  セドの手は傷を隠す包帯が巻かれていた。  私の視線に気付いた彼は手を擦りながら言った。 「村の学校に通うことになったんだ。さすがに傷は隠したほうがいいだろうから」  その手が私の手を取り、握りしめた。 「妖精ちゃんから聞きました。随分苦悩してたって」 「……妖精ちゃんと会ったのですか?」  彼女の姿がないと思っていたら、まさかセドがいる街まで行っているとは思わなかった私は、彼女の姿を探した。  もしかしたら疲れ尽きてるかもしれない、今直ぐにでも手当てしなければ。 「ミカエルに襲われたこと聞きました。俺もアルの許可なく襲ったから言えた義理じゃないけど、俺が傍にいれば奴は手出ししないと思うから、学校以外は一緒にいます」 「そうですね、セドリック。私にしたことを反省しなさい」 「ごめんなさい、アル。許可なく襲ったりしません」  セドは余裕のある優しい人に進化したようだ。  彼に今余裕がある理由は、街でやり残してきたことの整理をしたからなのだろうか。 「反省しているのなら、許しましょう。あなたは本来優しい子でしたからね」  私がそう言うと、セドは苦笑いを浮かべた。 「やめてください、過去の俺と今を比べるのは。……俺はずっとピアノはアルに近付くために下心ではじめたことなんです」  過去と今のセドリックの面影が重なると、私の心は懐かしさで嬉しくなった。  今彼はピアノを弾くことは出来ないけれど、またこうして何かを学ぶため勉強しようとしているのだろう。  でなければ、こうして学校の制服に袖を通していないのだ。  私はセドの背中を薬草畑で見送った。

ともだちにシェアしよう!